91 二回目のわぁ~お
お医者さん作業をこなさなければならないシルヴェーヌさんと別れ、間借りしてる家へと一人帰路に着く。
「尻毛♪尻毛♪尻毛~♪尻毛にもんまり~♪腹毛♪腹毛♪腹毛~♪腹毛にぬんがり~♪」(※使い魔はリヴァイアサン公式メインテーマ尻毛にもんまり)
相も変わらず俺は素敵な歌を口ずさみながら玄関扉を開ける。
ガチャ
「「え!?」」
わぁ~お♡
そこには下着姿の神獣がいました。
「テンちゃぁぁぁぁぁぁんっ!!」
「兄様ぁぁぁぁぁぁっ!!」
トテトテ走り寄って俺に飛び付くテンちゃん。
ぎゅっ! スリスリ!
「うひょー! 癒されるぅ! やっと目覚めてくれたかぁ」
「はい! ご心配お掛けしましたぁ」
んで、その可愛いお顔を見ると頬っぺに634て書いてある。
……やべぇ
「ムゥゥゥサァァァシィィィ」
背後に感じる強烈な殺気。間違いない、あの御仁だ。俺は振り向かない…いや、振り向けない。振り向いたら殺られる。
「ワレェ私が休眠中を良い事に随分とオモロイ真似してくれるのぅ」
ガバァッ!
俺は全力で土下座をする。
「そそそそんな滅相もございません!」
「これ何やコレ? のぅ? ちょうこっち見てみぃ、私の額のコレ。ろぉくさぁんよぉんで634って! アホかボケェッ!!」
「ひぃぃぃ! すんませんすんません!!」
怒髪天のリヴァイアさんの額にはしっかりと634と刻まれている。
「何や? 私はあんたの所有物け? おう?」
「いえいえそんな、たまたまリヴァイア様の御厚意で使い魔をしていただいておりますと言うかハイ、そんな感じで…」
「せやなぁ。ほなおかしいやんけ? なんで私の額に634? こんなもんオドレのパンツに書いとくもんやろ。何や? 私の額はオドレのパンツか?」
「違います違いますっ! 手違いです! 何かしらの手違いです!」
「まぁええわい」
「え!? も、もうよろしいのですか?」
「ああ。私の額はオドレのパンツや。認めたる。ほな、パンツはパンツらしくオドレの股ぐらに収まろうかのぅ」
え! ちょ! それって!
言うなりおもむろに俺を仰向けに突き倒すと、両足をガバッと押し開き、頭をおもいっきり反らすリヴァイアさん!
「し~っか~りパンツ履いておくんなましぃ!」
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
ゴッ!!
リヴァイアさんによるクリティカルスマッシュ(※金的頭突き)を食らった俺は股間の紳士に走る激痛に抗う事かなわず、昏倒した。
「まだズキズキする……」
「まったく仲が良いのか悪いのか」
村の老人達への医療行為を終えて帰ってみれば、泡吹いてぶっ倒れてる俺。慌てて癒しを施してくれたシルヴェーヌさんがいた。
「尻とか股間とか、下の治療ばかりさせてるのはわざとではないだろうな?」
「んなわけ無いでしょう! 危うく異世界で性転換するとこだったんですよ!」
「自業自得と言う言葉を知っていますか? 知らないのならもう一撃…」
「すいませんすいません俺が全面的に悪かったのでどうかご勘弁を」
落書きを消す作業で額を真っ赤にしたリヴァイアさんが、馬糞を見る様な視線で俺を見下ろしている。それでも怪しげな関西弁じゃ無くなったから一応は落ち着いてくれたのだろう。
「兄様大丈夫ですか?」
ぎゅっ!
「テンちゃんをハグをしてれば直ぐ治るよぉ」
「エヘヘ~」
テンちゃんもぎゅっとして応えてくれる。テンちゃんエネルギーは小マメに充電しないとね。
「何かちょっと羨ましいな」
シルヴェーヌさんもテンちゃんの愛くるしさにやられた様だ。修行を手伝って貰った恩もあるしサービスしとくか。
「テンちゃん、シルヴェーヌさんにもハグしてあげて」
ハイっと、元気にお返事すれば今度はシルヴェーヌさんに引っ付くテンちゃん。
「うっ! これは… 可愛いっっ!!」
夢中でスリスリしてるシルヴェーヌさん。気持ちはわからんじゃ無いが、それ程かね。
「な、なぁ! 私のギフト全部譲渡するからこの子くれないか!」
……このお姉さんも大概だな。
それにしても、使い魔達の復活そうそうのドタバタ劇だったが、今回はもきちんと目覚めてくれて本当に良かった。
「リヴァイアさん達も無事に目覚めてくれた事だし、今夜は盛大に宴を行いましょうか!」
村の人達も交えて派手にやろう! もうすっかり顔馴染みだからね。
そんなわけで村の中央にあるちょっとした広場で、宴がおこなわれる事になった。修行ついでに狩り捲った獣肉など惜しみ無く提供したのでご馳走だ。何しろグルメ神獣のご機嫌を損ねる訳にはいかない。デコ落書きのせいで俺の立場は崖っぷちなのだ。
「ささっ、リヴァイアさん。あれもどうぞ、これもどうぞ」
「…ありがとうございます。モグモグ」
「あ! お飲み物ですね、へへっ、ちょいお待ちを」
徹底したマンマークでおもてなしだ。見よ! 日本の社会人時代に会社で鍛えた接待能力を!
「普通美人は三日見れば飽きると言うけどリヴァイアさんは飽きませんねぇ」
「お世辞が過ぎると逆効果ですよ」
何て言ってるけど満更ではないのを俺は知っている。この人は実は誉められるの好き好き神獣なのだ。クールぶってもダメだぞ!
「いやいや、お世辞なわけ無いでしょう。リヴァイアさんて本当は神獣じゃなくて美の女神様なんじゃないですか?」
「何をふざけた事を言ってるのです、まったく」
よし、あの耳の赤さ加減。テレている証。このペースで太鼓持ちでオーケーだ!
「なぁテン君、君はあんな大人になっちゃダメだぞ」
「はいぃ…」
リヴァイアさんに全力で太鼓持つ俺を眺めながら、シルヴェーヌさんがテンちゃんに諭していた。
さて宴もたけなわ、そろそろお開きに……
スダダダダダダダダダダッッ!!
そこに猛烈ないきおいで駆け込む一迅の影!
「あぁぁぁぁにぃぃぃぃうぅぅぅぅえぇぇぇぇっっ!!」
「「「「あっ!!」」」」
俺、リヴァイアさん、テンちゃん、シルヴェーヌさんはそこでようやく彼女の存在を思い出したのだった。
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