エリスタ名物
──ウーッ! ウーッ! ウーッ!
家で寛いでいると、警報器から緊急呼び出しの音が鳴り響いた。
父と母がピタリと止まり、嫌そうに顔を顰めて警報器から出てくる紙を眺めた。
「はぁ、行くか」
「そうね。ルクナも来る?」
「うん、手伝うよ」
緊急呼び出しは、エリスタ名物……魔物の氾濫。
迷宮資源が名産のエリスタは、名産の通り領内に迷宮が多い。
数は百を越え、日々増えているくらいだ。迷宮が多い理由は諸説あるけれど、魔の森があるからという理由が一般的。
数が多ければ、それだけ危険な迷宮も多く、迷宮から地上へ魔物がこんにちわーなんて日常茶飯事なのだ。
「全く、夜の氾濫は面倒よねぇ」
「あの辺りは大丈夫だろ」
「私最初の一撃やりたーい!」
「あっ、そのあと楽する気ねー」
「へへへっ、バレたかー」
「手伝ってくれるだけでも良いじゃないか」
場所は実家から西の山の中にある迷宮。
一応命が掛かっているので、本気で嫌だけれど父におんぶされて向かっている。
私が一時間掛かる距離を、両親は数分で到着するから毎度引くんだよね。
「おっ、虫系統か。ルクナ一人で良いんじゃないか?」
「お父さん、可愛い娘を虫の軍勢に放り出す気?」
「あなた…酷いわね」
「はいはいごめんなさいね。じゃあルクナ、よろしく」
「はーい!」
「気を付けてねー」
ワシャワシャと蠢く影…蜘蛛や蝶や毛虫や何かわからないキモいやつとか。
セリアが見たら卒倒しそうな光景を母が作った氷のお立ち台にて見下ろしていた。父と母は私の後ろで待機中なので、安心して本気を出せる。
さて、やるか。
虫だから、火属性と水属性で爆発させるか……いや、試してみたい事があったんだ。
目の前に白い魔法陣を展開し、固定。さらに右手に赤い魔法陣と、左手に青い魔法陣を展開……全部で三つの魔法陣。
これ、結構キツい。
でも、頭に詠唱が浮かんで来たっ。
「赤と青、相反する力をもって、天の空から舞い降りる……」
魔法陣が回転を始めた。
回転するなんて、初めてだ。
「……ルクナ? まさかそれ」
「ははっ、流石ルクナだな」
左右の魔法陣を……目の前の白い魔法陣に、合わせて……うおっ、凄い光。
「私は闇を照らす天の使い、私は闇を滅する天の刃、私が闇を……光に変える! 魔法合成・光炎爆流!」
光が空に打ち上がり、滝のように大地に降り注ぐ。
目を開けられない程に光が溢れ、降り注いだ光が虫に触れた瞬間……ボンッ! と爆発。
それから次々に光が爆発を始め、光が生きているかのように虫に誘爆していき、ちょっと……大変な事態になってきた。
視界はキラキラと綺麗な輝きが溢れ……鼓膜に響く爆音がそれを台無しにしていた。
「──っ!」「──!」
「お母さーん! どうしよー! きゃー!」
「──ぁ!」「──ぇ!」
父と母が何か言っているけれど、何も聞こえない。
三人揃って耳を塞いでもがいているからね。
……
……
あっ、お立ち台が崩れていく……
……父が私を抱えて離脱した。
……母が笑っている。
……私も笑っておこう。
……ほっほっほ!
……光が収まって来た。
……耳がキーンとして辛いから、絶対耳大丈夫と唱えて回復した。
「……ルクナ、ちょっと張り切り過ぎたみたいだな」
「そうねぇ、ルクナの成長が見られてお母さん嬉しいわ」
「えへへっ、頑張ったよ」
虫達は綺麗さっぱり爆発して……いや破片が凄まじいわ。臭いが凄い。
ついでにあったはずの山は無かった。
おや? 一匹残っているな。
でっかいカマキリ。光炎爆流でダメージは負っているけれど、こっちに向かってカサカサ走ってきた。
「ルクナ、せっかくだから倒したら?」
「えー、頑張ったじゃん。お父さんがやりなよ」
「剣貸してやるから。ほら」
「ぶぅー、これ安物の鉄の剣じゃん」
「俺はいつもこれだぞ。じゃあよろしく」
「えー……」
「ルクナー気を付けてねー。明かりは付けてあげる。ライト」
「お母さんは大好きー」
「私もルクナは大好きよー」
「……俺は?」
「「……」」
母の魔法で視界は良好。
カマキリちゃんは青い身体に、傷口から紫色の体液が染みでて良い感じにきしょい。
強さは上位でも上の方、かな。




