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31 船旅

 「おお! ムサシ! 無事じゃったか! リヴァイアさんも戻ってきたのか!」


 ルセルクの町に帰ってみると、ヨルムさんがフル装備でまさに出発しようとしていた。


 「いやの、お前さんが何者かに襲われて町を出ていった――― と聞いての、あんまり帰りが遅いんでこれから探しに行こうと思うとったんじゃが」


 「それは心配掛けて申し訳ありませんでしたね。でも大丈夫、俺もリヴァイアさんもこの通りです」


 大事無いと伝えるとようやく肩の力が抜けたようだ。


 「余り突っ込んだ事を聞くのはアレなんじゃがの、お前さん達は命を狙われてたりするのかの?」


 「そうですね…… 狙い狙われって感じですか」


 リヴァイアさんが使い魔ってのは以前の風牙討伐の際に話してはいた。


 しかし勇者バトルロイヤルについては話していない。下手に話してどこで口を滑らすかわからないから。それが他の勇者の耳に入れば情報を得る為に拷問されたりするかも知れないし、人質にされたりもあり得る。


 知らぬが仏って奴だ。


 「そうか…… 詳しく話せぬ理由があるのじゃな、まぁよい。でもの、困った時は遠慮せず頼ってくれよ」


 異世界でここまで親身になってくれる人が出来るとは思わなかった。普通に嬉しいもんだな。


 「となると、今度こそ出発するのか?」


 「はい、ずいぶんと延び延びになってしまいましたが」


 「そうか。くれぐれも気を付けての。しんどくなったらいつでも帰って来い」


 はいと返事をして、その夜は改めてお別れの宴会を開いてもらった。



 「いよいよ出港ですよリヴァイアさん!」


 「皆さん見送りに来てますね」


 一夜明けた朝、今度こそ出発の時を迎えている。


 今俺達は客船に乗って、見送りに来たヨルムさんやユッコちゃん、3バカ達に手を振っている。


 「いってらっしゃ~い!」


 「いってきま~す!」


 ぶおおお~


 景気よく汽笛が鳴ると船はゆっくりと進み始める。


 どんどん沖に向かって進み次第にユッコちゃん達は見えなくなっていった。


 「良い人達でしたね~」


 「はい」


 うん。本当に良い人だった。楽しく朗らかで剣術の稽古も素晴らしかった。


 ルセルクでの激動の日々は辛い事もあったが、俺達にとって良い経験になったと思う。


 いつかまた、きっと戻って来よう。



 そして順調に進む船旅。


 「う~ん、潮風に揺れる美しき銀髪。物憂げに水面を見つめる眼差し。リヴァイアさんはこうして見ると、改めて美人さんですよね」


 「なんですか急に? 誉めてもお小遣いは値上げしませんよ」


 「いやいや、せっかくのマッタリする機会ですからね。リヴァイアさんの恋愛話でも聞かせてもらおうかと」


 「神獣に恋愛感情があるとでも?」


 「え? ないの?」


 「有っても秘密です」

 

 「けちー けちー うみへびー」


 リヴァイアさんはニコッと笑うと俺の頬に両手をスッと添えて、


 「そこまで望むなら神獣の恋愛を教えますので目を閉じて下さい。ム・サ・シ・さ・ま」


 あ、あれ? もしやこれって俺にホの字(昭和表現)って事? ちゅう? もしかしてちゅう?


 淡い期待にドッキドキさぁ! 俺は目を閉じてちゅうを待つ!


 するとリヴァイアさんの手は俺の両こめかみをグーでとらえ、


 「誰が海蛇ですか」


 グリグリグリグリグリグリグリグリ


 「痛い痛い痛い痛い痛い痛いやめてやめて! 梅干しはやめてー!」

  

 おおお……… 神獣の愛とはかくも痛いものなのか………

 

 「あたたた…… しかし船旅って飽きますね。どっち向いても海しかないし」


 「私は好きですけどね」


 「それはリヴァイアさんはうみへ…… 家みたいなもんだから落ち着くんですよ。泳ぎたいとか思うのですか?」


 「そうですね。泳いだら気持ちよさそうですよね」


 やっぱり海が好きなんだなぁ。海水浴しないとなぁ。リヴァイアさんの水着みてみたいな。


 「よし! 今度海水浴しましょう!」


 「いや、そんな無理に泳がないでも」


 「ダメです! リヴァイアさんの水着…… 気持ちを組むのも主たる者のつとめです!」


 「私の気持ちというより、自分の欲望に忠実なのでは……」

 

 この計画は必ず実行してやる。勇者バトルロイヤルより重要事項だ。


 「でも俺あんまり泳げないんだがね」


 「教えてあげますよ。魔海で特訓しましょう」


 「え、遠慮しときます……」


 某ヨットスクール並のスパルタ特訓しか想像出来ない。魔の海って時点でアウトだよな。


 きっと渦潮がごまーってなってて、でっかいモンスターもうようよしてるんだぜ!


 「クラーケンだぁ! クラーケンが出たぞぉ!」


 そうそう、クラーケンとか。


 ん?


 「ムサシ様。船首の方です」


 ちくしょう。楽しい船旅が台無しだ。


 俺達が船首に駆け付けると既に複数の冒険者が戦っていた。


 まとわり付いているイカゲソをペシペシと斬り付けて応戦している。この冒険者達はこの船の用心棒として雇われた方々。せいぜい頑張ってくれ。


 「ムサシ様は戦わないので?」


 「彼等の勝利を祈るばかりです」


 決して安くはない船賃にコイツらの給金も含まれてんだ。給料分は働け。


 とは言うものの。


 ぺしゃり べしっ


 クラーケンの振り回す足に、ある者は押し潰され、ある者は吹き飛ばされして旗色はあからさまに悪い。


 「クソッ! なんだって内海にクラーケンなんかが現れやがる!」


 「クラーケンが出るだなんて聞いてねえ!」


 冒険者達は口々に叫んでいる。どうやらこの辺に出没するようなモンスターじゃないらしいな。


 「リヴァイアさんあのイカは友達?」


 「大味であまり好きではないです」


 友達どころかエサとしか見てないようね。確かに美味しそうではないなぁ。


 「すいません! そこのお客様!」


 ぼんやりイカ対冒険者を眺めていたら、やおら後ろから話し掛けられた。この無駄に賑やかな格好は誰あろう船長さんだ。


 「もしや貴方様はトロールグレートや風牙を倒した冒険者様では……」


 「そうですが?」


 戦ってとか頼まれたら嫌なのであからさまに不機嫌な態度とっちゃった。


 「も、申し訳ありません! このままではこの船は沈められてしまいます! どうかお力添えを願えないでしょうか!」


 船が沈められるのは困るなぁ。でも俺お客さんだしなぁ。面倒だなぁ。


 あ! 冒険者の一人がクラーケンの足に捕らわれ持ち上げられた。


 「スロース!!」


 憐れスロース。憐れ冒険者スロース。君の勇姿はわすれない。


 「ど、どうかお願い致します! 勿論それなりのお礼はご用意させて貰います!」


 ガシッ!


 「ハッハッハッ! 当たり前じゃありませんか! このワテクシめにお任せあれ!」


 船長の手をガシッと掴み答えてやった。決してお礼に目が眩んだわけではない。善意だ。


 「現金なものですね」  

 

 「失礼な! 善意です! えい!」


 ブンブカ振り回されてるスロースを取っ捕まえてるイカの足に衝撃波を放つ!


 ごばんっ!


 あ、衝撃波で解放されたスロースが甲板に落下して叩き付けられちゃった。ゴメンスロース。


 さてさて、このイカどう料理しますかね。

 


 

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