76 厄介な勇者
宴を終え一夜明ると、俺達はミドロへの帰路へと着いていた。
ミドロでの目的だった神獣麒麟は目的通り仲間にする事は出来たし、特に留まる理由はない。
となると次の目的になる。本来は神獣フェニックスを先に仲間にしたかったのだが、居場所がわからず麒麟なら知ってるかも? で、ミドロにきたわけだから…
「リンちゃん、フェニックスの居場所を知ってるかい?」
「ん? ああ、フェニックスならシュワルツ王国だな。国境の山を越えた村に居ると思うが… 何しろひとつどころにジッとしない奴だ、今も居るかはわからん」
うーん、あっちゃこっちゃ行かれるとお手上げだな。とりあえずは行ってみるしかないか。その後はそこで考えよう。
「じゃあ皆さんミドロで一息ついたら、シュワルツ王国を目指しましょう」
「「「がってん承知の助!」」」
お! さすがに姉弟。息ぴったりやんけ!
そんな平和な帰り道、何となくリンちゃんの尻を叩いたりしながら歩を進める。
「やはり尻を叩かれるのは今ひとつ釈然としないのだが」
「それだけ魅力的な尻なのさ」
「そ、そうかぁ?」
ほんのり顔が紅潮している。まんざらでも無い様だ。
「本当にチョロい娘…」
リヴァイアさん、それ言っちゃダメってあなたが言ってませんでしたっけ?
尻が魅力的なチョロ娘さんはニタニタ薄ら笑いを浮かべて不気味なのでほっとき、歩を進める事数時間してミドロへと帰還した。
「相変わらずの騒々しさよ」
「ま、これがこの町の良いところだな」
「にしても少々騒々し過ぎる気がしますね。ほら、あちらの方が」
リヴァイアさんが指差す方向に、何やら人だかりが出来ている。何か問題でも勃発したのかな?
テケテケと野次馬根性丸出しで近づくと。
「ヤバい勇者だ、みんなあの男の死角に隠れて!」
騒動の中心に一人の勇者がいた。まだ若いな、17、8くらいだろうか。
ゴスタ アホライネン
[槍術1] 槍による攻撃の技量が上がる
[ロシアンルーレット] 願いを叶える運試し
[身代わり地蔵] 契約者にダメージの肩代わりをさせる
[女衒6] 任意の元に女性を奴隷化出来る
[神眼1] 目にした相手が勇者かどうかがわかる
[神盾アダマス]
炎魔法 水魔法 雷魔法 回復魔法
どうやらレベルアップした神眼は確認出来る距離が伸び、ギフトのほかに使用出来る魔法も見えるようだ。おかげ様で神眼1のゴスタより先に確認出来た。
しかしいまいち全貌のわかり辛いギフトだな、レベル無しギフトが三つか… 女衒なんてギフトが6って事は碌でもない奴に間違いないと思うのだが。
ただ魔法が使えるにしても攻撃ギフトは槍術1なんだよな、他のギフトが戦いの基点なんだろうな。
ちょっと手を出すには情報が足らんなぁ。
「ムサシ様、いかがなさいますか?」
「ギフトが謎なんで様子見ですね」
「了解致しました」
で、現状なのだが。
ゴスタとにらみ合う様に数人の男がいる。誰あろうその人、俺様番長一座だ。あいつらも懲りないねほんと。距離があるので何を話しているのかまではわからんけど、十中八九俺様番長が絡んでるんだろうが。
なんでかって言うとゴスタは女性を周りに侍らせているからだ。今も両脇に女性を抱えてニヤニヤと薄ら笑いを浮かべている。
「俺ちょっとこっそり接近してみます」
「ならば自分もついていこう」
バレたら即効で離脱出来るしリンちゃんはありだな、念のために副装で近づく。
ゴスタの死角からこっそりと近づくと、ようやく声が聞こえる距離までこれた。
「おい優男! さっさと女をよこせって言ってんだよ!」
うーん俺様番長、ブレないクズだ。でもゴスタはどこ吹く風だな、まったく取り合う気が無いみたいだ。それより問題なのは連れている女性達だ、全員何かに怯えたような… いや、これはあれだな、女衒で奴隷化させられた女性達なんだろうな。
「ヘラヘラ笑ってんじゃねぇ!」
そんな中、ついに俺様番長の手下がキレた! ゴスタに殴り掛かるが。
バリッ!!
手下のパンチはゴスタには届かなかった。ゴスタから走った電撃が手下を貫いたのだ。威力は抑えられているのか死んではいない、しかしビクビクと痙攣して倒れている。感電して麻痺させたとかそう言う事だろう。
「てめぇっ!」
手下をやられた俺様番長がいきり立つが。
「待て、お前では無理だ。俺がやろう」
そんな番長を制して前にでる男が一人。両手に曲刀…カットラスってやつか? それを持った男が現れた。
「あ! 兄貴! ヘヘッ…おい優男! てめぇもこれまでだなぁ、兄貴の曲刀に切り刻まれやがれ!」
兄貴分がいたのか。しょーもない。しかし兄貴ねぇ…… いやまぁ勇者相手にするにはちぃっとばっかり役不足だわぁ。一般人にしてはそれなりに腕が立つのかも知らんけども。
「我が曲刀の切れ味! 身をもって味わうがいい!」
言うや否や、兄貴が曲刀を振り回しゴスタに襲い掛かる!
ガキキキィン!! キィン!!
しかし兄貴の曲刀はゴスタの前に現れた巨大な盾によって全て弾かれた! これはギフトの盾だろうな。
「ふーん、曲刀の切れ味ってのはそんなものなの?」
興味無さげにゴスタは呟いた。
「な!? 一体何処から盾を!? チッ、まだまだ五割の力も出してないわ!」
「へぇー、そりゃ厄介だ。ならその曲刀を持つ両手にはご退場を願おう」
ガチリ
ゴスタは一丁のリボルバーを出現させると、銃口を自らのこめかみに押し当てる。
「フッ、三分のニかよ! 楽勝じゃん」
すると薄ら笑いを讃えたまま、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
ガァンッ!!
激しい銃声が鳴り響くと、こめかみから血を吹き出して倒れた。
ゴスタが連れている女性の一人が……
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