85 不幸自慢大会
使い魔が休眠状態から目覚めるまでの間、シルヴェーヌさんに剣の手解きを受ける事となった。
城塞都市ミドロだとまた厄介事に巻き込まれかねないと思い、今は先だってのレイさんのヒロエ村に来ている。
「うん、君はやはり剣術のギフトレベル以上に強いな。我流かい?」
「いや、きちんとした師匠がいます。短い間でしたがかなり実践的な剣術を教わりましたよ」
「ほぅ。余程腕が立つ師匠なのだろうな。[剣聖]を得てからの私に技で斬り結ぶなど、本来並大抵では無いのだよ?」
「でも今は相当手加減してますよね? 俺がギリギリ見切れるくらいまでは」
「まぁな。それでも凄い事なのだよ。もう少し胸を張って良いよ」
なんかヨルムさんに教わった剣術が誉められるのは嬉しいな。ギフトの剣術ってのは基礎技術の向上でしかないもんな。そこにヨルムさん直伝の技が乗るから同じレベルの剣術ギフト使いなら正直負ける気はしないね。
でも目の前の[剣聖]なんて持ってる相手には歯が立たないがね。
そうそう、シルヴェーヌさんとの死闘はあの短い斬り合いでもかなりギフト的に高評価? 高経験値? だったらしく、まさかの2レベルアップして今は[剣術6]になっている。
腕が斬り飛ばされたもんな。よく生き残ったもんだよな。後々聞いてみたんだが、シルヴェーヌさんはそれでもゴスタの命令には全力で抵抗していてくれたらしい。つまりもっと本気モードがあったんだとか。抵抗せずに全開バリバリだったら瞬の殺だったと思うと生きた心地せんね。
「で、シルヴェーヌさん的にいかがでした? うちの神獣は? ガチでやったら勝てました?」
「無茶を言わんでくれ。私はあの時、一瞬で死の覚悟をしたよ。もう反則とか越えて笑うしかないな。勝つとか負けるとかの次元じゃないだろう」
「ですよねぇ。でもあれで現状全力の3割程度らしいですよ」
「3割…… バトルロイヤルは君の圧勝だな」
「いやぁ、本当に解放はリスク高いですからね。使って欲しく無いんです。使い魔達が消滅するくらいなら俺が負けて帰還する方がマシですよ」
「まったく君って男は… (そんな君だからこそ使い魔達は解放してる事に気付いて無いんだろうな)」
そんな会話を交えながら手合わせをしてもらっている。手加減されてるとは言ってもそこはやはり[剣聖]。とことん洗練された剣術に学ぶ事は多い。俺の剣術も追々[剣聖]に昇華出来るのだろうか? でも俺の場合シルヴェーヌさん程剣術に特化したスタイルじゃないからな、珠や衝撃波なども織り混ぜた、独特の戦闘術を確立した方が良いかもしれないな。
「そういえばシルヴェーヌさんに聞きたかったんだ。[聖女]ってどんなギフトなんですか?」
「私にもまだ全貌はわからないが、複数のギフトが内包されている様なものだな。回復魔法より強い回復能力、そういえば君のポーションもギフトだろ? あれくらいは回復するぞ」
確かに俺様番長の兄貴分の両腕を復活させてたな。あれは[聖女]の能力だったか。
「後は一時的に全ステータスアップや状態異常耐性も上げられる。これは他人に付与も出来るぞ。光あれ!」
うおっ! なんじゃこりゃ! 力がみなぎるし身体もなんか軽いぞ!
「ズルいギフトですね」
「神獣なんて使い魔のギフト持ってる君が言うか?」
「返す言葉もございません」
「ハハハ、でもまぁ確かにお互いギフトには恵まれてるのかも知れないな」
「でも困ったギフトもあるんですよねぇ」
[ドM] [ムッツリスケベ]なんかは百歩譲って良しとしよう。しかしだ、[カニバリズム] [ネクロマンサー] [女衒] [身代わり地蔵] この辺りのブラックギフトが問題だ。俺が持ってるぶんにはいいんだ、死蔵させときゃいいだけだし。ゴスタ戦では悪人ぽく演技したから良いハッタリにもなったしね。問題は俺がぬっ殺されて帰還した時よ。これらがまた流出してしまうわけだ、ネオピアの罪もない一般人がまた被害にあってしまうかも知れないのだ。
「……なるほどな。確かにそれは問題だな」
俺の悩みを打ち明けるとシルヴェーヌさんもやおら考え込む。
「ギフトは譲渡はあっても消去はありませんからねぇ、困ったものです」
「私で良ければその重荷を引き受けても良いよ。絶対の保証は出来ないが、そうそう負ける事も無いつもりだ」
「いえ、シルヴェーヌさんの実力を疑うわけでは無いのですが気持ちだけ受け取っておきます。これは俺が背負わなければ、責任もって処理しなければいけない気がするので」
「そうか。君は結構損な性分だな。私的には君のそういう所は嫌いじゃないよ」
「それは身に余る光栄って奴ですね」
「それにしてもギフトの数が凄いな。一体どれだけタフな戦いをしてきたんだ?」
「あ! それ聞いちゃいます? それはもう聞くも涙、語るも涙。なんど死ぬかと思った事やら」
「いやいやいや、私とて決して楽な道のりでは無かったよ。そもそもネオピアに送り込まれた場所がだな、神の悪意としか感じられない場所でだな…」
と言うわけで始まった勇者バトルロイヤル不幸自慢対決に俺達は華を咲かせるのであった。
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