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24 風牙推参

 ルセルクの町を出発した討伐隊。ラーマン率いる門下生達を先頭にして町民有志隊が続き、俺やヨルムさんが殿を務める。リヴァイアさんは既に大剣化して俺の手に握られている。


 「いよいよ翡翠峡に入るぞ、ムサシ」


 「はい。今回ばかりはぬっ殺す! とは言いません」


 「じゃな。気を引き締めて行こう」


 峡谷も半ばに差し掛かったところか、


 (勇者様、囲まれてます)


 (囲まれてる? 風牙じゃない?)


 (ウィンドライガーは群れで狩りをします。風牙も何処かで指揮をとっているかと)


 やっかいだな。複数かよ。


 「風牙だぁー! 風牙が出たぞー!」


 「先頭の方じゃ! 行くぞムサシ!」


 風牙は先頭集団の先に、悠々とその姿を現した。ここは俺の縄張りだと言わんばかりで圧倒的な威圧力を放っている。


 「なるほど。こりゃ無理だわ」


 俺もある程度は力を付けてきている。眼前の存在に勝てるか? と問われれば無理って事ぐらいは感じ取れる程に。


 いや、そこまで力が無くとも感じ取れる程の圧力だった。有志隊では気圧された連中から恐慌が始まっている。


 「やはり無理じゃ! ラーマン! これでわかったろう! コイツは倒せん。退くぞ!」


 「退きませんよバカですか? そもそも真っ向勝負で倒しませんし」


 ん? どういう事? と思った矢先に1人の男が前にでた。……ここでかよ。


 (リヴァイアさん不味い、勇者だ。それも今ここで1番最悪な奴だ)


 前にも言ったがギフト神眼は間違いなくパワーアップされていた。勇者の頭の上にギフトブックはもちろん、名前が記されている上にギフトも確認出来たのだ。



 ジョン ミラー


 神笛3 モンスターを意のままに操る

  

 探知1 半径100メートルの動体を探知出来る



 神笛。これか、ラーマンがやけに余裕だった理由は。


 (モンスターを操れるギフトを持ってます) 


 (モンスターを操るですか。確かに最悪ですね)


 ジョンは前に出ると懐から横笛を取り出し


 ピョロロピア~


 なんかもう明らかに適当に吹き始めた。おそらく吹けばなんでもいいんだろう、にしても適当過ぎる気もするが。


 しかし効果は普通にあるようだ。風牙は先程までの威圧を解いた。囲んでいたウィンドライガーの群れも臥せの姿勢で待機している。


 「素晴らしいな。これが勇者の力か。ではさっそく風牙の首を落とさせて貰おうか」


 ゴルァッ!!


 ラーマンが大人しくなった風牙の首を落とそうと近くと地響きのような吠え声で威嚇した。


 「ヒッ!」


 「風牙の首を落とす? そりゃダメだ。こんなデカイ手駒はくれてやるわけにはいかん」


 「な!? アンタ約束が違うだろ!」


 「そうだな違うな。だからどうした?」 


 「クッ…… な、ならもう1つは守ってくれるのだろうな!」


 「ん? ああ、そこのジジイとガキの始末だったな。守るよ。この場の人間皆殺しにしてルセルクも落とすからな」


 「バカな! ルセルクを落とすなんて頼んでない!」


 「そいつは奇遇だ、俺も頼まれてない」


 なんかラーマンとジョンが言い合いを始めた。仲間割れ? 何にせよ今がチャンスか。


 「ヨルムさん、今のうちにとんずらしちまおう。町民達の撤退の指揮お願いします」


 「よし、そうだな。ルセルクに戻り国軍の出動を要請しよう!」


 俺達が撤退の準備に入ろうとするが、


 ピヒャラリ~


 「うわぁ! 助けてくれぇ!」


 ジョンの笛が鳴り響くと臥せていたウィンドライガー達が襲いかかってきた。


 「皆殺しって言ったろう? 国軍なんぞに出張って貰うわけにはいかねぇな」


 「いかん! ムサシ! 町民を守るのじゃ!」


 クソッ! この数相手だとさすがにキツイだろ! まともに町民を守れるのは俺、ヨルムさんと1部の冒険者くらいだ。

 

 いや、ラーマン道場の人間もいるのだが俺達はそこで自分の目を疑う事になる。


 「どけぇ! どけぇ! グズ共! 道を開けろ!」


 なんとジョンに裏切られたラーマンは門下生達に身を守らせ、我先に逃げ帰ろうとしていた!


 「貴様ラーマン! それでも武人か! 町民を守らんか! 連れてきたのは貴様だろうが!」


 ブチ切れるヨルムさんがラーマンに食って掛かるも、


 「やかましいわ! あんな化け物相手に出来るわけないだろう! ルセルクは終わりだ! さっさと帰って町を離れる準備をせねばならんのだ! お前達はせいぜいその時間稼ぎでもしとけ!」


 「貴様はどこまで腐っている!」


 「やかましいと言っているんだ! このジジイ!」


 ドシュ!


 「な!? きさ……ま……」


 「ヨルムさんっ!!」


 ヨルムさんの腹をラーマンの剣が貫いていた。


 「ハッ! 息子と同じ死に様とはな! あの世でせいぜい一家団欒を楽しめ! おい! 行くぞ!」


 ラーマンはヨルムさんを刺し貫くと仲間を引き連れ去っていった。


 「おいおいおい、清々しいくらいのカスがいたもんだな。仲間を犠牲にして逃げるとか」


 ジョンが楽しそうに笑っている。


 (リヴァイアさんっ!! ヨルムさんが!!)


 (わかってますが、この混戦では近く事も。まだ息はあるようですが、早く手当てをしないと……)


 ウィンドライガーはネームドでは無くとも、かなりのモンスターだ。その身体に纏った風が生半可な攻撃を逸らしてしまう。それが風牙の指揮の下に連携を組合せ襲ってくるのだ。


 高出力の水ノコや、リヴァイアさんの圧力水ならば風防御も貫けるかも知れないが、動きも速く的が絞り辛い。ましてや考えなしに逃げ惑う町民達に当たる可能性も高く、無尽蔵魔力押しが使えない。


 次第に力尽きる冒険者も出始め、このままでは全滅もありえる。


 (リヴァイアさん、このまま町民抱えたままではダメだ! 無理は承知で賭けにでます!)


 (このままではじり貧ですからね。勇者様に任せます)


 俺は近くにいた冒険者に話しかけ、奴らの意識を俺に向けるからその隙に町民を連れて逃げろと指示をだすと、


 「おい! ジョン! ジョン・ミラーお前だよ!」


 「はぁ? あんた何で俺の名前知ってんだ?」


 「勇者だからに決まってるだろ! お前のギフト神笛、いただかせて貰うぞ!」


 「ハッハッハッ! なんの冗談だおい! 今の状況でどうやって俺を倒すんだ?」


 「そういうギフトが無いとでも思っているのか?」


 「……そうか、確かにな。ここは全力で仕留めさせて貰うとするかな」


 そう言うと、今まで動きをみせなかった風牙が構えた。そのたのウィンドライガー達も俺を取り囲む様にじわじわと近いてくる。


 作戦通り俺に注目が注がれる中、冒険者はきちんと町民を連れて撤退していった。


 (さて、ここからが問題なのですが)


 (修行の成果は伊達では無い所を見せましょう)


 

 

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