25 神獣リヴァイアサン
ウィンドライガー達は風牙の咆哮を合図に一斉に飛び掛かってきた。しかし俺達は人払いを済ませた今、全力で対応出来る。
リヴァイアさんの超強力に圧縮されたウォーターレーザーが縦横無尽と放たれる。ウィンドライガーの纏う風防御も物ともせずに数体を斬り殺す。
レーザーを掻い潜った個体は俺が斬り伏せていく。風の抵抗はかなりのものだが、対応出来ない程でもない。
「ほぅ、やるねぇ。だが本番はこれからだろ」
ジョンの言葉とともに風牙が動いた。速い!
ガギィィン!!
かろうじて剣で弾くも、このスピードはヤバい!
(リヴァイアさん、接近戦は対応しきれない! 遠距離で削ろう!)
(了解しました)
あのスピードを狙って当てるのは難しいだろう。近づかせずに弾幕勝負だ!
リヴァイアさんはレーザーを四方八方と撃ちまくる! 無駄撃ちと言う概念の無い必勝法だ!
しかしながら風牙はこの弾幕を余裕でかわしている。徐々に接近してくるが俺だって黙っているわけではない。水ノコを連射する。
これは直撃コース! そう思われた瞬間!
ゴウッ!
風牙の纏う風防御がその勢いを増したと思うと、直撃コースの水ノコがピタリと止まる。すると水ノコは逆回転し始め、
「ちくしょう! マジか!」
バシュッ!
俺目掛けブーメランしてきた! 危うく剣で凪ぎ払ったが、既に風牙は懐に飛び込んで俺に体当たりを食らわせた。
「ぐほぉっ!」
(勇者様! 大丈夫ですか!)
(ガッ……ハッ ハァハァ、大丈夫、ちと呼吸が止まっただけです。しかしこれは強い)
ちょっと穴が見付からないな。リヴァイアさんのウォーターレーザーも風防御に弾かれてしまっている。
(リヴァイアさん、こりゃダメだ。今回ばかりは三十六計にしたがって貰いますよ!)
(仕方ありません。これ程までとは)
神獣。海の王とも言われた存在が逃げを選択するのは歯痒いのだろうが、現時点で勝ち目が無いのではどうすることも出来ない。
「全弾発射!」
俺達はかつて無い位の弾幕を張ると、
「からの撤収!」
背中を見せて全力で駆け出した。
「は? 逃げた? ふふ……ははははは! スゲェぜ! なんだあのスピード! たまらねぇなおい! 風牙! 逃がすな!」
ズダダダダダダダダダ!!
走れ俺! 走れムサシ! そしてセリヌンティ○スを救うのだ!
一陣の風が如く走り抜ける。ヘタレギフトの猛スピードは高速機動隊だってブッチだぜ!
「ゴルァァァァ!!」
クソッ! やっぱり向こうのが速いか! 風牙が追い付いて来やがった!
リヴァイアさんがウォーターレーザーで牽制するも風防御の前に全く無視されている。そして、
「ガァァァァッ!!」
「ぐあぁっ!」
追い付いた風牙が俺の腕に噛みついた。
ぐおぉ! 痛ぇ! こなくそ! ふん捕まえて首の骨へし折ってやる!
腕を伸ばすとサッと身を翻し距離を取る。すかさずリヴァイアさんがヒールをしてくれたのだが、いよいよ万事休すか。逃げれも出来んとはな。
(すいませんリヴァイアさん。せっかく適正勇者見つかったのに、ここまでみたいです)
俺は帰還……まぁ無事出来る保証もないが、リヴァイアさんがその後どうなるかはわからん。下手すりゃ、いや、ほぼここで殺されるか。
(……………………)
返事がない。ただの屍のようだ。言ってる場合か! どうしたんだろ?
そこにジョンが追い付いてきた。
「ずいぶん逃げやがったな、ようやく追い付いたぜ。どうした? もう逃げないのか?」
クソッ! 余裕かましやがって!
(勇者様聞いて下さい)
(はい?)
(今から奥の手。神獣の力を解放します)
(へ? 神獣の力? 失って回復してないんでしょ?)
(はい。全力には程遠く、1割といったところでしょうか)
(いや、1割ってそんなん焼石に水じゃ……)
(1割も出せれば問題ありません。数瞬で片がつくでしょう)
(マジっすか! なら早く早く! なんでそんなん温存しとくんすか!)
(すいません。これを使うと私自身どうなるかわからないのです。最悪消滅するかもしれません)
(え! 消滅て……それはダメだよ)
(他に術がありますか? どのみち殺されるのであれば掛けるしかないのです)
(…………でもさ)
(こんな時までヘタレですね)
「どうしたぁ? こねぇならこっちからいっちまうぞ?」
(問答してる場合じゃありませんね。覚悟を決めて下さい)
(わかった。でも消滅は無しだ! リヴァイアさん、これは命令です)
(フッ、フフ。わかりました。命令では仕方ありませんね、必ずムサシ様のもとへ戻ります)
(え! 今ムサシ様言った?)
(知りません。さ、少し放れて下さい)
リヴァイアさんは人形に戻るとやおら精神を集中し始めた。
「おおう! こりゃ驚きだ! その綺麗な姉ちゃんがギフトだな! こりゃ奪った後が楽しみだぜ!」
下衆野郎。リヴァイアさんをそう言う目で見ていいの俺だけだ!
そして……
次の瞬間、大気が震えた。
圧倒的だった。覚醒したリヴァイアサさんは姿形こそ変化ない……いや、目が。そこに爛々と光る相貌だけは偉大なる神獣――海王リヴァイアサンそのものだった。
「な、なんだよこれ……ふざけるな、勝てるわけねえだろ、こんなのインチキだろ! バトルロイヤルなんて成立しねーよ!!」
ジョンの言ってる事は間違いじゃない。
これが神獣なのか…… これで1割なのか………
今、この場にいる全ての生命体が感じているだろう。荒れ狂う強大な津波の様などうしようもない力を。
人も、モンスターも、獣も、虫も、微生物でさえ、この存在に抗うことはできやしないと。
ウィンドライガー達はたまらず恐慌して逃げだした。風牙は己の死を受け入れたようだ。目を閉じて立ち尽くしている。どこか堂々としたその容姿はモンスターながら敬意さえ感じとれた。
「な、許してくれよ! そうだ! ギフト譲渡するからよ! な! な!」
悪いが俺に生殺与奪の権利はないよ。俺だって今足ガクガクで立ってるのがやっとだぞ? チビらんだけ成長したと誇りたいくらいさ。
終わりの時は唐突にきた。リヴァイアサンが腕を前に伸ばすと水珠から水弾が、桁違いの水弾がところ狭しと放たれた。
その速度はもはや目で追えるレベルでもなく、敵に当たると敵は一瞬で霧散した。逃げ惑うウィンドライガー達を悉く正確無比に追撃し、その全てを霧散させた。風牙もたった一撃で霧散していった。
「ひ! やめろ! やめてく………」
パシュン
霧散した後、光の粒子となりジョン・ミラーのバトルロイヤルは幕を閉じた。
「り、リヴァイア……さん」
リヴァイアサンはそっと目を閉じ、また目を開くといつものリヴァイアさんに戻っていた。そして俺にゆっくりと手を差しのべたのだが、まだガクガクと震える俺は先程までのリヴァイアサンが脳裏を過り、一瞬その手を取るのを躊躇してしまった。
すぐに我に帰り手を差し伸べたのだが、リヴァイアさんは悲しそうな顔をして剣化した。
カランカラン
俺は……バカだ……
読んで頂いてありがとうございます
今日は後何話か投稿したいと思ってます
目指せブクマ10人!




