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89 消えた双剣

 どうやら[弓聖]勇者は地面の中へ逃げた? らしい。どんなカラクリかはさっぱりわからない、十中八九ギフトと思うけども。逃げたわけではなく、ただ身を潜めてるだけの可能性もあるので最大限警戒は怠らない。【れおなるど】がね。


 俺も小マメに探知はするけど、ネームドモンスターのズバ抜けた嗅覚の方が余程頼りになるので、別に楽をしたいわけではない。楽をしたいわけではない。大事な事は二回言うと良いらしいぞ。


 結局[神眼]で確認が出来なかったな。アイツのギフトは不気味だから確認したかったがな。


 「あ! シルヴェーヌさんはどうなったろ! やられてたりはしてないと思うが」


 狼男と化したアレッサンドロと戦闘してるはずなのだ、急ぎ戻らねば!


 そして大急ぎで戻ってみればシルヴェーヌさんは一人で突っ立っていた。さっきまで着てなかった[神鎧ジャッジメント]を着てるところをみるに、やはりアレッサンドロもかなりの手練れなのだろう。


 「ああ戻って来たか。残念ながら逃げられてしまったよ」


 「こっちもです。【れおなるど】やレイさんも助っ人してくれて結構追い詰めたんですけどね」


 「奴らのいやらしいところは逃げ時を違えないところさ。そこは徹底している」


 にしたって、シルヴェーヌさんから逃げきるってのも、それはそれで凄いと思うが。


 「しかし傷一つありませんね。というよりは[再生力]で直ぐ治るのか」


 「ああ、役立つギフトで助かるよ」


 敵に回した時はどうしていいかわからんぐらい凶悪なギフトなんだが。トロールグレートより回復スピードが早いなんて反則だろ。


 「そう言う君は尻が真っ赤だぞ。お猿じゃあるまいし、どれ見せてみろ」


 矢が刺さって血だるまなお尻に気付いたシルヴェーヌさんが回復してくれる。回復魔法も使えるのだが、もっぱら[聖女]の癒しを使うらしい。単純に傷の回復だけでなく、精神を落ち着かせたり、ちょっとした病気も治せるとんでもスキルだ。

 

 「[聖女]に尻を癒させるとは贅沢の極みだな」


 レイさんがさっそくからかってくる。


 「村の老人達のリウマチ治療とかさせてるのだって無駄な[聖女]使いでしょうに!」


 「う! 痛いところを突くな」


 「いやいや、無駄ではないよ。私で役立つなら大いに活用してくれ。無償で寝泊まりさせて貰ってるしね」


 さすが[聖女]なんてギフト持ってるだけあるな。そのせいで普通に村人に聖女様とか呼ばれてるし。俺なら治療費ふんだくってるところだぜ!


 しかしネームドモンスターペットにするわ、聖女は無償で癒しを施すわ、ヒロエ村はすっかり羨望を集める村になったな。


 その後も暫くはアレッサンドロ達をその場で警戒していてのだが、本当にこの辺りから逃げたらしいので、今日は村に帰る事にした。なんとなく修行って気分でも無くなったしね。



 「あれぇ…… おかしいなぁ……」


 村に戻った俺達は、あてがわれてる空き家に帰って来たのだが、ある物が無くなってる事に気付いた。

 

 「どうした? なんか探し物か?」


 「ええ、確かにここにまとめて置いておいたのに双剣が無くなってるんですよねぇ……」


 「空き巣かもな。普段は【れおなるど】が睨みを効かせているからコソ泥なんて出ないみたいだが暫く出払ってたしな。その双剣は高いのかい?」


 「ん~、どうでしょうかねぇ? 基本的に売り物じゃなくてギフトですからねぇ」


 「そうかギフトか。それは災難だったな……」


 「無いなぁ、盗まれちゃったかなぁ」


 がさごそ、がさごそ。


 「いやいやいや! いやいやいやいや!! ななな、何て言った!? ギフト!? ギフトで双剣て言ったら君、それは使い魔の麒麟だろう! 何でそんなに悠長に構えているんだ!!」


 「え? まぁそうですけど、お腹空いたらきっと帰ってくるんじゃないですかね?」


 「無いですかねって君なぁ、犬猫じゃあるまいし」

 

 「失礼だなぁ、犬猫じゃペットじゃないですか。神獣は読んで字の如し! 獣だ! がお~」


 「な、なんか君の使い魔達が不憫でならんよ。もっと大切にしてあげてくれ」


 シルヴェーヌさんがとても疲れた様に訴えかけた。俺の使い魔にまで気を掛けてくれるなんて本当に優しい人だな。この気持ちに応える為にも使い魔達を大切にしないと! よし、こうだ!


 書き書き…書き書き… 大剣と弓にマーキングだ!


 「6…3…4…でムサシと。よし! これで無くしても俺の物ってわかるだろ!」


 「そう言う事じゃなくてだな… いや、もう何も言うまい」

 

 ? シルヴェーヌさんはとてもお疲れの様だ。昼間の戦いがさぞかし激戦だったのだろう。


 「あ~、ところでだな。今後の予定について少し話をしたいのだが」


 「ぬ! それはズバリアレッサンドロ関係ですな?」


 「そうだ。以前にも少し話したが、私の目的は勇者バトルロイヤルより、そちらを重要視している」

 

 「奴らを追いかけたいって事ですね」


 「いや、今すぐってわけでは無いさ。約束は約束だ。使い魔が目覚めるまでは君の修行に付き合うよ。ただ目覚めてからは奴らを追わせては貰えないだろうか?」


 「そんなお願いせんでも構いませんよ」


 「そう言うわけにはいかんさ。本来なら君に奴隷契約されてもおかしくない立場だ」


 「奴隷契約なんてするわけ無いでしょ! 怒りますよ!」


 「ああ、そうだな。下らん事を言った、すまない」


 生真面目だねぇ。奴隷もいとわないと思っているとは。でも使い魔達が目覚めるまでは付き合ってくれるんだ、それまでに何とか[剣術]はカンストしたいもんだな。

 

 

読んでいただいてありがとうございます!

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