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嘘吐きエリスタの最後の嘘  作者: はぎま
エリスタ一族は、最後に大きな嘘を吐く
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私は嘘を吐いて生きている


マイペース更新ですがよろしくお願いいたします(゜ω゜)

 

 エリスタという辺境貴族の子息として…参加したくもないクソ王子主催のパーティーへと参加した。


 学院を辞めたばかりでパーティーだなんて……それに学院長室でメンタルやられたばかりで私は何をしているんだという気持ちで一杯だった。退学の手続きで王都に来ただけなのに、父親の余計な計らいでパーティーに参加する事になっていて、学院前で待っていた城の使いに連行されて今に至る。父親まじで許さん。


 煌びやかな会場で、社交会デビューを果たして間もない者達が集まっていた……私もその中の一人というかパーティーなんて初めてだ。招待された事無かったし……

 煌びやかな景色を眺めながら、私だけ灰色の気持ちを持った人形のように思えた。

 無駄という言葉が、頭をよぎったけれど、今度城に潜入する予定だったから下見が出来て良かった。

 ところでパーティーって何すんの?


「本日は、皆さんに私の可愛い妹を紹介したいと思います! エルナ、練習した通りにやるんだよ」

「もうっ、解っていますわっ。お初にお目に掛かります! ミルエルナ・ヴァン・シンドラと申します!」


 クラスメイトだった王子の隣で盛大な拍手を浴びる女の子を遠目に眺め、少しズレた眼鏡を直しながら夕暮れの空を眺めたいとベランダに足を運んだ。ガラスの扉を開け、誰も居ない空間で夕暮れの王都を見下ろした。

 領地の辺境で仕事をしているであろう父と母は、同じ夕陽を見て私の事を考えているのだろうか……いや、それは無いな。特に父親……

 ここなら眼鏡を外しても良いかな……この前壊したから、眼鏡がズレて気持ち悪いんだよな。


 母から貰った顔を変えられる呪いの眼鏡を外し、薄く浮かぶ月を眺めていると、少しのざわめきの後に誰かがベランダに足を踏み入れる気配……


「むぅー! お兄様ったら心配性なんだから! あっ、先客かし……ら」

「……これは王女殿下、今夜は冷えますので戻られた方が宜しいかと」


 先程挨拶をしていた女の子、今回のパーティーの主役でヴァン王国の第二王女ミルエルナ・ヴァン・シンドラ。私の二個下だから、八歳か。

 金髪のツインテールに勝気な目をした、可愛らしさの中に完成された美を持つ……選ばれし者という言葉がよく似合う王女様。第一王女によく似ていて、綺麗だな。

 正直一人にして欲しいから戻れと伝えたのだが、私の顔を見て止まっていた……あっ、眼鏡を外したままだった。顔を変えられる眼鏡は常に掛けておきなさいという母の言葉が頭をよぎるが、後の祭りだ。

 仕方がないのでやり過ごそう。

 どうせ辺境貴族の子息の事なんて明日には忘れるから……いや、王女の私を見ている目は見覚えがある。


「……ぁ、あ、と」

「……王女殿下? 皆さんがお待ちですよ?」


 お付きの者はベランダに入って来ない。どうやら入って来るなとでも言ったんだろう……私が居たから戸惑っているし、対応が適当だけれど不敬罪にならないよね?


「……あっ! ああああなたのお名前を教えなさい!」

「あぁ、ルナードです。あっ……まぁ良いか…ルナード・エリスタです」


「ルナード……エリスタ? ああと、何処だったかしら……エリスタエリスタ……エ、エリスタ家の領土は、どこにあるのかしら?」

「北の辺境ですよ。名産は迷宮資源。王都から馬車で一ヶ月の場所にあります」


「遠い、のね。あっ……辺境から来たのならお友達なんて居ないわよねっ! 私がお友達になってあげても良いわよ!」


 精一杯に背伸びした態度に、思わずクスリとしてしまいそうになるような可愛らしさ…きっと何不自由無く過ごして今に至るのだろう。

 ありがたい申し出だけれど、辺境の子息が王女殿下と友達なんて学院の奴らの妬み嫉みが怖い。いや、もう学院には行かないんだったな。


 はぁ……正直こんなに可愛い王女様と本当に友達になれるのであれば、喜んで受けていたけれど……辺境だからというお情けで友達になんかなれない。相変わらず私は捻くれているな……


「辺境出身の私なんかには勿体無いお言葉です。お気遣いありがとうございます」

「い、いや、そんなつもりじゃ……あの、うぅ……そんなつもりじゃないのに……」


 少し意地悪だったかな。

 上から目線だったし……いや目上の者だから上から目線でも良いのか、ルナード・エリスタなんて珍しい話のネタにされるだけだからどうでも良いんだけれど……素顔の場合は偽名を使っていたから。

 思考の海に入水する前に、泣きそうな王女をなんとかしないとシスコンクソ王子に殺されかねない。

 何かあげるか……


「……そうだ、これを差し上げます」

 二個で一組の赤い髪飾り。パーティーの待ち時間に自作したんだけれど、ここで役に立つなんて思わなかった。


「な、なに? 髪飾り……わぁ、きれい……」


「……王女殿下に似合うかな、と」

「私の為に……あ、ありがとぅ」


 顔を赤くして……まぁプレゼントなんて直接貰うのは中々無いから恥ずかしいか。

 これでなんとかあの王子に殺されるのは回避。そろそろ戻って欲しいんだけれど。

 あっ、私が移動すれば良いか。

 ベランダは広いから、端の方に移動しよう。


「……」

「……」


 移動、したけれど……付いて来ないでよ。


「……どうされました?」

「ぁの……私は、ルナードに、あげられる物が、無くて……その」


「もう、貰っています。見て下さい、王都を」

「えっ?」


「殿下と一緒に……王都を彩る夕陽を見る事が出来ました。私はもう、満足です」

「るなぁどぉ……」


 夕陽に照らされる可愛い王女の姿を間近で見られるなんて、中々無い経験だから、ね。

 私はきっと、無理して笑っているんだろうな。

 まぁ男として生きられるように教育されてきたから、男としての対応は及第点だと思う。


「では王女殿下、失礼致します」

「まっ、待って! 一度だけで良いから、名前で、出来れば、愛称で呼んで欲しい……な」


 愛称? 何を言っているんだ、誰かに聞かれたら大変だぞ……私が。

 そんな目で見られたら断れないじゃないか……誰も居ないし、良いか。

 ミルエルナ、ミルエルナ……エルナはきっと親族用の愛称だから……まぁ私の偽名に似せてあげよう。


「最高の時間を、ありがとう。ミルル」

「……ぁぅぅ……こ、こちらこそ……ぅぅ」


 内心ドキドキ。

 いつお付きの人が来るかもわからないのに愛称なんて田舎者を虐めたいのか? もうメンタルボロボロだから帰りたいー……あっ、勝手に帰れば良いんだ。

 どうせ、二度とルナードとして会う事も無いから。

 王女をベランダに置き去りにして去るとかヤバいやつに見えるんだろうな。

 どうせなら、目の前で呪いの眼鏡を掛けて地味な顔になってあげよう。スチャッとな。


「私の素顔は秘密だよ。ミルル、元気でねっ」

「えっ……」


 王女が呆然としている隙に会場へ戻って、誰かに話し掛けられる前に離脱! 

「……ルナード?」

 王子が話し掛けようと近付いて来たけれど、早歩きで出口へゴー!

 はっはっはー逃げるが勝ちさ!

 出口を通って招待状を提示して城を脱出!

 よし、ここまで来れば自由だ。


 もう薄暗い寒空を眺めながら、勝手に取られていた宿へと足を運ぶ。折角だから高級宿に泊まって行こうという考えだけれど……


「はぁ……相変わらずモテるなぁ……女子には」


 ミルル王女は、私に惚れてしまったのかもしれない。

 少し……罪悪感がある。

 ルナードは本当の名前ではない。

 もちろん本当の姿でもない。

 一応私は社会的にはルナード・エリスタという辺境貴族の息子だけれど、本当の名前は、ルクナ・レド・ノースギア。

 本当の私は、ルクナという女の子だから。


呪いの眼鏡〜特徴の無い顔になり、友達が多い人に程嫌われやすくなる呪いが付与された眼鏡。別名ぼっちメガネ。


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