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79 寝付けない夜

 「眠れ無いのですか?」


 「ああリヴァイアさん、明日の事を考えたら中々に」


 対勇者ゴスタ戦に関しての作戦を侃々諤々(かんかんがくがく)と煮詰めていった俺達だが、それでも元々2割程度の成功確率はそれほど進歩のある策とまでは至らなかったのだ。

 俺とてゴスタの身代わりとなる女性達は助けたいのだ。しかし出来る事と出来ない事ってのはどうしてもある。申し訳ないが身内の危機には容赦なく切らせて貰う。ただその上で少しでも助けるにはどうしたらと考えてしまい、中々寝付けず宿屋の供用バルコニーで少し涼みながら頭を休めていた。


 「あまり根を詰めすぎないように。睡眠を取るのは重要な事ですよ」


 「う~ん、わかっちゃいるんですけどねぇ」


 なんのかんのと言ってもこういう時に気に掛けてくれるのがリヴァイアさんだよな。

 リヴァイアさんはそのまま俺の座ってる長椅子の隣にチョコンと座る。


 「ネオピアは何処にいても星空が綺麗ですよね」


 夜空をぼんやり眺めていれば、否が応にも満天の星空が目に入る。


 「ムサシ様の故郷ではあまり綺麗では無いのですか?」


 「う~ん、場所によりけりですねぇ。環境汚染の進んだ場所だとほっとんど見えません」


 「星空が見えないくらいの環境汚染ですか……」


 「ええ、人間が便利を求めて払った代償なのです。ネオピアも発展していけばそうなるのかなぁ…」


 「私はこの綺麗な星空を失いたくはありませんね」


 「俺もです。願わくばこの満天の星空をリヴァイアさんと……いや、テンちゃんやリンちゃんも一緒に皆で眺めていきたいです。その為には明日の作戦は成功させなければ! もっとだ、もっと出来る事があるはずなんだ!」


 下手の考え休むに似たりとは言うものの、成功確率が上がる方法を考えずにはいられない。などと意気込んじゃいるが、さっきからなーんも思い浮かばない悲しさよ。


 「ムサシ様」


 「ぬ? 何ですか?」


 ふわっ ぎゅっ


 「え?」


 リヴァイアさんは俺の後頭部に手を回すと、優しく自分の胸に抱きしめた。


 「そんなに思い詰めなくても大丈夫ですよ、きっと上手くいきます。ムサシ様はよくやってくれていますよ、弟妹達があんなに楽しくしてる姿は久しく見ていません。それはムサシ様が引き出したものです。そんなムサシ様が選んだ道なら失敗しても何も文句はありませんよ。それにもし失敗しても得意の…」


 「得意の三十六計逃げるに如かず!」


 「はい。それこそムサシ様の真骨頂」


 「誉められてるのか、けなされてるのかよくわからないです」


 「フフ… 勿論誉めているのですよ。さて、そろそろ明日の為に部屋に戻って寝ましょう」


 「こ、この流れだと添い寝してくれるのかな? ドキドキ」


 ズビシッ!


 「調子に乗るんじゃありません」


 うう… 世の中そんなには甘くないか。


 それでもリヴァイアさんのおかげで何か張り詰めてたものがこう、軽くなった気がしてその後は簡単に寝付けた。




 「「「おはようございます!」」」


 「みんなおはよう!」


 使い魔の三人は俺より早く起きており、ハモって朝の挨拶をしてきた。仲良き事は美しきかな。


 「兄上、今日は絶対成功させるぞ!」


 「僕も頑張ります!」


 「お! 二人共やる気まんちくりんだね!」


 当たり前じゃないかと息を巻くリンちゃん達を見つめるリヴァイアさんと目が合うと、コクりと頷く。全員気負いもなく士気は高くて結構だ。やってやろうじゃないのさ。


 食事や身支度を終えると早速出発する。まだこの町にいるとも限らんのだが、まぁいなくてもそう遠くへは行って無いだろう。


 昨日の事件のせいで町を行き来する人の姿は少ない。得体の知れない力を使う勇者の存在には、ギルドや衛兵達もおいそれとは手が出せないようである。


 少ないながらも道行く人や色々なお店で情報を集めると、まだこの町に滞在している事がわかった。奴隷落ちしている女性の屋敷に滞在しているらしい。


 「で、その屋敷まで来てみたが」


 「でっかいですぅ~」


 テンちゃんが驚くのも無理もない大豪邸だった。


 「どうする兄上? こちらから攻め込むのか?」


 「いや、出て来るのを待とう。いざって時に逃げやすい」


 「そうか。その辺りは兄上に任そう」


 屋敷の門から少し離れた場所で待ち伏せする事小一時間。ゴスタは相変わらず女性達を侍らせ現れた。昨日失った奴隷分の女性は既に補充されている。シルヴェーヌの姿も勿論あった。


 待ち伏せこそしたが、今回は奇襲作戦ではない。ゴスタを殺せば身代わりに女性達が死ぬのだからな。


 「よし、それじゃ始めるぞ」


 「「「がってん承知のすけっ!」」」


 こんな時でも乗りを忘れない使い魔達。おまいら極上だぜ!

 

 そして俺達は正面から堂々とゴスタと接触をはかる。奴も神眼持ち、俺の存在には即座に気付くだろう。案の定俺を視認したゴスタの顔が歪んだ笑みを称えた。


 「へぇ~、昨日の今日でまた勇者とか。てかお兄さん随分ギフト持ってるね」


 「まぁな。それなりに修羅場はくぐってるからな」

 

 「ふ~ん。で、今度は俺からギフトを奪うつもり?」


 「まぁそうだな」


 「お兄さんも神眼持ってるからわかるでしょ? 俺を殺せばどうなるかくらい」


 「そこの奴隷達が死ぬんだろ? それは俺の知った事か? 死んだら食ってもいいし操ってもいい。むしろ歓迎だな」


 「チッ! なんだよ面倒臭いタイプか。まあいいや、シルヴェーヌさん相手してあげて。お兄さんこの人も神眼でわかるでしょ? 化け物だって。せいぜい頑張って倒して」


 ゴスタに促されるとシルヴェーヌは剣を抜き、構えた。


 

読んでいただいてありがとうございます!

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