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93 暫しのお別れ

 「いよいよ別れの時が来たようだな」


 一夜明けた朝、シルヴェーヌさんは当初の約束通り仇敵を倒す為、さっそく出発する事になった。


 「色々とお世話になりました。お陰様で良い修行が出来ましたよ」


 「いや、むしろ世話になったのは私だよ。今こうしていられるのは君達のおかげだ」


 「お互い感謝って感じですね! ところでアレッサンドロ達の行き先は分かってるのですか?」


 「ああ、おおよその見当はついているよ」


 「それなんですけど…… やっぱり俺達もついて行きましょうか?」


 シルヴェーヌさんが強いのは十二分に理解しちゃいるが、相手の二人は単純な強さ以外のしたたかさがどうにも気になるんだよね。


 「いや、それには及ばないよ。君達は君達の勇者バトルロイヤルを進めてくれ。そしていつの日か決勝戦で戦おう。その時までに神獣にも勝てる様に腕を磨いておくさ」


 凄いよな。神獣の力を目の当たりにして、尚勝つ為に腕を磨くか。それが言える勇者が何人いるだろうな。強がりでも中々言えるこっちゃない。格好いいってこういう人の事を言うんだろうな。


 「それじゃ、またな」


 そしてシルヴェーヌさんは……


 「コラコラコラ! なぜテンちゃんを連れて行こうとしているのです!」


 しっかりとテンちゃんと手を繋いでからに!


 「テンく~ん! 私の事も姉様と呼んでくれぇ」


 テンちゃんに抱き付きアホなお願いを始めた。感動的なお別れのシーンが台無しだ。テンちゃんも困った様な笑顔でシルヴェーヌさんの背中をポンポンと叩いている。

 

 「シルヴェーヌ姉様、またきっと必ず会えますから」


 そんなこんなで愛くるしいテンちゃんに後ろ髪を引かれながらシルヴェーヌさんは旅立って行った。


 シルヴェーヌさんに騎士の到達点を見出だしていたリンちゃんも号泣している。


 短い時間で使い魔達がこんなになついたのも、きっと彼女の人柄だろう。無事に目的を果たして本当に決勝で戦えたら最高だな。


 「さてと、俺達も随分と足止めを食ってしまったからね、改めて神獣フェニックスを求めて旅立ちますか!」


 「「「がってん承知のすけ!」」」


 うん。これぞムサシファミリーよ。素晴らしいではないか。

 

 目指すは隣国シュワルツ王国。大陸の北東に位置する。現在は南部のアーノルド王国にいるので国境となる険しい山越えが必要になってくる。


 「登山か。普通に嫌だな」


 「仕方ないだろう兄上、空を飛べるわけじゃあるまいし」


 「飛べますが」


 ふよーんと浮かんでみせる。


 「そうだった。兄上はあれだな、えーとほら……  そう! 器用貧乏!」


 「リン、本当の事を言うのはやめてあげなさい」


 「姉様達…… 兄様が泣いてますよ」


 いいんだ…… どうせ俺なんて…… ムダにギフトが多いだけの木偶の坊(でくのぼう)さ……


 「そんなに落ち込むな兄上、自分は凄いと思って言ったのだぞ。空飛べたりムッツリスケベだったりドMだったり死体食べたり死体動かしたり女性を奴隷にしたり身代わりを作ったりヘタレの癖に泣いてから強いとか……」


 「リン、全部本当の事ですが一息に捲し立てるのは勘弁してあげなさい」


 「兄様! 兄様! 首を吊ろうとするのはやめて下さい!」


 へへっ、どうやら生きてる価値ないや俺。


 「兄様早まらないで! リヴァイア姉様のパンツあげるから!」


 「え! 本当に!」


 ズビシッ!


 「あげるわけ無いでしょう。バカな事やってないで出発しますよ」


 「「「はーい」」」


 主は俺。偉いのはリヴァイアさん。そんな不思議な関係。どうぞよろしく。


 結局山越えは普通に歩いて登山する事にした。一人副装して二人を担げば無理矢理飛べない事も無いのだが、旅の(おもむき)に掛ける。疲れたらこっそり俺だけ飛んでやる。


 先ずは国境線となる山までの移動となる。ミドロから馬車が運行していて、麓の村までざっと五日の道程らしい。


 途中王都なども通過するが特に用も無いので基本的にはスルーするつもりだ。一泊なりする様ならちょいと観光くらいはするけどね。


 で、ミドロに着いた俺達はさっそく馬車乗り場へと向かう。


 「ザ・馬車って感じの馬車だな」


 「ムサシ様は馬車はあまり乗った事無いのですか?」


 「いや、子供の時に観光用の馬車はあるけどね。あとキンシザ村のダネスさんのくらいかな。こんなに本格的な長距離のは初めて」


 「何か別の移動手段でも有るのか? 兄上の世界ってのは?」


 「うん。自動車って言って、燃料を使って動かす乗り物がある。ネオピアの蒸気船と感じは似たようなもんだよ」


 「何だかピンとこないが便利そうだな」


 「便利は便利。ただね…」


 「以前おっしゃってた便利の代償ですか?」


 「そ、排出されるガスが環境的に問題があったりね。まぁその辺も環境に優しいものにかなり見直されて来てはいた」


 「僕はその乗り物いらないです」


 テンちゃんが珍しく怒り顔で訴えてきた。そんな顔でさえ可愛いのでほっこりしてしまう。


 「テンちゃんは自然が大好きだもんな。でもまぁ考えてみりゃネオピアには魔法あるしな、上手い事やりゃ環境汚染をしない作りに出来るかもなぁ」


 エンジニアの様な専門知識は無いので確かな事は言えないが、少なくとも電気自動車。事、リンちゃんに至っては雷珠を使えるしエコロジーこの上も無いだろう。もう一度言うが、それを作るだけの技術と知識は無いんだがね。


 「そっち関連のギフトでも手に入ったら作っても面白いかもね。ま、今は無いからこのお馬さん達に頑張って貰いましょうか」


 そのうち皆でドライブとかしてみたいな。ではでは、馬車旅と洒落こみますか。


 

読んでいただいてありがとうございます!

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