32 イカんなぁ
ちょっと試したい事がある。手に入れたギフトの神剣ムーンライトの性能だ。
仮にも神の名を頂戴する剣なんだからそれなりに強いとは思うのですよ。
ただ、比較対象が大剣リヴァイアさん。ステータスアップの恩恵もあるこの大剣より強いとも思えないが、とりあえず確認はしておこう。
「リヴァイアさん、神剣の試し斬りをしてきます。リヴァイアさんは船から援護して下さい」
「がってん承知のすけ」
つ、使いこなしてやがる。気に入ったのかな?
「では、いってきまーす」
ふよん。
いやー、便利なギフト手にいれたねー。飛行能力! コツさえ掴めばスイスイ飛べるよ。ギフトのレベルが上がればもっと速度や高度も上がるかしら?
よーし、イカ目掛けて突撃ぞ!
「まずはその足じゃー!」
勢いよく突撃してクラーケンの足を斬り付ける。比較的に先の方の細身な部分を狙ってみると、ムーンライトの切れ味は抜群である事が分かった。
「おお! 切れ味だけならリヴァイアさんより上かも?」
いとも簡単に切断できた。ただ、刀身自体はリヴァイアさん程無い為、根元の太い部分を一発で切断は出来ないだろう。
となるとチクチク斬り刻むしかないか。飛行能力ももっと慣れたいし実戦訓練だな。
さっそく攻撃を再開する。フヨフヨと飛び回りクラーケンを斬り付ける。クラーケンも反撃してくるが、それは衝撃波で弾いてやる。
フム、リヴァイアさん非装備にもかかわらず戦えてるんでない?
そして、も一つオマケがこれよ!
ずびゅん! ずびゅん!
今俺が投げたのは石ころ。そう、ただの石ころ。
しかしこれまた手に入れたギフト鉄砲肩の投擲により殺傷力の高い武器となっている。ゴブリン程度は一撃粉砕出来る威力はある。
「オラオラオラオラオラオラ!」
やれやれだぜとか言いたくなるくらい投石してやる。拾った石ころを異次元ポケットに大量に入れてあるのだ。
しかも俺にばっかり気を取られてると、甲板のリヴァイアさんに水レーザーでズビズビ切られるのだ。甲板に叩き付けられて気絶してたスロースを邪魔って言って蹴り跳ばしてたのは秘密だが。
「フッフッフ。イカ風情が。このまま海の藻屑と消え去るがよい!」
とどめに目ん玉抉ってやんよー! ムーンライトを構え、必殺の突撃を掛ける! が!
ぶわん!
いきなり真っ暗になって何も見えない!
「目! 目がぁ! 私の目がぁ!」
ベチンッ!!
次の瞬間強烈な一撃が俺を襲った!
「ぐほぅっ!」
おそらくクラーケンの足だろう。鞭の様にスナッピィに放たれた攻撃が激しい痛みをもたらす。
だがそれがいい。
え? なんだ今の感情? いや、確かまたふざけたギフト貰ったな。[ドM]だ。
一定以上のダメージを越える攻撃を受けると快感物質と共に腕力が上がる。
悪い内容では無いはずなんだが…… 釈然としないのは気のせいだろうか……
とかなんとか思ってるうちに海に落下してしまった。
「ゴボゴボ」
海流だかなんだかわかんないけど、まともに泳げる様な状態じゃなかった。
ぐぼぉ、お、溺れる! 溺れ死んで帰還すんのか!
溺れる恐怖にパニクってジタジタもがいていたら、首根っこを捕まれぐんぐんと引っ張られて行く。
「ぶはぁっ!! ゲハゲハ!」
「大丈夫ですか? ムサシ様」
どうやらリヴァイアさんが助けてくれたようだ。海面に引っ張り上げてくれた。
「あ、ありがとございます。死ぬかと思った」
「クラーケンが暴れたせいで複雑な海流になってしまったようですね。泳ぎが拙い者には厳しいでしょう」
「リヴァイアさんは余裕そうで流石です」
リヴァイアさんの泳ぎ方は所謂マーメイド泳ぎってやつ? 体をクネクネさせて泳ぐやつ。メチャクチャ速いんだけどね。これが見れただけでも溺れた甲斐もあるってもんよ。
そんなどさくさ紛れにクラーケンは逃げていったらしい。くそぅ。次会ったら干してでっかいスルメにしてやる。
それでも撃退してくれてありがとうございますと感謝された。とりわけ俺のせいで甲板に叩き付けられて、リヴァイアさんに蹴られて肋骨がイッてしまったスロースに神様印のポーションをあげたら、涙ながらに感謝された。
お礼も貰えた。無期限の客船利用フリーパス(お連れ様も無料)だった。ラッキーだ。
だがそれ以上の報酬が個人的にあった。海面から客船に飛んで戻る時、リヴァイアさんをお姫様抱っこ出来たのだ。わざとゆっくり飛んでやった。
やっぱり人助けはするもんだねぇ。イカスミかけられてイカゲソでシバかれたこその報酬よ。
でもこの戦闘で手応えは確認出来た。リヴァイアさん非装備でもそれなりには戦える。
新しいギフトの効果も使える物ばかりで嬉しい限りだ。被ってた剣術に関してはプラス1されて剣術3になったしね。
毒無効は試して無いが。と言うより試す勇気がない。
これだけ揃えばかなり安泰ではなかろうか? いやいや、俺がこんだけ手に入れてるって事は猛者達はもっと持ってると考えよう。
もうすぐクレーシア島の北部の港町に到着だ。また新たな勇者、モンスターとの激戦が予想される。気を引き締めていこう!




