81 脅威のシルヴェーヌ
「逃げるな!」
ガチィィンッ!!
得意の三十六計を決め込むところだったのだがゴスタが叫ぶと俺達は逃げる事が出来なくなった。
どんなに逃げようとする意思を働かせても体が拒否するのである。
ロシアンルーレットだ。
「おおすげぇ! 6分の1を1発成功したぜ! まだまだツキが残ってるじゃん!」
俺達の逃亡を阻止する為におこなったロシアンルーレットが一発で成功したらしい。おかげでこちらは逃げる事が出来なくなってしまったわけだが。
「残念、逃げられなかったね。それじゃ改めて仕切り直しだね。今度こそシルヴェーヌさんと戦って貰うよ。シルヴェーヌさん、頼んだよ」
「わかった。すまないな君達、奴隷契約上の命令に逆らう事は出来なくてな。全力でいかせて貰う」
結局こういうオチかよ。こうなったらやるしかないわけだが、[剣聖]はリンちゃんの副装じゃないと捉える事すら難しいからな。ムーンライトに頑張って貰うしかないな。
「みんな、こうなったら被害がどうのとか言ってられない。腹を括ってくれ」
「了解です」
「わかりました」
「…致し方あるまい」
正直この完璧超人シルヴェーヌとやり合うのは避けたかったが、半面今の俺達で通用するのか知りたい気持ちもあったりする。
いや勿論姑息に勝つが信条ですよええ。ただそれはそれ、これはこれってやつです。
「全員突貫!」
ドゴワァッ!!
俺の合図と共に恐るべき魔法攻撃が始まった。町中で申し訳無いがお構い無しの無遠慮な猛攻である。幸い? な事に周りには奴隷女性の屋敷ぐらいしか破壊される家はないのだが。
「シルヴェーヌさんはギフトの感じだと近距離主体と思われます! このまま押しきってやりましょう!」
「「「がってん承知のすけっ」」」
ネームドモンスターのレオナルドですら無傷じゃすまなかった怒涛の攻撃だ、調子こいて真っ正面から受けるとはいくら何でも無謀だろ!
「うっそ! マジか! ナンだよこいつら!」
少し離れているとはいえ、ゴスタや奴隷女性達にも激しい余波が襲ってくる。ギフト[神盾アダマス]を出してそれを防いでいる。かなり大きい盾でもあるのだが、それ以上に見えない何かが盾を中心に展開してるらしく、盾の後方にいる全員をすっぽりと包み守っている。ちょっと欲しいギフトだな。
あれなら防御で手一杯だろう。ロシアンルーレットでちょっかい出せまい。それでも無理やりちょっかい掛けようとしたらゴスタを狙う。
「リヴァイアさん、ゴスタがロシアンルーレットの体制に入ったら潰して下さい!」
「了解です」
シルヴェーヌさんに攻撃を続けながら油断なく答えるリヴァイアさん。凛々しい御尊顔が今日も美しいであります。
珠の攻撃主体の時って実は俺は結構余裕があるってか、ギフトレベルが低いせいで役にたたないんだよね。今はリンちゃん装備中なので雷珠なんだが、一撃で葬れるモンスターとなるとたかが知れてる。だから今は状況把握に徹している。
とは言うもののこの地獄の様相から生還出来る化け物なんているのか? ってくらいには使い魔達がぶっ放し捲っているのだが。
「よし! 全員撃ち方止め!」
見るも無惨な光景である。これは後でギルドなりから大目玉くらいそうだな。下手すりゃ罪人か? まぁいいや、いざとなったらわかるよね? そう、三十六計だ。
「さすがのシルヴェーヌさんもただじゃすむまい」
「ああ、さすがに無傷と言うわけにはいかなかったな」
激しい土煙が晴れたそこにはシュウシュウと煙を吹きながら佇んでいるシルヴェーヌさんがいた。
「な! いくら何でもダメージ無さ過ぎだろ!」
「私の真骨頂だな。[全属性耐性][聖女][再生力]でちょっとやそっとではダメージは通らない。[神鎧ジャッジメント]もあるしな」
いや、ちょっとやそっとでは無いんだが… 屋敷なんか半壊してるし、辺りは何かの災害に見舞われた様な有り様だぞ。
「みんな、相手が悪すぎた。事実上今の俺達の最大火力が凌がれた、もはや策でどうこう出来る相手じゃない。俺とリンちゃんで何とかシルヴェーヌさんを足止めしてみせるから、リヴァイアさんとテンちゃんでゴスタ仕止めて下さい」
「了解しました。ムサシ様、くれぐれもお気をつけて」
つらい役目を押し付ける様で申し訳無いな。ゴスタを殺す=奴隷女性を殺すなんだよな。リヴァイアさんの性格からしてテンちゃんにそこまでやらすとも思えないし。かといってシルヴェーヌさんの相手なんてやらせられない。ここは俺の踏ん張りどころだからな。
「いくぜ突貫!」
リンちゃん副装のままシルヴェーヌさんに突撃を掛ける。[韋駄天]とリンちゃんの装備で得られる速度アップの能力は大変相性が良い。瞬速ってレベルの速度が出せるのだ。
シュッ! ギィンッ!
「ほう、速いな」
しかしながらそんな攻撃もシルヴェーヌさんは事も無げに捌く。[剣聖]ってのは[剣術]の上位ギフトなんだろうな。
「こちらからもいかせて貰うぞ」
ヒュッ! キィィン!
今度はシルヴェーヌさんからえげつない速度の斬撃が打ち込まれる。リンちゃんの副装で動体視力が向上されてなければ今の一撃でまっ二つだっただろう。それほどまでに苛烈な一覧だった。
「いや、君を侮っていたようだ。全力でいかねばならない様だな」
シルヴェーヌさんが言うなりしっかりと構えをとった。どうやら本気の本気らしい。
(来るぞリンちゃん! とにかくリヴァイアさん達がやってくれるまで時間を稼げればいい!)
(ああ! わかっている!)
やってやんよ! こんちくしょー!
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