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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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魔力測定は頑張って手加減するぞっ

 

「……五分三十秒の遅刻ね」


 一週間が経った。

 お察しの通り一週間連続の遅刻だ。

 セイランの声に呆れが混じる頃、魔力測定と身体測定の日になった。


「はーい、一組はこちらに並んで下さーい」


 一年生合同の測定。

 一から五組まであり、一年生だけで百人はいるのかな?

 広めの訓練場に集まり、他の組からの視線を感じながらボーッとしていた。

 一応組によってランクというか、偉い人や能力のある人は一組とかそんな感じ。

 測定は五組から始まり、一組が最後だ。きっと偉い人の能力を見せ付ける意味合いがあると推測……


「ファイアーボール!」

 ボンっと魔法金属製の的に当たる魔法を眺め、違和感が凄かった。

 だって、魔法が発動しただけで凄いって言われるんだから……もちろん魔法が使えない子が大半で、七歳の時点で魔法が使えるのは才能があるか家庭教師を雇っている人だけ……と幼女が言っていた。

 魔法は火、風、土、水の基本属性と、光、闇等の上位属性、他にも母がよく使う氷属性とか空間属性やら古代魔法やらあるけれど、一般的には一つか二つの属性が使えたら充分らしい。

 聞くのと見るのじゃ違うよねぇー。


「じゃあ二組は一組が終わったら身体測定に行くわよー」

「「「はーい!」」」


 良いなぁ二組。可愛い先生だ……ヘクトル先生が嫌な訳じゃないけれど、男性って苦手だから。


 一組の番になり、最初は王子から始まった。そう、王子が居たのだ。私には興味無さそうだから話す事は無さそうだけれど、王子が同じ組って自慢になりそう。

 でも私は王族嫌いだから、話す事は無いね。


「ウインドストーム!」


 びゅーん。的が揺れたね。あの的頑丈だなー。測定器になっているみたいで、先生が計器を見て書き込んでいる。

「六百っと……流石だなぁ」

 先生声出ているよ……大丈夫?


 そういや王子って何すんの? 王子って肩書きがあるだけ? 国王の子供ってだけ?

 実際魔物から見たらただの人間の子供だし、差は無い筈なのにね。

 取り巻きの男子から褒められ、周囲の女子から黄色い歓声が湧いて、王子ってだけでこの扱い。王子はどう思っているんだろうか。

 私だったら、窮屈だろうな。

 未来に自由が無いんだから。


「ルナードは魔法使えるのか?」

「一応ね。でも王子より弱くしなきゃいけないんでしょ?」


「えっ、そんな事は無いと思うけど……いや、そうなのかな? でも一番威力と精度があるから、一番にはなると思うぜ」

 ジェジェは私の前だから、よく話し相手になってくれる。でももうすぐ席替えなんだよなぁ……セイランの近くとかやだし。


「難しいよね。人に合わせるって」

「なんか、ルナードって大人だよな……あっ、セイラン様だぞ」


 セイラン・オレイドス。青い髪を一つに束ね、凛とした表情を崩さないお嬢様感満載のお嬢様。私をガチで嫌っているけれど、今の所害は無い。問題は取り巻きの女子で、嫌がらせをしようと画策しているみたい。

 でも私に攻撃するなら、敵だから……それ相応の態度を取らせて貰うかな。


「貫け……ライトニング」

「おぉ、七百かぁ……今年は凄い」


 ビリビリー。

 雷属性だ、上位属性なんて嫌味を言うだけある。

 周りも驚いている様子で、シーンとなった。


「流石はセイラン様!」「雷属性なんて初めて見ました!」


 セイランは表情を崩さずに私をチラ見して離れた。

 なんか自慢しているみたいで腹立つな。

 でもルナードは手を抜けと言われているからなぁ……ルナードは。


「次はジェジェ・トーガン君ですねー」

「ジェジェ君頑張ってねー」


 ジェジェの番が来た。拳を腰だめに構えて……


「ストーンナックル!」

 石の拳を飛ばして見事的に命中。

 土属性を浮かせて命中させるなんて結構な訓練が必要……やるねえ。


「三百っと。じゃあ、次はルナード・エリスタ君……よろしくお願いします」


 さて、ルナードの番だ。どうするかな……いきなり最下位だと逆に駄目かもだし……平均狙って行くか。

 人差し指と親指を伸ばして、的の中心を狙い……魔力を絞って絞って……


「ばーん」

 ヒュンッと小さい魔力の弾丸を発射し……あっ、やべ。貫いちゃった。でも解る人にしか解らない小さな穴だし……まぁ良いか。


「遅刻眼鏡は何も出なかったわね」

「ぶっ、六千……まじか……」

「はははっ何も出ていないじゃない。魔法使えないんじゃないの?」


 セイランの取り巻きが嘲笑し、セイランも鼻で笑っているように見えた。ふっ、これが見えないとはまだまだだね。クベリアさんがうわ…っていう顔をして、先生も顔が引き攣っていたので、先生にこっそり百にしておいてと伝えたら微妙な顔で頷いていた。


「ルナード魔法失敗してんじゃん」

「はははっ、あれは失敗だねー」


 貫いちゃったから失敗だ。

 次の人が始まった時に、トイレに行くねーと言って訓練場から離れた。

 そして、人目の付かない場所で眼鏡を取って白い服に着替えた。


 ふっふっふ、これから一年零組クルルの魔力測定が待っているのだ!

 なんかやっぱり幼女が私の魔法を見たいと駄々を捏ねた結果こうなったんだけれど、王子やセイランに上には上が居る事を教えるのも大事という名目だっていっていた。

 流石に顔は隠したいので、目元だけ見えるマスクを装着している。可愛さ半減謎の美少女感満載ってところで……いやこれじゃあ女か男か解らねえじゃん。

 まぁ良いか、訓練場へ行こう。


「ん? あれ、誰だ?」

「見た事無いな」


 戻った頃には一組の測定は終わり、校舎から歩いてくる私をみて首を傾げ……クベリアさんがみんなの前に立った。


「では……これから一年零組の測定をするわ。皆さんは、出来る限り離れてね」

「副学院長、零組って何ですか?」


「零組は、特殊な子が入る組ね。ほらっ、離れて離れて!」


 ザワザワとする一組の所に到着すると、何やら的が取り換えられた。なんか凄い頑丈そう……


「あれを、壊せば良いのですか?」

「えぇ、学院長が結界を貼っているから全力で良いわよ」


 声を抑えて口調は丁寧に話して、ルナードと違う感じにしないとね。

 さて、二十メートル先に大きな扉みたいな的が聳え立ち……あれを壊すにはどうするか考える。

 一発勝負だし、溜めの時間は沢山あるから威力の高い魔法で良いか。


「天界に住まう光の精霊よ、君が愛しているこの光を……私の炎で、もっと輝かせてあげたい」


 右手に白い魔法陣、左手に赤い魔法陣を展開し、一つに重ねる。


「ちょ、ちょっと……それ、まさか……みんなもっと離れて!」


「この輝きは君を愛してくれる、この炎と共に愛してくれる、悪を滅する熱い心で! 合成魔法・天熱!」


 的目掛けて、魔法陣を解放。

 光と火の合成魔法・天熱は、真上から太陽のような高熱のエネルギーを目標に照射する魔法。動かない敵や大きくて鈍い敵に有効な、威力は高いけれど使い勝手の悪い魔法だ。あと私も結構熱い。

 だから、ものの数秒で的が溶けてドロドロになった。


「……計測不能、です」

「……」

「ちょっとやり過ぎちゃいましたっ」


 マスクで見えないだろうけれど、えへっという顔でクベリアさんを見ると、深いため息の後に力なくやり過ぎと言われた。

 これでも手加減したのよ。

 一組のみんなも口を開けてポカーンとしているので、話し掛けられる前に駆け足で退散。スポッと着替えて別方向からこそこそルナードとして一組に紛れた。


 いやぁー、気持ち良かった。やっぱり魔法は我慢しないに限るね。



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