40 新たなる仲間
ジリスクに到着した頃には夜が白々明けてきていた。ルセルクと同じく漁業を主とした港町の朝は早く、既に漁師や市場ではいそいそと働く者でごった返していた。
「みんな! お家に早く帰りたいだろうけど、もうちょっとだけ我慢してギルドまで付いてきてくれるかな?」
子供達から口々にはーいと返事が返ってくる。一旦ギルドで神隠しにあった名簿と照らし合わす必要がある。その間にギルド職員が銘々の家に通達する予定なのだが……
「お、おい! 子供達だ! 子供達が帰って来たぞ~ッ!」
まぁそりゃ目につくわな。案の定あっちゃこっちゃからやって来た町民に揉みくちゃにされた。
ギルド職員もやって来て何とか騒ぎは鎮静化し、子供達の親御さんと共にギルドへ向かう。
その間に物凄くお礼を言われたのだが、元々俺自身が拐われた事と、解決してくれたのはズルズル引き摺られてる赤いおじさんと説明した。
なぜ引き摺られてるのかとか野暮な事を聞く大人はいなかったが、全員顔が引き吊ってたのは言うまでもない。
「いやぁ! よくぞ解決してくれました!」
「フハハハハ! 愛と正義と真実の使徒として当然の事をしたまでよ!」
ギルドでようやく起きた……正確には濡れたティッシュを次々顔に被せてたら十五枚目で起きたハッピーが高らかに笑って答えた。(※良い子はマネしてはいけまてん)
マントと全身タイツの背中は破れ果て、セクシーな尻が丸出しなのに気付いてはいない。そして誰も教えない。なぜならスーパースターハッピーバレンタインだからだ。
「あ、それじゃ俺はこの辺で帰らせて貰いますね」
ハッピーのおこぼれでギルドから特別報酬が出た。リヴァイアさんに心配させちゃったから、これでなんか美味しい物でもご馳走しよう。
「あ、あのムサシ様」
「ん? テンちゃん。どした? 母ちゃんとか父ちゃんは?」
「あの、僕、お母さんもお父さんもいません」
う! また無神経な事言ってしまった! 散々リヴァイアさんにデリカシーを叩き込まれてはいるのだが、これはもう性分だな。
「あー、あのなんつーかゴメンな。お兄ちゃん無神経だったな」
孤児院とかあるのだろうか? さすがにホームレスってわけでもないと思うが。
「あ、違います違います! 僕そう言うのじゃなくて」
これも乗り掛かった船だ。里親探しも手伝ってやるか!
「大丈夫大丈夫! 安心せぇ、お兄ちゃんがきっと素敵な里親をめっけてやるからな!」
ワシャワシャと頭を撫でてやる。
違いますぅ~と言い続けるテンちゃんを抱っこして、良いから良いからと俺達の宿やへ一旦連れて行く事にした。一緒にお風呂に入って美味しい物をご馳走してやろう。
「ただいま戻りましたー!」
「ムサシ様! 貴方はいきなり消えて一体どこをほっつき歩いてたんです!」
帰って来るなり開口一番怒られた。ほっつき歩いてたとかあんまりだな。神隠し騒動解決してきたんだぞ! でもリヴァイアさんも目の下の隈がひどいな。きっと寝て無いんだろうな。謝らないと。
「大体ムサシ様はいつ……も……!」
「姉様! リヴァイアサン姉様!」
「天狐? 天狐ではありませんか!」
おや? 二人はお知り合い? 姉様?
ピョコンと俺から飛び降りるとリヴァイアさんに近づくテンちゃん。
「お久しぶりです! 天狐です! 僕不覚にもこの町でお昼寝してたら拐われちゃって、そこにムサシ様が現れて助けてくれたのです!」
「それはつまり……」
俺達は一連の事と次第をリヴァイアさんに説明した。黙ってコクコクと話を聞いたリヴァイアさんは一通り聞き終わると怒ってしまってすいませんでしたと謝罪した。
「いやいや、俺も心配掛けさせちゃったし、ここはあいこって事で! ちょっとテンちゃんとひとっ風呂浴びてきますから、そしたら例のお店に改めて行きましょう!」
いつもの様に了解ですと答えたリヴァイアさんは、やっとこ安堵したのかホゥっと一息吐いてベッドに横たわった。
一眠りするのだろう。俺達はリヴァイアさんをそっとして大浴場へと向かった。
「うぃ~…… いきかえるのぅ~」
「気持ち良いですぅ」
俺もテンちゃんも極楽気分さ。
「よーしテンちゃん、背中を流してやろう。こっちに座りなさい」
はーいと元気よろしく返事するテンちゃん。ちっこい背中が愛くるしいね!
ゴシゴシ♪ ゴシゴシ♪ テンちゃんゴシゴシ♪
即興のテンちゃんゴシゴシのテーマソングで洗ってやる。途中からテンちゃんも歌い始めた。
「よっしゃ! そしたら前もじゃ!」
相変わらずの元気よろしいお返事と共に振り向くテンちゃんだったが……
「え? リヴァイアサン?」
「?」
ニコニコ顔の愛くるしさ満点のテンちゃんの股間の紳士は凶悪なリヴァイアサンでした。
その後も湯船で泳いだり、タイル滑り大会などして遊んで(※良い子は真似してはいけまてん)見知らぬおっちゃんにひとしきり怒られて部屋へと戻った。
「さて、では参りましょうか」
リヴァイアさんも一眠りしてスッキリしたようだ。この間拐われて行けなかったお店にルンルン気分だ。
お店に着いて食べた料理は噂通りの絶品肉料理だった。グルメ神獣でお馴染みのリヴァイアさんもご満悦のようだ。
「ところでさ、リヴァイアさんとテンちゃんて姉弟なの? 姉様って呼んでたよね?」
「はい。この子は神獣天狐」
ブパァァッ! 水吹き出してもーた!
「ゴホッ! ゲホッ! し、神獣!?」
「汚いですね。そうです神獣です。神獣は神に造られた存在です、便宜上兄弟姉妹でくくられています」
「人拐いに会う神獣って……」
「うう…… すいません」
多分本気で恥ずかしいんだろうな、凹みかたが半端ない。が、無理矢理気を取り直すと、
「で、でも、ムサシ様と姉様はなんで一緒に?」
「ああ、それはムサシ様が件の勇者なのですよ」
「え!? ムサシ様が!? あ! そうか!だからあんなに色々と……」
テンちゃんは何やらブツブツとつぶやくと、
「あ、あの、僕も仲間に! 使い魔にして下さい!」
「へ? そんなんできんの?」
「まぁ、契約を結べば」
「どうしましょうリヴァイアさん?」
「よろしいのではないですか? 天狐は魔力関係に強いですし」
「よし! じゃあテンちゃん。お願いしようかね!」
やったぁ! と無邪気にはしゃぐテンちゃん。
「ムサシ様! 姉様! 改めまして神獣天狐です。これからよろしくお願いいたします」
ペッコリとお辞儀するのテンちゃんに俺達は
「「がってん承知のすけ!!」」
笑顔でハモってサムズアップしてやると、何ですかそれーとテンちゃんの笑い声が響いた。
こうして俺達に新たな旅仲間、神獣のテンちゃんが加わった。
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