39 スーパースターの実力
「はっ! 気でもおかしくなりましたか? 今楽にしてあげますよ」
ハッピーの気がおかしいのはデフォルトだからどうでもいいのだが。
「フハハハハ! 滾る! 漲る! 熱いぞ! フハハハハ! 来たぞ! 燃えるぞぉぉぉぉぉ!!」
ゴッ!
ハッピーバレンタインは雄叫びと共に激しい炎に包まれる!
「な!? なんですか! これは! ええい! まったく次から次へと! さっさと死になさい!」
アレクサンドルがとどめと言わんばかりに燃え盛るハッピーに槍を突きたてたが。
ギィィィン!
突きたてた槍は弾き返され、アレクサンドルは大きくのけ反る。
「何が!?」
槍を弾き返したハッピーが立ち上がると、纏った炎が晴れてゆく。
変身した!?
そこに立っていたのは、変身を遂げたハッピーバレンタインその人だった。仮面舞踏会にみたいな顔上半分を隠すだけだった仮面は、頭全部をすっぽり包むフルフェイス形の仮面になり、真っ赤な全身タイツはゴツゴツしい鎧の様な形状に変貌している。ただし相変わらず胸元は明け広げられ胸毛はモサーっとしているが。
指先の出たウィッシュなグローブは指先まで完全に包まれた物々しい手甲になり、下駄は木製から鉄製になっている。
背中のマントには大きく『漢』と刺繍が入っている。
「フハハハハ。私がバーニングモードに入った以上貴様の勝ち目は無くなった」
ビシィッ! っとアレクサンドルに指先し、高らかに勝利を宣言する変身ヒーロー、スーパースター・ザ・バーニングモードハッピーバレンタイン!
「な、何がバーニングモードですか! そのようなコケ脅しなど私には通用しませんよ!」
アレクサンドルは全身全霊を込めた必殺の突きを変身ヒーロースーパー……長いから省略。ハッピーに放つが。
「バーニン!」
ハッピーは炎を纏ったパンチで返す。するとパンチを受けた槍の穂先は消滅していた。
火力が異常だ……
「な!? バカな! く、それなら! 影縛り!」
「フハハハハ! また動かぬぞ!」
動きを封じられてなぜ笑うのか不思議でならないが、変身して早速ピンチじゃねーか!
「フフフ。影縛りからは逃れられませんよ」
「そうでもないぞ。スターァァァァサァァンシャイィィィィン!」
ビカァァァァァァァッ!!
ハッピーの雄叫びがこだまするとハッピーを中心に猛烈な光が溢れ出す!
ぐわっ! ちょ! 眩しっ!
「フハハハハ どうだ。動けるぞ」
スタスタと歩いてアレクサンドルに近づくハッピー。猛烈な光が縛られていた影を打ち消したらしいな。スターなのにサンシャインとか禅問答みたいな技だが。
「影縛りを! こんな手で!」
「悪漢! 年貢の納め時だ!」
シュッ
悠然と近づくハッピーに焦りを隠せないアレクサンドルは、影へ潜るとテンちゃんの影から現れてその首にナイフを突き付けた。
「おい! 抵抗するとこの子を殺すぞ! あ、あれ?」
アレクサンドルはハッピーに向かって言ったつもりだったのだが、そこにはハッピーはいない。なぜなら。
ボキボキボキ
「ふん。素晴らしい闘争であったのに人質を取るとは興醒めだ」
既にハッピーはアレクサンドルの横に移動してナイフを持った腕を掴み、骨を粉々に砕いていた。
「がぁぁっ! 私の腕がぁ!」
「さらばだ悪漢。悪漢なれど貴様はそれなりには強かったぞ。フハハハハ」
ハッピーはアレクサンドルを高々と空へ放り投げるた。そして、
「バーニングダイナマイツ!!」
放り投げて開かれた手のひらを力強くグッと握りしめると。
ズドォォォォォン!!
アレクサンドルは空中で大爆発を起こした。煙が晴れるとキラキラと光の粒子が散っていた。
勇者アレクサンドルはこれで間違いなく死亡しただろう。
「フハハハハ! 成敗! 私の名はハッピーバレンタイン! スーパースター! ハッピーぃぃぃバレンタイン!!」
勝利の雄叫びを上げるとシュワシュワと煙を吹きながらいつもの全身タイツに戻ったのだが。
「いかん! コイツ立ったまま気絶してる! ってか、なんで股間の紳士までバーニングモードなんだよ!」
正直このまま死んでくれると助かるっちゃ助かるんだが、今回はコイツに助けられたわけだし回復してやろう。神様印のポーションを飲ませてやるとアレクサンドルに槍で貫かれたキズはみる間に塞がっていく。
このキズのまま戦ってたのかよ。恐ろしい奴だな。にしても変身か。バーニングモードはダメだな。アレと正面からカチ合ったらダメだ。多分変身するのに必要な何かがあると思うんだよな、熱血漢のギフトだろうか? にしてもコイツのギフトは謎過ぎだ! 神眼がもっとレベル上がれば細かい内容まで見れるんじゃろか?
と、そう言えばアレクサンドルのギフトはハッピーに持っていかれたけど、今のポーションでレベル上がったな。チャージ時間でも短くなったとか?
[神様印の無限ポーション2]
・使用しても時間経過により復活するポーション 残りフルチャージまで57:43
・オレンジ味
……オレンジ味。
「いやったぁ!」
え? 普通に嬉しいんですけど? あのクソ不味いポーションにオレンジ味ですよ! 神様グッジョブ!
でもチャージ時間は変わらんらしいな。これもレベル上がれば減るじゃろか?
さてさて、それじゃ凱旋しますかね。テンちゃんが子供達起こしてるな。自分から動けるなんて感心感心―――てかテンちゃんで何か忘れてる様な気もするが、思い出せないなら大した事じゃないか。
「おい、ハッピー起きれー」
ベシベシ!
「フハハハハ……ZZZ……フハハハハ」
寝言で笑うなよ気持ち悪いな。つーか起きねーし。担いで帰るか……
「よっこいしょーいちっと! ……ダメだ重たい。引き摺って行こう」
俺はハッピーの両足を持って引き摺って帰る事にした。途中ガツンガツン何かにぶつかる感触はきっと気のせいだろう。
途中途中に相変わらず休み時間を設けつつ、ようやく見えた町はやはりジリスクだった。
「やっと戻ってこれた。リヴァイアさん心配してるぞきっと」
フハハハハハハッ!!




