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6 アスパラの恨み

 「素朴な味付けながらこれは中々」


 「こちらのスープも大変美味しいです」



 トレイバーさんの馬車に乗せてもらい、俺達はキンシザと言う村に来ていた。


 キンシザはネオピアのクレーシアと言う島国南部に位置する小さな村だとの事。住人も三十人程度で、宿屋と雑貨屋が申し訳程度にあるくらいで、取り立てて見所等はない。ただ、北と南に伸びる街道の先にはそれなりに大きな町があり、町と町を行き来するのに丁度良い休憩場所として重宝がられている。


 村に着いた俺達は宿屋で暫く滞在する様に求めたられた。ダネスさんの容態が安定したら一緒にきちんとお礼がしたいとトレイバーさんが言うのだ。

 

それまで宿賃は持つから待機しててくれと言うことらしい。


 俺はリヴァイアさんを剣状態のままと言うのも問題があるので、連れ(リヴァイアさん)が後から来るからと断ったのだが、勿論お連れさんの宿賃も出すから待っててくれと半ば強引に宿に宿泊することとなった。


 とは言うものの、そもそも所持金0だから大いに助かる話しだったりする。久しぶりにちゃんとしたベッドで寝れるし、お風呂だってある。人間洗濯機いらずなのだ。極めつけは御飯が美味い。なにしろ狩った獣を焼いて食らうの毎日だったせいか、きちんと料理されたものを食べれるのが非常に嬉しかった。うん、改めて食事というのは大切だと知らされたよ。


 今はリヴァイアさんも人間状態で宿屋の食堂兼酒場みたいなところで、一緒に料理に舌鼓をうっている。俺一人で御飯食べたらスネられちゃうからね、連れと合流した事になっている。


 「ところでリヴァイアさん、さっきから周囲の目が痛いのですが」


 リヴァイアさんは超絶美人のおねいさん。執事服も相まって悪目立ちするのだ。


 「そんなことより、そのお肉いらないならもらいますねモグモグ」


 「あーっ! それは大事に取っておいたんですよ!」


 「そんなに大事だったら名前書いて仕舞っておいて下さい」


 くそぅ! 楽しみに取っておいたのに! 完全に舐められているな、主としての立場をわからせてやらねばならぬ! 


 「やい! リヴァイアさん!」


 「あ、スープがなくなってしまいました。ちょっとおかわり貰ってきて下さい」


 「あ、はい、ただちに」


 トテトテトテ……


 「すいませーん、スープのおかわり貰いたいんですけどー」


 俺が厨房のおばちゃんに声を掛けると、あいよーとおかわりをよそってくれた。


 よし、リヴァイアさんに早く持っていってあげよ…………………


 「違ぁぁぁぁぁうっ!! 主の威厳見せるところだっただろぉぉぉぉっ!! パシられた! なんの違和感もなく普通にパシられた!」


 俺はプンスカしながら席に戻ると、


 「よう姉ちゃん、俺と一緒に飲もうぜぇ」


 モグモグ


 「よう、聞いてんのか姉ちゃん」


 ゴクゴク


 リヴァイアさんが酔っ払いに絡まれて? 完全にスルーしてるから絡まれてるっていえるのか?

酔っ払いの独り言にしか見えんな。


 「おい! 舐めてんのか!」


 たまりかねた酔っ払いがサラダのアスパラを食べようとしたリヴァイアさんの肩を突き飛ばした。


 ポロッ


 あ、アスパラ落ちた。


 落ちたアスパラを見つめ肩を震わすリヴァイアさん


 「こら姉ちゃん舐めたらただじゃおかねぇぞ」


 酔っ払いはなおもリヴァイアさんの肩に掴み掛かる。コラ、ばっちぃ手で触るな! 羨ましいな!


 ゴポッ!


 「ゴボボッ! ゴパッ」


 酔っ払いがリヴァイアさんに掴み掛かかった瞬間、酔っ払いの頭がスッポリ水の玉に包まれた!


 「アスパラの恨み…… 万死に値します」


 ヤバい目がマジだ! このままじゃアスパラ殺人事件でお縄を頂戴してしまう!


 「リヴァイアさん! その辺で! ねっ! 俺のアスパラあげるから」


 「勇者様のはさっきもう食べました」


 「食ったのかよ!」


 「しかしまぁ、わかりました。この辺で勘弁してあげましょう」


 ペッと、酔っ払いを放り捨てるリヴァイアさん。ゴホゴホと激しく咳き込む酔っ払い。


 「このアマ! てめえ覚えてやがれ!」


 酔っ払いはありがたいくらいのテンプレかまして去って行った。


 「やぁお嬢ちゃん強いんだねぇ、アイツは年中酔っ払っちゃお客様に絡んで迷惑してたんだよ。酒代だってツケで払いやしないし。お嬢ちゃんのおかげで胸がスーッとしたよ!」


 宿屋のおばちゃんが笑顔で言ってきた。これは迷惑料と、サラダやら肉やらいっぱい持ってきてくれた。リヴァイアさんの機嫌もこれで治ろう。


 


 おばちゃんの好意のおかげで少々食べ過ぎてしまった。腹ごなし程度に夜の散歩に出る事にした。


 「うーん、食べた過ぎた、お腹苦しい」


 「みっともないですねぇ」


 お腹をさすりながら歩く俺を馬糞でも見るかのような視線のリヴァイアさん。


 「しかしリヴァイアさん、ここにきてようやく気付いたのですが我々には先立つ物…つまりお金がまったくありません。中々に切実な事態なのでお金を手に入れたいのですが……」


 「普通に考えれば先ず労働かと」


 だよなぁ。実際勇者などと御大層な肩書きがあった所で、たつきの道は成り立たない。口に糊する事すらままならない。日本でもネオピアでも結局勤労は貴いと言う事だ。

 

 「後はモンスターの素材等を売ったりですね」


 「それが手っ取り早いですかねぇ」


 そもそもなにがしかの仕事に就職ってわけにもいかんしね。


 「ならば町へ行って冒険者ギルドに登録しなければなりませんね」


 「では、ここでの用が済み次第町を目指しますかね」


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