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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編
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幼女に取り憑かれているのも日常になるのだろうね

 


「では次は身体測定です。移動しましょうか」

「ヘクトル先生! あの子は誰ですか!」


「さぁ? 学院長の推薦なので詳しく知りません」

「では学院長に会わせて下さい!」


「学院長は外に出られているのでしばらく会えないかと思います」

「本当に知らないのですか!」


 セイランさんや、私の後ろに幼女は居るぞ。

 さっきから後ろに居るぞ。

 なんで気が付かないんだ?


「わっちは今ルナードにしか見えん聞こえん状態じゃ」


 話し掛けないでよ。私が喋ったら独り言遅刻眼鏡にバージョンアップしちゃうでしょ。


「零組の子は教師の私でさえ詮索出来ませんので、気になったのなら自己責任で調べて下さい」

「……わかりました」


 ここだよー。

 みんな口々に私の話題になって、少し良い気分だ。

 本当の私は評価されるんだと実感したから、だから、ルナードが評価されなくても良いかな。いや、ちょっと寂しいよ。


「ルナード、いつの間に戻って来たんだよ。なぁなぁあの子凄かったな!」

「凄かったねー」


「マスクでわかんなかったけどきっとイケメンだよなー。零組って何なのか調べてみようぜ!」

「えっ、私は別にいいよ」


「そんな事言うなよー、気になって仕方ないんだから!」

「ちょっとジェジェ、無理矢理は駄目だにゃ。気になる人を集めて一緒に調べるにゃ?」


「へぇーその方が早く解るかもな! 乗ったぜ!」

「二組にも声を掛けてみるにゃ!」


 えっ……二組も、良いなぁ……私も気になるって言えば良かった。

 ジェジェがミカの所に行って打ち合わせみたいな会話で盛り上がっている……良いなー。

 はぁ……こう一緒に何かを出来たら楽しいんだけれど、中々難しいというかタイミングとかわからなくて困る。今まで同世代と話す事もほとんど無かった訳だし……一応家の隣に幼馴染はいるけれど、特殊な子だからなぁ。


「はーい静かにお願いしまーす。では次に身体測定ですが……この訓練場を走って貰います。十周の時間で決まりますのでよろしくお願いします」

「「「えー!」」」


 なんだ。十周で良いのか。

 みんな嫌そうにしているけれど、偉い人は走らないからか?


「はーい並んでー。始めー」

 一年生がいっぺんにスタート。

 みんな思い思いのスピードで走り始めた。

 私はどうしようかな……周りに話せる人も居ないし、あっ幼女が居たか。まぁ中間目指して頑張るかな。


「最近の子供は体力が無くての。走るのが一番じゃて」

「走らせる名目ですか……私はこのダラダラとした時間が憂鬱です」


「ルナードの基準じゃとみんなやる気を失ってしまうでの。退屈なら先頭に居る王子の後ろに着いても良いぞえ」

「あくまで一番は駄目なんですね。じゃあ早く終わりたいので後ろに行きましょうか」


 先頭を走っている王子……名前忘れたが頑張って走っていたので、後方五メートルを維持してみた。

 うん、遅え。


「今日はこれが終わったら解散での、わっちの部屋で過ごすかえ?」

「いや、帰りますよ。今帰ればおやつの時間に帰れますし」


「えーやだやだー。じゃあわっちの家でおやつを食べるのじゃ」

「それだと帰るのが夜になりそうですよね?」


「わっちに癒しをくれの」

「出来る範囲でしているじゃないですか。それにしがみつかないで下さいよ」


 幼女をおんぶしながら走って、ハンデありなのに遅いなぁ……

 一応王子はぶっちぎりで一位な状況ではあるんだけれど。

 ……クベリアさんがこっちを見ている。視線は私の少し後方だから、幼女を見ている。こんな上司を持った父の初恋の人は、この先苦労しそうな予感……いやもう苦労していそうだ。


「ルナード、クベリアが仕事を振ろうとしているのじゃ。助けての」

「独り言地味眼鏡に何が出来ると思っているのですかね?」


「このまま学院を出ればこっちのもんじゃ!」

「その後が怖いので無理です。降りて下さい」


「嫌じゃ。降ろすのなら騒ぐでの」

「困るのはステラちゃんだけですよね」


「いや、幼女をおんぶする変態地味眼鏡として語り継がれる事じゃろうの」


 何故私の邪魔をする。

 大人しくしていろと言ったのは誰だよ。

 王子が振り返って嫌そうな顔をしているし……


「はぁ、はぁ、はぁ、遅刻野郎、になんて、負けてたまるかっ!」


 後ろに居た男子から魔力の波動…ふむ。

 魔法が発動する瞬間に振り返ると、手を向けている男子と目が合った。

 驚いた表情をしているけれど、攻撃しようとした事に驚きだよ。

 この男子は…誰だっけ?


 ――ぼんっ。

 と、風の玉を身体で受けて、身体が仰け反った。

 危ない、眼鏡が飛ぶ所だった。


「……君は、敵だね」

「ひっ…」


 人差し指と親指を伸ばして、視認出来る魔力の塊を……ばーんとやろうとしたら幼女が私の手を抑え、首を横に振った。


「ルナード、撃ったら死ぬぞえ」

「そうですか? ちゃんと急所は外しますよ」


「お主とは違うでの。零組を増やしたいのかえ?」

「……」


「ルナード! 大丈夫!」

 クベリアさんが大袈裟に私を呼び、無傷を確認すると後ろに立って震えていた男子に近付き…

 ボコッ。と殴った。


「なっ! なにすんだ!」

「この件は、貴方の家に報告させて貰う」


 クベリアさんが威圧を発し、男子が竦み上がった。

 追い付いたセイランが立ち止まり、息を整え私と男子を交互に眺め、いつもの通り介入しようとしたので私は幼女をおんぶしたまま走り出した。



「あの、何があったのですか?」

「ルナードが魔法で妨害を受けてね…はぁ、危ないところだった」


「……そうですか」

「あら、心配も無いのね」


「……遅刻の代償かと」

「そうねぇ。でも良いの? 彼に負けるわよ?」


「っ…」



 ふむ、やっぱり殺しちゃ駄目か。

 流石に殺しはしないけれど、魔法を当てられたら魔法を当てないとね。


「アズぴょんから聞いていたがの、敵に対して容赦無いのは本当じゃったの」

「敵は平等に潰す。じゃないと生き残れませんから」


「エリスタと王都じゃ常識は違うんじゃよ。ったく」

「頭では解っていますが、ね」


 その後は普通に十周してゴール。

 幼女は暇なのか? 私に取り憑いている霊みたいになって……邪魔だよ。


「はぁ、はぁ、やった…一番」

 王子が一番で、私が二番、セイランが三番だった。


「はぁはぁはぁ……次は、負け、ごほっごほっ」

「喋らない方が良いよ」


「なんで、疲れて…はぁ、はぁ」

「……家の方が遠いから」


「くっ……私は、ルールを守らない、あなたが、嫌い」

「ははっ、ご自由に嫌ってくださいな。セイラン」


 折角だから呼び捨てにしてキッキッキと笑ってやった。

 睨むセイランから離れて、みんなが終わるのを待つ事にした。

 ふむ、嫌いなんて直接言われたの、初めてだな。

 きっと、眼鏡無しの実家通い無しだったら、友達になっていたのかも知れないけれど……いやそれは無いだろうな。

 エリスタと王都じゃ、ルールは違うから。




「えっ…どうして!」


 後日、魔力測定と身体測定の結果が出た。

 セイランは結果に納得いっていないみたいだ。

 王子と同列一位だから良いじゃん。

 私は百人中、九十五位。良い感じだ。


「ルナード凄いな。ほぼビリだぞ」

「凄いでしょー」


「はははっ、褒めてねぇよ」


 身体測定の二番はあれだね、私がばーんとしようとしたから危険行為として…減点かな。

 公にされないけれど、裏成績表は満点なのだ。

 私に魔法を当てた男子は測定の日から来ていない。きっと謹慎か何かだろうか……母がニコニコしていたから何かあったかも?


「流石はセイラン様ですわね」

「……」


「セイラン様?」

「いえ、なんでもないわ」


 その後、担任に詰め寄っていたな。

 零組の成績がなんで無いのかーってね。

 零組クルルちゃんはもう測定には参加しないし、ぼっち枠という別枠だから何点でも一位なのだ。

 流石にやり過ぎたみたいで、クベリアさんがぷんぷんして……幼女が学院長室の椅子に縛られていた。縛られている幼女が嬉しそうだった気がしたけれど、気にしないようにしよう。


 それからしばらく普通に過ごした。

 普通と言っても遅刻はしていたけれどね。



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