43 さらばクレーシア島
「この度はお二人にはご迷惑をお掛けしてしまい、なんとも申し訳」
「なぜ[無い]まで言わないのです」
ぶっ倒れてから三日程療養させてもらい、すっかり体調は回復した。
「兄様元気になって良かったです」
テンちゃんは今日も可愛いね。シャカシャカ頭を撫でてあげるとニッコリスマイルだ。
「それではゼカミカ大陸の城塞都市ミドロに向けて出発しますか!」
いよいよクレーシア島とおさらばである。ネオピアにおいて郷土と言っても過言じゃない土地を離れると思うと感慨もひとしおだ。
目指すはゼカミカ大陸。コの字形のクレーシア島内海から大きく迂回して東へ約三日程度の航海で到着するらしい。
さてさて港に着くと大陸行きの客船を探す。クラーケン撃退した時貰ったフリーパスが使える船会社の船だ。連れの分まで只なんて気前いいよね。
調度あと小一時間程で出港する船があった。乗れるか聞いてみた所問題無いらしい。どころか一番良い客室を開けてくれた。あのフリーパスの効力はどうやら凄いみたいだ。
「一番良い客室とはラッキーでしたね」
「はい。良い船旅になりそうですね」
「僕も楽しみです」
思いもよらぬ幸運にニコニコしながら乗船すると、一人の男が話し掛けてきた。
「ムサシさん! リヴァイアさん! 貴方達もこの船に乗られるのですね! いやぁ、それは心強いな」
誰だっけコイツ?
(ムサシ様、スロースです)
小首を傾げた俺にリヴァイアさんがひそひそ声で耳打ちした。
……スロース……スロース……
「あ! ああ、ああ! イカにシバかれて半目で気絶してたスロースさん久しぶり!」
正確にはイカに捕まったスロースを俺が甲板に落下させ、リヴァイアさんが戦いの邪魔だから蹴っ飛ばして肋骨が折れたスロースだ。与えたダメージの9割方は俺とリヴァイアさんだったが、ご本人は半目で気絶してたからイカのせいにしたんだ。
半目で気絶を指摘されたスロースはウッと顔をひきつらせている。
「と言うとスロースさんも大陸に行かれるのですか?」
「ええ、この船の護衛依頼も受けてますから優雅な船旅とは言えませんけど」
懲りない人だな。またクラーケンがこんにちはしたらどうすんだ?
俺やリヴァイアさんが大丈夫なのかアンタ? みたいな顔をしたから察したのだろう、スロースは続けて言った。
「ハハハ、今回は大丈夫ですよ! あんなヘマは二度としませんよ。大体そうそうこの海域でクラーケンなんて出るわけないですから」
安心して船旅を楽しんで下さいハッハッハッーと笑いながら奥へ去って行ったスロース。
「フラグだな」
「フラグですね」
「兄様、姉様、フラグってなんの事ですか?」
「いいかテンちゃん、あの男……スロースを良く見ておくんだ。フラグを立てた男の末路をだ」
「え!? スロースさんに何が!」
「でっかいイカにシバかれる」
「きっとまた半目で気絶もするかと」
俺とリヴァイアさんは遠い目でスロースの行く末をテンちゃんに語った。フラグを立ててしまった以上どうしようもない決定事項なのだから。
スロースのやり取りの後、俺達はあてがわれた船室へとやって来た。
「おおお! こいつは凄い!」
「兄様、見て見て! 海がよく見えますよ!」
船室は船尾に設置されていて、入ったとたんに出迎えたのは船の後方一面が見渡せる一大パノラマだった。
「これは素敵な展望ですね」
リヴァイアさんもご満悦で何よりだ。部屋の内装も豪華そのものだった。生まれて初めて天蓋付きのベッドをみた。勿論安っちぃヤツじゃないぜ、貴族様が寝る様なヤツだ。
「うっひょ~!」
ベッドに飛び込むとフッカフカやないか~い!
「僕も~」
フッカフカベッドでテンちゃんと一緒にボフンボフン弾む。リヴァイアさんはやれやれとしている。一緒にボフンボフンすればいいのに。
他にはシャワーやトイレも付いてた。軽食なんかも注文すれば持ってきてくれるみたいだ。至れり尽くせりだね。
「よーしテンちゃん、船の探検に行こうぜ!」
「行きます、行きます~! 姉様は?」
「私はお部屋で待ってますよ。二人で行ってらっしゃい」
リヴァイアさんは探検家にならない様なのでテンちゃんと二人で出発だ!
部屋を出て少ししたら尿意が俺を襲った。
「悪いテンちゃんちと待ってて、オシッコしてくる」
大して部屋から離れてなかったので部屋のトイレで済まそうと部屋に戻ると。
ボフンボフン
「……リヴァイアさん?」
「あ!」
フッカフカベッドでボフンボフンしてるリヴァイアさんがいました。
「あ、大丈夫ですいいんですよ続けて下さいニヤニヤ」
俺はニヤケ顔でトイレを済ます。トイレから出るとリヴァイアさんはボフンボフンでボサボサになった髪を整えながら、
「あ、あのこれは違うんです、ベッドの、その強度をチェックと言うか……」
「ああそれは気を使っていただいてありがとうございますニヤニヤ」
「いや、だからそうじゃなくて…」
「それじゃ、探検行ってきますねーニヤニヤ」
俺が部屋を後にすると中からウニャーと言う可愛い叫び声が聞こえた。
「お待たせテンちゃん、さぁ行こうか」
「あの、兄様、今の叫び声って姉様っぽかったんですが……」
「ああそうだね。彼女は彼女なりに叫びたい年頃なのさ。そっとしといてあげるのも男の優しさなんだぜ」
「ふええ~。兄様は大人なんですねぇ」
感心してるテンちゃんに応よ! と答えて俺達は船の探検を始めた。
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