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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
王都学院編

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この学院は学院長が可愛い以外に良い所あるかしら

 

 はぁ……生き返った。

 学院長室のトイレで用を済ませ、ふと考える。ここに来られない時はどうするか……

 男子トイレは入りたくない。かといって女子トイレに入ろうもんならボコボコにされそう。


「別にトイレに行く時だけ女子になれば良いんじゃないかえ?」

「トイレの時だけ? ですか?」


「スカート履いて眼鏡を取れば女子になるじゃろ? こんなに顔が違うならルナードだとバレぬよ」

「それは、お母さんに聞いてみないと……」


「任せるぞえ。なんなら学生証でも作ってやろうかの? 名前、あるんじゃろ?」

「まぁ……名前はありますが……」


「警戒するでない、アズぴょんの子じゃから解っておる。適当に決めて良いぞえ」


 ルクナ、ルクナ、ルナ? クーナ? うーんルク、クル……クルル?


「クルルでお願いします。母とも知り合いなんですか?」

「ほいよ。零組にしておくでの。アズぴょんとは殺し合った仲じゃな」


「殺し……敵だったんですか?」

「まぁ……抱かせてくれと言ったら……いや、忘れてくれの」


 ……? 教えてくれなかった、一応母に聞いてみるか。

 幼女が頭をすりすりしてきたので、恐る恐る頭を撫でてみると……にぱぁっと笑ってギュッとされた。可愛い……匂い嗅がないで。


「零組ってあるんですか?」

「あるぞえ。若くして亡くなった者は零組に入れられ、卒業の年にわっちが卒業式をするんじゃ。古い習わしじゃの」


「そう、なんですか。知りませんでした」

「まともに知っているのは遺族と副学院長だけじゃからの。噂が一人歩きしている組じゃから何組と聞かれたら零組と言えば良いのじゃ」


 幼女が窓際の棚を開けると、名前の書かれた札が並んでいた。

 上に零組と書かれていて……なんかカタカタしている札があるけれど、気にしないようにしよう。


「じゃあここが零組の教室という事、ですか?」

「教室は隣じゃ。これからは学院長室の扉の隣に、小さい扉があるからそこから出入りしての」


 幼女が鍵を渡してきた。

 これで出入り自由、か……


「あの、今日初めて会ったのに……どうしてここまでしてくれるんですか?」

「可愛いは正義、可愛いは世界を救う、可愛いものには愛を尽くせ。わっちの信念じゃ」


「はぁ、そう、ですか。学院長の方が可愛いですよ?」

「ここではステラちゃんと呼んでの」


「ステラちゃんの方が可愛いですよ?」

「……えへぇ」


 可愛い。

 ──キンコンカンコン。


「この音は何ですか?」

「これは授業開始の合図じゃの」


「へぇー、じゃあ、今授業が始まったんですね」

「そうじゃの。戻らなくて良いのかえ?」


「そう言うなら離してくれませんか?」

「嫌じゃ」


 離せし。

 ちょっと、またセイランって子に遅刻有り得ぬんとか嫌味言われるじゃん!

 ぬんってなんだよ。思考で噛むくらい焦っているんだからさ、離してよ!

 どうしよう……あっ。


「……お母さんに言いつけますよ。ステラちゃんに襲われたって……」

「……それは、まじでやめての」


「じゃあ離して下さい」

「チューしてくれたら離すのじゃ」


「……嫌です」


 ──コンコン。

「学院長? 入りますよ……何しているんですか?」

「愛の語らいじゃ」

「……助けて下さい」


 クベリアさんが無言で幼女を摘み上げ、私にウインクをしてくれたので、眼鏡を掛け直してそそくさと退室……


「あっ、ルナードちょっと待って。これを担任に渡しておいて」


 クベリアさんが書いた紙を受け取り、駆け足で教室に向かった。


「すみません遅れましたぁ……あの、先生、これ」

 ……視線が怖い。

 この冷めた空気の中で担任に紙を渡してみる。


「これは……ふふっ、了解しました。席に着いて下さい」

「はいっ」


 みんなの刺々しい視線を受けて着席。前の席のジェジェ君がやっちまったなーという顔で私を見ていた。


「ヘクトル先生、どうして怒らないのですか?」


 えっと確かセイランが担任に意見を言った。

 それに同調するように複数の女子がうんうんと頷き、担任は少し困った顔をして私を見た。


「彼が授業に遅刻した理由もちゃんとしたものなので、怒りませんよ」

「じゃあその理由を教えて下さい!」


 もう入学式初日に厳しいなぁ……幼女が離してくれなかっただけだし。

 先が思いやられるよ……


「ルナード君と同じ生活をすれば何も言えないと思いますが……まぁ、彼には彼の事情があるので、過度な介入はしない方が良いですよ?」

「私は理由が知りたいだけです。遅刻なんて有り得ませんから」


「理由は、副学院長と話していて遅れました。これで良いですか?」

「……はい」


 セイランが私をキッと睨み、他の女子もキッと睨んだ。

 私はキッキッキっと笑えば嫌われる街道まっしぐらなんだろうけれど、やったら凄そう。やりたい。

 いや駄目だ、今日は初日……帰りも走って帰るから精神力を削ってはいけない。

 どうせもう嫌われているし、今度チャンスがあったらやってみよう。地味顔できっきっきって笑ったら結構怖いんだよ。楽しみ。


 それから担任による今後の予定や学院の地図を用いての案内が始まった。

 今後の予定は、魔力測定と身体測定の日があって、遠足やら課外授業やら……一年なので特に興味深い予定は無い。

 授業は国語、計算、社会、地理、魔法、実技、後は選択で学ぶ事が出来て、放課後は部活動や委員会があるらしい。

 私は入れないかな。実家通いだから遅くなったら何が起きるかわからないし。


 一階は一年と二年の教室と食堂、大ホール、救護室、職員室やらがあって……二階は三、四年の教室やらがあって、三階は五、六年の教室やら……そして用が無い時は四階に行ってはいけない。四階は学院長室があるから。

 あと中等部は近くの建物らしい。


「はーい、これで今日は終わりです。お疲れ様でしたー」

「「「ありがとうございました!」」」


「気を付けて帰って下さいねー」


 担任が去り……誰も立たない。どうしたんだ?

 ……帰って良いんだよね? 今が二時過ぎだから……頑張って帰れば明るい内に帰られるね!

 あっ、クベリアさんの所に行くんだった。立ち上がると、うわっ……凄い注目された。

 ジェジェ君が振り返って、微妙な顔で見ていた。なに? 終わりでしょ?


「ルナード、帰るのか?」

「うん、早く帰らないと暗くなるから」


「そういや遠いんだったな……あのさ…」

「ごめん帰るね!」


「えっ、ちょっ……」


 要件は明日聞こう。

 と言う事で駆け足で出口まで行き、扉を開けて出て行った。

 セイランの仲間の女子が立ち上がって何か言おうとしていたけれど、そんな速度じゃあ私は止められないよ。


 えーっと、職員室はこっちか。



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