救済の闇
ひとまずは助かったようだ。
あの出血量では生きてはいないだろう。恐らく。
大柄な悪魔がこちらに歩み寄る。
「よぉ新入り。危なかったな。お前も俺と同じなんだろ?」
かなり恐い顔しているが、悪い人には見えない。
「あの、あなたは一体」
「俺はバロウってんだが、お前、空から落ちてきただろ?」
「どうしてそれを、あなたも同じ経緯でこの世界に来たのですか?」
「ああ、糞じじいに罵られた後気づいたら真っ逆さまよ」
…一体、私たちと同じ境遇の人は何人いるのか。
「前世の記憶はありますか?」
「それがなー。忘れたんだよ。その前の記憶は嫁がいたってことくらいかな」
「バロウ、あんたどこ行ってたの」
ブーケが蛇の目で睨みつける。
「おう姉さん。決まってんだろ。ギャンブルだよギャンブル」
「宿代いつから払ってないと思ってんのよ!」
「十分儲かってるだろ!宿ぶっ壊れずに済んだんだから大目に見ろよ!」
周りでは後処理が始まっている。死者はいないようだ。
二人の巨人はラビダンテを担いで去っていった。
「あの、ブーケさんとバロウさんはどういう関係で?」
「ただの友達ね。で、こいつは用心棒で食ってるパワーしか取り柄の無い馬鹿よ」
「ハハハ!。こいつだとよ」
バロウは豪快な性格のようだ。そして、隙があったとはいえ一撃で巨大な猛獣を殺害する戦闘力はかなりのものだ。
「げっ!バロウじゃん」
コルテスもこちらに飛んできた。
「よぉ糞ガキ!交尾相手見つかったのか。」
バロウの肩をブーケが掴む。
「おい。とっとと宿入れ。会わせたい人がいる」
「俺は見合いなんてしねぇぞ」
「ちょっと黙ってろ」
私と会話してる時と口調表情が違い過ぎる…。昔何かあったのか。
私達は宿に戻り少女の部屋に着いた。
「うっ、すごい。悪魔4体に囲まれてる」
何故かは分からないが天使はすごく嬉しそうな顔をしている。
「なんやこいつ。堕天使か?」
「この子も、あんたと同じなのよ」
さて、どこから話を広げようか。
私は一つ気がかりなことがある。天使や悪魔に変えたのは同一人物か。
「そういえば、謎の空間にいた石像は名前を教えてくれたと思うんだけど、それって思い出せるかな?」
天使は顔を顰めて答える。
「確かぁ…ケシレルとか言ってたかな?」
バロウも続けて答える。
「俺の時はヅアッガだったぞ」
「私もヅアッガで、要するにケシレルという者は悪魔寄りの人を天使に変えて、ヅアッガはその逆ということでしょうか」
「もしかしたら図書館にある本に載ってるかもしれないわね。その二人?のこと」
「図書館なら今すぐ行けるぜ」
「あんた図書館出禁になってなかった?」
「そういえばそうだ。【剣聖と盾業の営み】て本を糞ガキ共に読ませてやったら締め出されたぜ」
それ多分大人の本では?
「とにかく、私が行ってきます」
「あたいも行くー。もうベッドから出たい」
「トカゲちゃんも行ってあげて。古代文字読めるでしょ」
「はーい」
二人と一匹。図書館で手掛かりを見つけられるといいが。