87 敵は上位ギフト
不意の敵襲に身構える俺とシルヴェーヌさん。
「来たっ! 任せろ!」
ヒュゴッ! ガッギィィィンッ!!
飛んで来た第2波を今度はシルヴェーヌさんが地面へと弾き落とした。それは地面へと深く突き刺さりイビツにひん曲がっている。
矢だ。周囲の土を衝撃波で抉り、引っこ抜いたそれは金属製の矢だった。こんな物を射つ事が出来るのかと思う程の重量は、一キロを超えるかも知れない。
「その矢は!!」
俺が手にした矢を見たシルヴェーヌさんが目を丸くしている。
「知ってるんですか!?」
「ああ、よぉく知ってるさ。そしてこの手で倒さなければならない相手だ」
シルヴェーヌさんに殺意が籠る。普段はあっけらかんとしたお姉さんなんだが、こんな表情もするんだな。
それにしてもシルヴェーヌさんをここまで怒らす相手… うん、大体見当はついてたりするんだなこれが。先日勇者バトルロイヤル不幸自慢対決でシルヴェーヌさんの大体の経緯を聞いた。
それは二人の勇者。
シルヴェーヌさんがネオピアに送り込まれた場所で、さんざん世話を焼いて貰った村があったんだとか。その村を少し留守にした時に襲った勇者が二人。この矢はその一人が使ってたものと一緒らしい。
「ここで会ったが百年目だ。君を私事に巻き込んで申し訳ないな」
「いや、相手が勇者なら俺にも戦う理由はありますよ。それが村を襲う様な勇者なら尚更ね」
本当はこんな物騒な矢を射ってくる様な奴はごめん被りたいところなんだが、今は隣に完璧超人いるしな、なんとかなんだろ。
「すまんな」
シルヴェーヌさんは一言謝ると油断なく辺りを窺っている。
「探知」
索敵範囲が一キロに広がった[探知] 人間とおもしき動体をチェックしたところ。
「東300メートル程に北上する人影! そしてそこっ!」
俺達の背後へ回り込もうとしている動体もキャッチ。迷わず剛球一閃、[鉄砲肩]によるスローインクナイフをお見舞いしてやる!
「チィッ!」
金属音が弾けると木々の間から一人の男が現れた。三十代後半か、ちょい上か。オールバックに髭面のニヤケ顔のオッサンだ。
アレッサンドロ バルベリーニ
[格闘10] 格闘技による攻撃の技量が上がる
[剣術3] 剣による攻撃の技量が上がる
[盾術3] 盾を扱う技量が上がる
[獣人・狼] 狼の力を得る
[剛撃5] 物理攻撃力が上がる
[スリ師7] 懐のものをちょいと失敬
[忍び足6] 足音を立てずに行動する
火魔法
[格闘10]に[剛撃5]か。[スリ師]や[忍び足]辺りも或いは戦闘に役立つギフトかも知れない。侮れないギフトだ。そんな中でも際立つのが[獣人・狼]だな、予想通りなら狼男に変身なんかするんだが。そしてシルヴェーヌさんが口を開いた。
「アレッサンドロ。やはりお前らか。まさかそちらから仕掛けて来るとは思ってもみなかった」
「まぁ普通に考えりゃシルヴェーヌ、お前みたいな化け物に仕掛けたりしねぇがな。お前がいると厄介なんだよ、次から次へと邪魔ばかりしくさって。でもこりゃ好機だろ? そこの彼氏を守りながら俺達を相手に出来るか?」
「へっ? あ、いや俺は別に彼…」
「私の彼氏を舐めるなよ!」
は!? ちょいとお姉さん何言ってますの?
「さあムサシ! こんな雑魚さっさと倒してたっぷりと楽しもうじゃないか。私の[床上手]を堪能してくれ」
ぎゅっ! ちゅっ!
そう言うとシルヴェーヌさんが俺に抱き付き、ほっぺにちゅうをした。あの、おっぱい当たって気持ちいいんですけど? どうしよう、こいつら倒したら桃源郷にいっちゃうよ? [床上手]だよ? ふおおおおおお!!
ムクムクと膨れ上がる我がエロスよ! そしてそれは当然の如く[ムッツリスケベ]の発動である!
「おお! 凄まじい効果だ! 君は結構チョロいな」
ちくしょう! それが目的か! そしてその悲しみと怒りは当然の如く[ぐるぐるパンチ]の発動である!
……バカみたいなギフト効果で俺は今猛烈にステータスアップしている。ただただ納得がいかない方法であるのを除けば、確かに凄いギフトなんだが…
「ハッ! なるほどな。ステータスアップのギフトかよ。だが俺だってな……」
アレッサンドロに急速に力が溢れるのがわかる。そしてその容姿もギリギリと音を立てて変貌していくと。
「アオォォォォォォォンッッ!!」
咆哮を一声上げるとアレッサンドロは予想通りに狼男に変身した。
「ヘッヘッヘッ。対聖女用にゲットしたギフトだぜ、今までの俺と思うなよ?」
グルルルルと犬っぽい唸り声を上げるアレッサンドロ、かなりシルヴェーヌさんに煮え湯を飲まされて来た様だ、しかしその上で挑んで来るのだから狼男変化は相当なものなのだろう。
「光あれ!」
シルヴェーヌさんも負けじとギフト[聖女]の祝福をおこなう。俺とシルヴェーヌさんが光に包まれまたしてもステータスアップと状態異常耐性が付与される。
「ムサシ君よ、私はアレッサンドロを相手にする。君はもう一人を相手にしろ。いいか、君が相手どるのは上位ギフト[弓聖]持ちだ。だが安心しろ、今の君なら問題無く戦える。使い魔無しでもだ。さあ、任せたぞ!」
ズルいなぁ、こんな風に任されたら嫌だとは言えないじゃないか。でもまぁ良い機会か、上位ギフト持ち? 上等じゃない。[ムッツリスケベ]と[ぐるぐるパンチ]に負けると言う赤っ恥かいて貰おうじゃないのさ!
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