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54 バカが見る

 ゾンビキメラも合わせりゃ4対1だ、そりゃどう考えたって勝てっこ無い。テンちゃんが落ち着いてくれるまでの時間稼ぎに徹しよう。


 「提案がある!」


 「なんですか?」


 「じゃんけん三本勝負にしないか?」


 「ふざけているので――」

 「本気だっ!」


 食い気味で言ってやったぜ。


 「ハインリッヒ、坊やに付き合っちゃダメ。こうやってのらりくらりと時間稼ぎしてるだけなんだから」


 さすがおばさん年の功、よく存じてらっしゃる。だがこんな手だってあるんだぜ?

 俺は三人の後ろを見てビクッとしてみると、三人共に後ろを振り返る。


 バカが見る、豚のケツ。


 ギュン! ギュン! ギュン!


 異次元ポケットから取り出したスローイングナイフを鉄砲肩で投げる!


 ギィン! ギィン! ギィン!


 「おわっ! 危ねぇ! なんて汚ねぇマネすんだ!」


 チッ! ゾンビキメラが防ぎやがった。こういう駆け引きは通用しなさそうだよな。


 「アナスタシアの言う通り、貴方のペースに合わせていたら足元を掬われてしまいますね。さっさと終わらせましょう」


 ハインリッヒがゾンビキメラに命令するとこちらに向かって来た。

 図体がデカイ分、移動速度自体はたいして速くない。問題は腕が四本あるってところなんだが、ムーンライトだけで凌ぐのは難しいか…… 備え有れば憂いなしと以前ヨルムさんに貰ったラウンドシールドをポケットから取り出す。


 盾の取り扱いに関してもヨルムさんに一通りは教わってたんだよね。でも俺のメインスタイルが両手持ちの大剣リヴァイアさんだから使う機会がほとんど無かったが。つくづくもヨルムさんに感謝だな。


 ややもすればゾンビキメラの猛攻が始まった!


 ギキィン! キィン! ガシッ!


 四本の腕が振り下ろす攻撃はかなり激しい。しかし剣術と言う上ではお世辞にも巧いとは言えないだろう。基本スペックがゾンビにされた兵士に依存しているのか、ハインリッヒのネクロマンサーのギフトレベルの問題なのかわからないが。


 手数が多いが単調な攻撃が続く、事前にギフト盾術と頑強、剛擊が手に入ったのはラッキーだったな、力負けせずに打ち返せる。


 そして夜、月明かりのある場所でならムーンライトは本領を発揮できるのだ。こちらから無理に斬り掛からないで良い、ムーンライトでゾンビの攻撃を弾くだけでムーンライトから放たれる光の攻撃がゾンビキメラを削る。


 ただ、


 「やっぱりお前やるなぁ!」


 横合いからソムタイの斧が襲ってきた! 間一髪ムーンライトで凌いだが、あまりの重さに剣が跳ね上げられてしまった! ソムタイはムーンライトの光の攻撃に牽制されて追撃は不可能だったが、ゾンビキメラが死に体の俺を襲う!


 ドン! ドン! ドン!


 衝撃波でこれをなんとか防ぐと俺は空中へとたまらず逃げる。


 これはさすがにたまらんわ。リヴァイアさんの腕力アップこそ今は無いけど、あそこまで力負けするとは…… ソムタイは洞窟でやり合った時よりパワーアップしてるのは間違い無いな。


 さて、如何にしたものか? とか思ってたらゾンビキメラの三つの顔が魔法を紡いでいる!


 ゴウッ! ビシュッ! ブワァッ!


 一度に三種類放てるのかよ! お馴染み火炎弾を交わして、バスケットボール位の岩石を盾で受けるも、しまった! 最後のこれ……ん? なんやピリッときたな? なんとも無いな。 何だか紫色の毒々しい粘液を食らったのだが…… ああそうかそのまんまか、毒か、俺毒無効だったわ。


 「ハハハハハ! 猛毒を食らいましたね! 血清ならありませんよ?」


 ハインリッヒが笑ってる。効いて無いのに気付いてないのか? 折角だ、乗っとくか。


 「グワークルシイヨーオタスケーママーン」


 「なんか恐ろしいくれぇ棒読みな台詞なんだがな」


 「ハインリッヒ、忘れたの? 坊やは毒無効持ってるのよ」


 「……失念していました。そうでしたね」


 チッ! 神眼持ちはこれだから嫌だ。プライバシーの侵害で訴えてやるからな! 


 そうこうしている内にゾンビキメラの第二波が放たれる、火炎弾と岩石に今度は水弾だ!


 斬り飛ばし、盾で受け、衝撃波で弾く! 剣術に続き、魔法力も大した事は無いのだろう、ゾンビキメラ恐れるに足りぬわ!


 バチバチバチッ!


 「グワッ!」


 ゾンビキメラの魔法攻撃を凌いだ俺に全身を貫く様な激痛が走った!


 「私も魔法が使えるのお忘れでしたか?」


 ハインリッヒか…… くっそ……


 ひゅるっ! ガシッ!


 「捕まえた」


 「しまった!」


 ハインリッヒの魔法に撃たれた俺の隙を見逃さず、アナスタシアの鞭が俺の足を捕らえた。


 ドン! ガッ! ドシュッ!


 「がっ! グハッ! ゴボッ!」


 そこにゾンビキメラから放たれた第三派を直撃してしまった。さすがに飛行を保っていられず、地面へと落下してしまった。


 「くっそ、ゴフッ」


 「言ったでしょ? 後悔させてあげるって」


 アナスタシアの鞭が激しく俺を打ち据え、ソムタイも斧を担いで走って来ている。


 ヤバい、起き上がらないと! しかし体がガクガクで起き上がる事が……


 「よっしゃ終わりだな坊主!」


 未だ起き上がれない俺にソムタイが斧を振り上げた時!


 ビシュウッ! ビシュウッ!ビシュウッ!


 俺の体がキラキラ光ると蒼く美しい鎧が装着され、水珠から無数のウォーターレーザーが放たれた!


 (ムサシ様、今回復します。ヒール)


 (リヴァイアさん! すんません、助かりました! テンちゃんは?)


 (少しずつ落ち着いてはいますが、まだ戦闘には参加出来ないでしょう)


 (そっか、なら二人でやるしかありませんね)


 (そう、ムサシ様と二人っきりで……フフフ)


 (え!? それってえーとその……)


 むくむくと膨れ上がる我がステータス。ムッツリスケベは所を構わないのだ!


 (ムサシ様、チョロ過ぎです)


 (うぇーん。使い魔がからかうよー)



読んでいただいてありがとうございます!

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