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53 テンちゃんの苦悩

 「これって襲われた村の人達だよな」


 「……でしょう」


 「ひどい……なんでこんな事出来るの……」


 老若男女の区別なく、無差別に殺された村人達が俺達の前に立ちはだかる。


 「やるしかないよな」


 「彼等にとってもそれが救いになると思います」


 「ひどい……ひどい……ひどい……」


 「大丈夫か? テンちゃん」


 「兄様、こんなのって、僕……僕は……」


 いかんな、テンちゃんがここまで動揺するとは思わなかった。きっと人間の負の部分にはあまり触れてこなかったんだろうな…… 


 「リヴァイアさん、ここは俺一人で問題ありませんからテンちゃんをお願いします」


 「了解しました。ムサシ様もあまり無理はなさらないで下さいね」


 リヴァイアさんが人形に戻りテンちゃんのケアに回る。ゾンビと化した村人達はざっと五十人くらいだろうか? クワやらスキなどを手にしてる者が多いがその動きは緩慢でさしたる脅威ではない。


 奴等が撤退するまでの時間稼ぎの肉壁なのだろう。なんかこう、僧侶的なギフトでもあったら成仏させてあげられるんだが、そうそう都合良くあるわけもないからな、申し訳ないが斬り倒させて貰う。


 ムーンライトを手にして元村人達を斬り伏せる。既に死んでいるのはわかっていても、女子供まで斬りつけなきゃならんのは結構メンタルにくるものがある。


 なるべく一撃で葬ってやりたいな。


 「あいつ等はダメだ。生かしてはおけない。こんなの人間のやる事じゃない」

  

 ほっといたら犠牲者の数は増え続けるだろう。勇者バトルロイヤル云々以前の問題だ。


 「よし、これで最後だ」


 ゾンビの群れは全て倒した。出来ればきちんと埋葬してあげたいが、今は奴等を追うのが先だろう。

 

 「テンちゃん、大丈夫かい?」


 「はい…… 兄様ごめんなさい」


 「いや、これは仕方ないよ。ただ、これ以上ネオピアの人達をこんな酷い目にあわすわけにはいかない。俺とリヴァイアさんで()るからテンちゃんは待っててくれ」


 「ううん、僕も戦う。兄様の使い魔として、神獣として、戦わなきゃいけないんだ」


 テンちゃんの中で色々と思うところが有るのだろう。いつもの柔和な笑顔を潜め、男の面構えになってる。


 「そっか、じゃあ一緒にアイツ等ぬっ殺して、ひとっ風呂浴びようぜ!」


 「はい!」


 そうは言ってもあまりテンちゃんに無理させるつもりは無い。リヴァイアさんを武装して洞窟の出口へと走り出す。


 (フフ… すっかりお兄ちゃんが板についているじゃありませんか)


 (可愛い弟ですから。それに俺がダメ兄ちゃんでも頼れるお姉ちゃんがいるし)


 (ムサシ様らしいと言うか… お姉ちゃんの責任は重大になってしまいました)


 (でもテンちゃんみたいになホンワカした子が神獣大戦の時大丈夫だったの?)


 (確かに神獣の中にも争いを良しとしない者もいます、テンもそんな神獣の一人です。しかし神の命令でありネオピアの為となると不承不承参加せざるを得ませんでした。主に後方支援やモンスターの排除担当でしたね。今回の様な悪意そのものと向き合う事が無かったので心の平静は保てていたのかと)

 

 なるほど、神獣たって心は有るし挫けもするか。愛嬌あっていいじゃないの! 人間味あって俺は好きだね。


 「よし、出口だ!」


 急ぎ洞窟を駆け抜け外に出てみると、闇夜を照らすかの様に月明かりとも違うオレンジ色の光源が揺らめいていた。


 「あの方角は…」


 「村のあった方角ですね」


 「兄様! 急ぎましょう!」


 テンちゃんを担いで高速飛行でぶっ飛ばす。村の上空にたどり着いた俺達のみた光景は凄惨なものだった。


 あちこちから上がる炎。以前の村の様に焼き討ちにあっていた。燃え盛る村の中を逃げ惑う人はいない。変わりに蠢くのは人では無くなった村人達だった。


 「ちくしょう! 間に合わなかった!」


 村に降り立ち生存者を探すが絶望的だろう。


 「いよお! 遅かったじゃねぇか。おかげさんで準備万端だぜ?」


 村の広場には勇者三人が待ち構えていた。性格には三人ともう一人……と言ってよいのか異形の者がいる。


 「これは洞窟でおもてなししたゾンビ共とは一味違いますよ。盗賊の頭領やら王国の兵士や魔術師を色々と掛け合わせてますからね」


 ゾンビキメラとでも言うのか…… 三メートル近い体躯に腕が四本、顔が三つある。ネクロマンサーってギフトがこれほどまで外道なもんだとは思わなかったな。


 「さて坊や、あなたは可愛い顔してるからギフトを譲渡してくれれば痛い目みなくて済む様にしてあげるけど?」


 「ケバいおばさんに譲渡するギフトは無い」


 「アハハハハ! 後悔させてあげる」


 余裕だな、ゾンビキメラはもちろんだろうがソムタイのカニバリズムってのも使ったんだろう、死体を食うとかヘドが出る。


 「兄様…… マリーちゃんも女将さんも見当たりません……」


 すっかり仲良しになった宿屋の看板娘のマリーちゃんを探していたテンちゃん、どうやら見付からなかった様だ。コイツ等は女子供も容赦ないからな、残念だが恐らくは……


 「お! なんだちっこいの! マリーちゃんだぁ? もしかして宿屋のガキの事言ってんのか?」


 「おい、あの娘をどうした?」


 「俺のギフト知ってんだろ? 美味かったぜぇ」


 「な! そんな…… マリーちゃん……」


 激しく動揺してるな、やっぱりテンちゃんは連れてくるべきじゃなかったか。副装だけでもしとくか。


 「テンちゃん副装!」


 「……こんな……ひどい」


 「テンちゃん!?」


 「テン! しっかりしなさい!」


 「おやおや、おチビさんはどうやら戦意喪失の様ですね。お楽しみはこれからなのに」


 「リヴァイアさん、またテンちゃんを頼む」


 「ムサシ様! 一人ではさすがに!」


 「だからと言ってテンちゃんをほっとく訳にもいかないでしょう? テンちゃんが復活するまで時間稼ぎくらいはなんとかしますよ、早めにお願いしますけど」


 「……わかりました」


 さて、格好つけてはみたものの、使い魔無しでどこまでやれるか。骨が折れそうだな。



読んでいただいてありがとうございます!

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