不幸癖
私は聖職者である。生まれ持った病により、先はもう長くはない。
私は幼い時から教会に赴き祈りを捧げてきたがやはり運命には抗いきれなかった。
医療関係のことはよく分からないが【腫瘍】と言うできものが
体中に散らばっていて手の施しようが無いらしい。
成人を迎えてわずかの時だ、全身に
この世のものとは思えない激痛が走り、痛み止めは無意味に等しく一日中悶えた後私は死んだ。
親孝行出来なかったこと、彼女にプロポーズ出来なかったこと、
友人に何の恩返しも出来なかったこと、自分自身を恨みかけていた。
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『……ぇるか?』
!?………今のは?私は死んだはず。神か?それとも悪魔か?
『聞こえるか人の子よ?』
囁きはするが何も見えない。私は声のする方向へ只管歩いた。
光が段々と照らし始め宮殿のような空間が現れた。
広大で、物々しい建造物。
真ん中には一つの巨大な石像が聳え立っているがどうやら声の主はこの石像のようだ
『我の名前はヅアッガ。全ての天使悪魔を統括する存在』
まだ置かれた状況を把握出来ていない。私は奇妙な存在に驚愕しつつも声の主に問う。
何故自分はここにいるのかと。
間が少し空き、
『そなたは祈り過ぎた。あれだけ体を蝕む呪いを受けながら。一度たりとも欠かすことは無かった。
祈りが多大な力を呼び寄せ天使の力が暴走し、秩序が乱された。そなたには相応の罰が必要である』
理解に苦しむ言動、私は咄嗟に言い放つ
「祈り過ぎた?それの何がいけないのです?聖職者として当たり前のことをしたまでです」
声の主は瞬時に言い返した
『生きるのを慎めば済んだものを、そなたには今から悪魔になってもらう。自主的に死ぬことが
不可能な咒文を付与してな』
突如床からいくつもの鎖が現れ、私は拘束された。
『狂え……罪深い無垢よ』
宮殿が激しく揺れ始める!
けたたましい音と共に石像から黒いオーラがこちらに迫ってきた!
一瞬で私はそれに飲まれながらも激しく抵抗した。
しかし闇はどんどん私を包んでいく。
不快極まりない憎悪が襲う。
「一体何が起きている?あの名前はどの経典にも載っていない。何者なんだ?
それより、私はどうなるんだ?意識が薄れて…」
気づいた時には私の体は完全に固まっていた。
まるで自分と同じ形の穴に入り、土を盛られ生き埋めにされたような感覚。
囁きはもう聞こえない。ただ闇を見つめるしかない私はゆっくりと恐怖を蓄えて二度目の死を覚悟した。
「おかしくなりそうだ。いっそのこと、壊れてしまいたい」
フッ…
突然体が軽くなった気がした。視界から闇が消えていく。
またしてもにわかには信じられない光景を目の当たりにする。
私は何もない天空から落下しているのだ。
かなり不定期になります。宜しくお願いします。