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72 お姉ちゃんセンサー

 説明せねばなるまい。お姉ちゃんセンサーとは弟に標準装備されてるお姉ちゃんを探し出せる素敵センサーだ。


 「東の方角300メートル程に愛しのお姉ちゃんリヴァイアさんがいます」


 「まだ言うのか兄上。中々に強情なのだな」


 すっかり呆れ顔のリンちゃんを尻目に東の方角へ進む事300メートル――


 「やぁ愛しのお姉ちゃん首尾は上々のようですな」


 「やぁ最愛の弟よ。ご覧の通りです」


 実際リヴァイアさん達が居たりする。もちろんお姉ちゃんセンサーなんてハッタリである。そんなもんがあったら世のお姉ちゃんはおちおち散歩も出来やしない。


 「な、なななななんで居るのだ」


 「お姉ちゃんセンサーなめるな」

 

 「ズルだ! 何かズルしたんだろう!」


 正解。


 「失敬な。何かしら証拠でもあるのかね?」


 「くっ… 無い」


 たださっき探知がレベルアップして索敵範囲が1キロに広がっただけなんだがね。リンちゃんは悔しそうに頭を垂れている。鼻でスパゲティー忘れて無いからな!


 チョロイ妹はとりあえずほっておき、改めてリヴァイアさんへ。


 「また凄い捕り物ですね」


 「1体くらいは無傷で倒したいと思いまして」


 さすがリヴァイアさん。1体目は焼け焦げ、2体目はズタズタ。まったく売り物にならないからね。


 で、今ハイオーガはどんな状態かと言うと、溺れてます。ええそれはもう森の中で絶賛溺れてます。でっかい水球にすっぽり飲まれジタバタしています。ある意味コイツが1番悲惨な殺され方かも知れんな…

 しばらくすると動きが無くなりプカーっと浮かぶハイオーガ。森の中で土左衛門になった貴重な瞬間ですね。


 「テンちゃんのお姉ちゃんは強いねぇ」


 「はい!」


 姉の勇姿にニコニコ顔のテンちゃん。でもその横には鼻でスパゲティーとブツブツ呟く残念なお姉ちゃんもいるがね。


 「いやあご苦労様です。因みにもう1体はさっき仕留めましたのでコレで最後です。用はすんだし帰りましょう」


 ハイオーガをポケットにポイして岐路へと着いた。


 冒険者ギルドに戻ると早速以来達成の報告といきたいところだが、恐らく騒ぎがデカくなるからこっそりと報告してみる。受付嬢が一瞬ビクッとするもそこはさすがプロである。すぐに立て直してギルドマスターの部屋に通して貰った。


 「まさか… 本当に討伐してしまうとは…」


 ハイオーガの死体を見せてあげたら目を見開いて驚いている。


 「これで当面の町の驚異は消えたんですよね?」


 「はい、ありがとうございます。国軍に頼らずギルドの面目も保たれました。報酬にはボーナスも付けますのでお受けとり下さい」


 ギルドマスターは深々と御辞儀をする。


 「へへぇ~、もったいなきお言葉」


 俺は全力で土下座する。


 「ちょっ! なんでいつも土下座するのですか! やめて下さい」


 権力には巻かれる主義だ。仕方あるまい。


 ギルドマスターに散々恐縮されながらも無事報告を済ませ、宿屋へと戻ると。


 「いやあ結構な稼ぎになりましたなぁ、晩御飯は豪勢にいっちゃいます?」


 「良いですね。実は行ってみたいお店が」


 「僕お肉食べたいです」


 「自分は何処でもかまわないぞ」


 わいのわいのと談笑に華を咲かす。やっぱり食の事なればリヴァイアさんだろうと話が決まり掛けた時に。


 コンコン


 ん? 誰か来たな。


 「はい…っと、イケメンのレイさん!」


 「よう、突然すまないな」


 俺達の部屋に訪ねて来たのは俺様番長に絡まれたあのイケメンさんだ。

 

 「とりあえず中へ。で、何か俺達に御用ですか?」


 イケメンのレイさんを部屋に通し話を聞く。


 「おや? そっちの可愛いお嬢さんは初めましてだな」


 いや、多分初めましてではないと思う。かの有名な一人騎士団の団長様だからな。


 「ああ、自分はリンだ。宜しく頼む」


 シェイクハンドはネオピアでも普通に使われている。がっちり握り合う美男美女、絵になるね。


 「いやな、さっきギルドで聞いたんだが…あんたらなんだろ? ハイオーガ3体は?」


 「ええまぁ。良く気付きましたね」


 「おちびさんの実力を目の当たりしてるからな、しかしハイオーガ3体を易々と倒す程とは正直思ってなかったが」


 「ギルドマスターにも同じ事言われましたよ。俺達は見た目が強そうに見えませんからねぇ」


 ラインナップは童顔の美男子、美人執事、美ショタ、美人チャイナガールである。自慢のファミリーだ。


 「ああ、バラエティーに富むパーティーだな。そこでだ、そんなあんたらに折り入って頼みがある」


 「ならん! 妹は嫁にはやらん! 先程許嫁を亡くして意気消沈しているのだ!」


 「おい兄上! 正夫君をカウントするな! そもそもレイ殿は自分を嫁にくれと言っていない!」


 「ハッハッハッ、嫁に貰えるなら喜んで貰いたいもんだな」


 「え!」


 おやおや、リンさん。顔が真っ赤ですぞ? さてはこのイケメンにホの字か?(昭和表現)


 「冗談はさておきだ、頼みってのは他でもない。あるモンスターの討伐――ネームドモンスターワイルドベアの【(あかつき)】だ」


 ネームドモンスターときたか。確かに今の俺達なら倒せるのかも知れないが、危険な事に変わりはあるまい。勇者バトルロイヤル以外にわざわざ火中の栗を拾いにいく必要もないからな。


 (リヴァイアさんどうします?)


 小声でリヴァイアさんに相談してみる。


 (危険な依頼である事は確かですね。私達は別の神獣を仲間に入れて勇者バトルロイヤルに備える必要もあります。無理に引き受ける必要もないかと…)


 「よしわかった、自分らが引き受けよう」


 「「え!?」」


 俺らが相談してた横でリンちゃんが高らかに宣言した。ちょ、リンさんや? 何を言っておいでだい?


 「おお! そうか! 引き受けてくれるのか、助かる。出発は明日の昼前になる。場所はミドロを南下した所にある俺の村の付近なんだ、すまないが宜しく頼む」


 では明日迎えに来ると言ってレイさんは去って行った。


 「リ~ン~」


 勝手に決めてリヴァイアさんはご機嫌斜めだ。


 「あ、姉上、自分はだな、騎士としてだな、困った人をだな、あ、あれだな、おおお、おにぎりが、たたた、食べたいんだな」


 恐怖のあまり放浪画家になってるぞリンちゃん。


 「さぁテンちゃん、俺達はお風呂にでも行こうねぇ」


 「はいですぅ」


 とばっちり受けてはかなわないのでさっさと逃げだした。後にした部屋中からリンちゃんの泣き叫ぶ声がしたのは言うまでもない。南無南無……

 


  

 

 

読んでいただいてありがとうございます!

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