バレたら怖いのよ
……意識が浮上してきた。
……目を開けると、目の前にイシュラの顔があった。
結構寝ていたのかな? イシュラが添い寝する形で、すやすや眠っていた。
「イシュラ」
「……すぅ、すぅ」
「いーしゅーら」
「……んっ、んっ」
ちょっとエッチな声を出すだけで起きない。
そういえば龍の心臓を使ったんだっけ。解析してみよう……
……龍人イシュラというものが見えたけれど、気のせいに思いたい。竜人は居るらしいけれど、龍人は聞いた事が無いのよ。
それに魔眼持ちの龍人でしょ? 国が喉から手が出る程欲しいと思うよ。
もうイシュラは、私より強いもんねー。
益々普通の女子からかけ離れたよねー。
イシュラはもう戦闘が無いと思って私服に着替えているな……胸が貫かれた影響で、サラシが切れて胸の大きさがよくわかる。
つんっと指でつついてみると……あれ? 前よりも沈む。肌着を上から覗くと……前よりも大きい……
「谷間が……」
「んっ? ルクナ、起きたんだね」
「イシュラ、理不尽だ」
「何が?」
「うぉっぱいが大きいっ!」
「あぁ、サラシが切れちゃってさぁ。さっき一応縫ったけど、新しいの買わなきゃ」
なによその余裕。
持っている者が持つ余裕が腹立つよね。
「身体に異常は無い?」
「うん、調子良すぎて怖いくらい。それでさ……顔なんだけど、どうなってる?」
「めっちゃ美人でおっぱい大きいから腹立つよ。鏡見る?」
「見る……あっ、治ってる」
「多分シャフェルの核のお蔭かな。聖竜の力は凄いねー」
「……ありがとう。感謝してもしきれない。ありがとう……」
抱き締められ、ずっとお礼を言われていたけれど、イシュラの力が強すぎて背骨がミチミチ言っている。
「く、くるちぃ……イシュラ、力の加減をしないと大変かも」
「えっ? あっ、ごめん。確かにまた強くなったかも」
「実戦積めば私の親より強いよ? まぁイシュラ英雄計画が進んだから良いけれど」
「私は普通の生活が出来れば良いし……そういえば宝箱あったから開けようよっ」
宝箱?
あっ、シャフェルの残骸の中に白い宝箱がある。
寝起きで体力も回復したし、開けるか。
この残骸も回収するかな。もしかしたらシャフェルの核と合わせれば復活しそうだし。
「素材は……龍鋼石か。魔法金属で良いのかな?」
「のどちんこと同じ素材だね。ルクナ開けてっ」
「ほいほい、おーぷん。白っ」
「白いね……またごちゃごちゃしてる」
乱雑に入っていた中で目を引いたのが、白い鞘に納められた剣。
この感じは精霊装具かな。
解析……天龍剣・シャフェルという何か悪意を感じる名前の剣だった。
「天龍剣・シャフェルかぁ……この精霊、シャフェルだったりして」
「えー、ルクナ持っててよ。急にシャフェル出てきたら泣くもん」
お次は白い豪華な魔導書。
ドラグ・フォトリラニティ……うわっ、あれかよ。
「イシュラ、あげる」
「えっ、怖い怖いっやだっ!」
「恐らくこの国でイシュラしか使えないよ?」
「えぇ……」
お次も白い魔導書……何冊かあるな。
ドラグ・ヒール、ドラグ・フォトンブレス、ドラグ・オーラ……あと龍魔法の応用とか。
……うん。
「イシュラ、やったね」
「嬉しくないよ。ルクナ使ってよ」
「だから龍魔法使えるのイシュラだけなんだってば」
「龍魔法……?」
おっ? 収納の指輪だ。これは私が貰うか。
デザインも悪くないし、イシュラとお揃いみたいで良いね。
いつでも家出出来るように収納カバンも持っておかないとなぁ。
「お揃いだねー」
「あっ、うっ、うん」
白くて可愛いネックレス……効果は可愛さが増す。
白くて可愛いブレスレット……効果は可愛さが増す。
白くて可愛いリング……効果は可愛さが増す。
……着けてみよう。
「……どう?」
「るくなぁ……めちゃくちゃ可愛い……」
ちゅーしないでよ。
失敗したな、イシュラが纏わり付いて離れなくなった。ちょっとまだあるんだからどいてよ。
次は白い杖、聖杖・セイルーラ……効果は光魔法増幅かぁ……綺麗だけれど私の身長くらいあるから邪魔よね。天龍剣・シャフェルの方が効果高いし。
「うーん、使う?」
「私は赤い剣あるしいらないよ」
聖なるミイラ……キモい。
効果はわからない。
「イシュラこれ視て」
「きもっ、万能薬の素材らしいよ。あと二つくらいあったら万能薬になるって」
イシュラの魔眼便利ね。
お次は金のヤカン……名前はヤカン様。忘れ物を見付けてくれと願ったら見付かるらしい……なぜヤカン?
ヤカンの下には棒に矢印が付いた魔導具……これはっ!
「イシュラ、これ凄いよっ! 矢印君って魔導具!」
「目的地の方向を矢印で指してくれるのか……えっ、凄くない? 探し物も指してくれるよ!」
これがあれば迷宮探索なんて楽勝だ。
あとは使わない魔法武器と防具、変な絵画や調度品に、宝石がごろごろ。
山分けしよう。
「これ、遊んで暮らせるよね」
「うん……凄いね」
「ファイアロッドの攻略、やめる?」
「いや……ルクナの眼鏡探さないと」
「忘れてた。お金持ちになると隠居したくなるからつい……」
「ルクナってたまにおばちゃんみたいだよね」
本来の目的とか忘れちゃうよね。
そうそう、心臓に引っ付いている迷宮核を取り除かないと。
氷の柱を足元から伸ばして、心臓のところにやってきた。ドクドクしてきしょい。
心臓に刺さっている大きなダイヤみたいなものを引っこ抜くと、心臓の鼓動が激しくなった。
迷宮核の大きさは、私の手のひらくらい。ちょっと魔力を通すのが怖いけれど……
「私が使っても良い?」
「もちろんっ」
「魔力通してみるね」
「うんっ、緊張するね」
イシュラに見守られながら、迷宮核に魔力を通してみた。
……おっ?
おーー?
なんか湧いてきたっ!
これは……
「おー! やったー!」
「何の能力?」
「ふっふっふー、それはねー帰還魔法だよっ!」
「帰還魔法……あっ、もしかして転移魔法なの?」
「転移魔法に似ていて、魔力を設置した場所に帰れる魔法だよ! これで帰り道が楽になるっ!」
「すごーい。あっ、迷宮核視たい。ちょっと見せて」
もっと早く欲しかったよ。
転移出来る場所は一ヵ所だけれど、自由に設置出来るから……
「あっ……」
「どうしたの?」
「これは空間魔法の一種なんだけれどさ……」
「古代魔法だったよね?」
「バレたら大変かも」
「なんで? お母さんも使えるんでしょ?」
「うん、問題はエルフィさん。空間魔法の研究をしていてさ……手段を選ばないっていうか、秘密にしておかないと私が研究対象になるんだ」
「研究対象になったら……どうなるの?」
「……死にはしないと思うけれど」
そうだ、思い出した。
エルフィさんはいつも空間魔法を調べている。母の事は特別だから危害を加えないけれど、私は別だ。
魔力を根こそぎ抜かれて調べられる。
だから、この魔法は使わずにお蔵入りだね……ぐすん。
「じゃあ、用も無いし帰ろ?」
「うん、あっシャフェルの残骸だけ収納させて」
「手伝うよ。えっと、全部は難しそうだね」
「袋に入る分だけにするよ」
大きな袋に一杯入れて収納し、出口の尻穴を目指す。
もう魔物も居ないみたいだから楽だ。
「この迷宮はどうなるのかな?」
「その内迷宮の力が抜けて、龍が元に戻る筈だよ」
「直ぐには戻らないんだね」
「そうだね。迷宮の規模によるけれど早くて一ヶ月、遅くても五年くらいじゃない?」
「そっかぁ、龍を見てみたかったなー」
「心臓を使ったから、イシュラの家族みたいな感じかな?」
「えー、でもそうかも。なんか通じてる感じあるし」
「元の龍に戻ったら迎えに来るかもねー」
元の砂龍……ガイアに戻ったら、イシュラはどうなるのかな。心臓発作とか起きないよね?
イシュラは迷宮核をかざして、何かを考えるようにため息を吐いていた。
「この迷宮核売ったら幾らになるかな?」
「十億にはなると思うけれど、迷宮核は集めているから査定にも出さないかなー」
「どうして集めてるの?」
「んー……綺麗だし、形や色も違うからなんか集めたくなるんだよね。使い道無いのになんでだろ?」
「視たけど、合成出来そうだよ?」
「えっ、ほんと? えっ、帰ったらやってみよっ!」
「あの、私も、ルクナのお家に挨拶行きたい」
「じゃあ……一回帰ろっか」
母に会いたいけれど、父が居ない事を祈るか。
尻穴には直ぐに着いた。まぁ生存者も居ないし帰っても良いか……イシュラがそわそわしている。どしたの?
「やっぱり眼帯する」
「なんでさ。堂々と出来るんだよ?」
「恥ずかしいの……」
「そのしおらしい感じ良いね。まぁ嘘も分かっちゃうし、私にだけその瞳を見せてくれるなら良いんじゃない?」
「うんっ、ルクナにだけ見せる。あっ、それとルクナ……その服着替えたら?」
「服? あー、血だらけだったね」
着替えてから、軽く身体を拭いて尻穴の魔法陣に二人で乗る。
魔力を通すと、景色が砂漠に変わった。
無事、帰ったみたいだ。良かった。
「はー、やっと帰って来れたねー!」
「ねー、どれくらい居たんだろうね? じゃあ帰ろっか……ん?」
「ルクナどうしたの? あっ……大きな砂丘の向こうに魔力の乱れ、戦闘中かな?」
「……なんで?」
なんで? なんで居るの?
ん? どういう事? えっ、混乱している。凄く混乱している。
混乱しているけれど、行かなきゃ。早く行かなきゃ。
「ルクナ?」
「イシュラ、ちょっと見て来る」
「えっ? ルクナっ、待ってよー」




