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21 旅立ちの前に

 「快勝ですな」


 トロールの死体を異次元ポケットに収納して勝利の余韻に浸る。


 「落とし穴に落ちなければですが」


 「厳しい! リヴァイアさんは厳しい! ここは勇者様素敵! って、抱き付くものですよ!」


 「勇者様素敵」


 ぎゅっ 


 「エッ!? マジっすか!」


 ミシッ! メリメリメリ……


 「ちょっ! 痛っ! リヴァイアさんそれサバ折り! あんたの怪力でやられたら……ギブギブギブギブ!! ほげぇ~!!」


 危うくアンコをあらゆる穴からぶちまける所でした。トロールより怪力ってたち悪い使い魔だなコンチクショー!


 「修行の成果としては及第点てところでしょう。水珠も大分使いこなせてきましたね」


 ちゃんと誉めてもくれる。飴と鞭の使い方が上手い頼れるお姉ちゃんです。



 トロールを無事倒し、ルンルン気分でルセルクの町へと戻ってきた。


 「依頼達成しました~」


 「ご苦労様です。トロールですね、300万ギルの報酬になります」


 「後、素材も売りたいんですけど、解体はしてないんですよ」


 「了解いたしました。それではトロールは大型なので直接解体部屋の方へ持ってきて頂けますか?」


 冒険者ギルドの受付嬢に促されて解体部屋へと赴く。指示された場所にトロールの死体をポケットから出したのだが、


 「あ、あれ? これは……トロール……」


 ん? 


 「いえ、間違いありません! トロールグレートです!」


 なんと俺達の倒したのはトロールの上位種、トロールグレートだった。道理でやけにデカいわ魔法使ったりするわけだ。


 「すいません! これはギルド側の不手際です! 正式な依頼料に迷惑料も乗せてお支払い致します!」


 ギルドでもこんな不備ってあるんだな。えらい恐縮しとるな。あー、そうか。ギルドの誤情報で冒険者に何かあろうもんなら一大事だもんな。


 結局ギルドのお偉いさんまでやってきて直接謝罪される様な大事になってしまった。トロールグレートがとりわけ不味かったらしい。本来ならパーティーを組んでる中級以上にギルドから直接依頼する類いのモンスターだったとか。


 てなわけで、そんなモンスターをたった二人でフラ~っと行ってフラ~っと倒してきた俺達の話題でギルド内は今騒然としてる。


 「見せもんじゃないんですがね……」


 「さすがに私も……」


 とりあえず依頼報告やらなんやら終わったのでギルドのくつろぎスペースでお茶してたんだが……


 周囲の視線が痛い! 遠巻きにこっちをチラ見して、ほら例のトロールの……とかその手のひそひそ話が漏れ聴こえる。


 あんまりそういうの気にしないリヴァイアさんでも落ち着かないようだ。


 「これじゃゆっくりお茶ってわけにもいきませんね、ヨルムさんに報告しに行きますか」


 想定外に目立ってしまって居心地が悪い。退散とばかりにヨルムさんの道場へと向かう。


 「毎度ぉ」


 「御用聞きじゃあるまいし……」


 道場ではヨルムさん、ユッコちゃん指導のもと、最近入った門下生の稽古が行われていた。


 「お! 噂の冒険者様じゃの!」


 「ちょ! やめて下さいよ、てかもうここまで噂広まってるんですか?」


 「いやもう、町はお前さん等の噂で持ちきりじゃぞ? トロールとは聞いてたが、まさかグレートとはたまげたわい」

 

 「よくわからんのですが、結果そうだったみたいで。しかし拡散早くないですか?」


 「よくわからんでトロールグレート倒すあたりがムサシらしいがの。剣術を教えた身としては嬉しい限りじゃわい。噂を広めてるのは3バカじゃよ。アイツ等なりに嬉しいみたいじゃの」


 あのバカどもが…… 帰って来たらお仕置きせねばなるまい。


 「ま、まぁそういうわけで修行の最終試練は成功しました。今までご指導ありがとうございました」


 「うむ。では近いうちに出発するのかの?」


 「そうですね、早速明日にでも出ようかと」


 「それは早いの。善は急げか。それもまた一興よの」


 「……お兄ちゃん」


 だよな。ユッコちゃんがえらく寂しげに俺の服の裾を掴んでいる。


 「ゴメンなユッコちゃん。俺達にはやる事があってルセルクを出なければならない。ユッコちゃんにはちょっと寂しい思いをさせちゃうけど、時々は顔出す様にするからさ」


 「……わかった」


 聞き分けが良いぶん、余計に罪悪感が増してしまうな。


 「ユッコ、道場は今日はワシが見とる。ムサシと遊んでこい」


 お、じいさん気が利くじゃないの! さすが年の功。俺はユッコちゃんをおもむろに抱き上げると、


 「よし、それじゃ今日はユッコちゃんがお姫様だ。何でも言う事聞いてあげるよ! リヴァイアさんが!」


 「なぜそこで私に!」


 「俺もう小遣い無いっす」


 「甲斐性なし!!」


 「ひでえ! 1日5百ギルしかくれないくせに!」


 「有れば有るだけ使おうとするからです!」


 「くぅ……」


 「尻に敷かれてるって言うんでしよ? おじいちゃんに教えて貰ったよ」


 じじいテメェ! ギロッ!


 「ほれ~、打ち込み開始じゃ~、丹田に力入れての~」


 くそぅ、スッとぼけやがって。孫になんちゅう事教えてんだ。

 

 すったもんだの末、俺達はその日はユッコちゃんとたっぷり遊んであげた。途中3バカも混ざったが、噂拡散の罰としてリヴァイアさんの高速ジャイアントスウィングに悶絶したりして笑わせてくれた。


 夜はヨルムさんや門下生も交えてバーベキューとなった。所謂ドンチャン騒ぎでしかないが、ユッコちゃんの良い思い出になってくれたら幸いだ。


 シークレットプレゼントとして、俺が普段訓練着として服屋さんに特注させた、二本線ジャージ……ヘボピージャージの色違いのお揃いをあげた。ピンクだ!


 が、これに3バカが俺達にもくれとせがむのには参った。てかヨルムさんまで一緒にくれと言ってきた。そんなに欲しいか? ヘボピージャージ?

 

 言うてもオーダーメイドっすよ? そこそこ高かったんすよ? あげるけれども。


 時間も時間なのでお開きとなったが、これは俺達にとっても良い息抜きだったな。さ、明日はいよいよ出発だ!

 


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