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19 トロール

 「兄ぃ、お務めご苦労様です!」


 「どこで覚えたそんな挨拶! 輩じゃないんだから止めんか!」


 道場に来た俺達を出迎えたのは、いつだってかユッコちゃんをイジメてた3バカだった。両膝に手を乗せ、スッとお辞儀する極道者の挨拶をしてきた。

 俺達の冒険者の名声が上がると道場の名も知れ渡り、入門希望者がボチボチ現れたのだ。3バカもそんな中の一員。つーか半ば以上はユッコちゃん目当てだろう。ユッコちゃんイジメてたのも、ガキ特有の好きの裏返しってやつだった。


 「後、兄ぃって呼ぶな。わかったな、の○太、正ちゃ○、ケン○チウジ」


 「兄ぃ! いい加減俺等の名前覚えてくれよ!」


 「毛ジラミ以下の存在に名前など必要無いのでは?」


 「ひぃ~! リヴァイア姉ぇもいい加減ババァ呼ばわりしたの許してくれよぉ~」


 以前ババァ呼ばわりされた恨み……は、もうなんとも思って無いらしいが、愉快なので便宜上許さないらしい。


 「ムサシお兄ちゃん、リヴァイアお姉ちゃんおはよー!」


 「おっと!」


 ユッコちゃんが奥から走って来るとジャンプして抱き付いてきた。3バカが恨めしそうに見てるな。 羨ましいか! 羨ましかろう!


 「ヨルムさんいるかい?」


 「ううん、今日もこっち」


 首を振りながら何かを指先で摘まむ様な動作を取るユッコちゃん。これは将棋の事である。


 実はヨルムさんに将棋を教えたところ、ドハマリした。俺自体は教えといて大して強くなかった為、ヨルムさんは近所のオッサン連中にやらせたらコイツ等もハマッてしまい、なんと将棋クラブが結成されてしまったのだ。

 そこまではいいんだが、本業そっちのけで通いつめて、ユッコちゃんが道場で教えると言う教育上問題がありそうな現状なのだ。


 「あのじいさんも大概だな」


 「お兄ちゃんが原因だけどね」


 「面目無い」


 まぁ、教えたの俺だからなぁ、まさかこんなにハマるとは! 


 だもんで、朝からお仕事が忙しいユッコちゃんとお別れして将棋クラブへ向かう。


 「参りました」


 あ! ジジイ負けてやんの!


 将棋クラブへ着くとちょうどヨルムさんが負けていた。


 ちくしょーと頭をボリボリ掻いて盤を見つめてると、俺達に気付いた。


 「おう! ムサシ、リヴァイアさん。今日は午後からじゃないのか?」


 「ええ、そろそろ修行も一区切りつけようと。ところで前から思ってたんですが、なぜリヴァイアさんはさん付けなのに俺は呼び捨てなのです?」


 「お前さんにさんを付けたら負けな気がするからのう」


 「負けって……」


 「そんな事より一区切りとな? いよいよ冒険に出立かの?」


 そんな事ってあんまりな気もするが、俺はヨルムさんに説明した。


 「トロールか! 確かに良い具合のモンスターじゃな。お前さん達なら問題無いと思うが油断は禁物じゃぞ、危険を感じたら引く英断が出来るのも一流だと忘れるなよ」


 ヨルムさんの激励に、分かりましたと一礼して俺達は意気揚々と翡翠峡谷方面へと足をすすめるのだった。


 

 翡翠峡谷麓の森に着いた。道中雑魚モンスターをチャッチャと仕留めつつ森の中程までたどり着いた。


 「でっかいモンスターと言う割には見つからないもんですね」


 「森の規模的にもそろそろ出会っても良いかと思うのですが」


 そんなこんなで探索開始から一時間程経ったろうか?


 「いた! つーか、でっかいってこんなにでっかいんですか?」


 俺の聞いた話しだとデカくてもせいぜい5メートル位だったんだが、目の前にいるのは10メートルに届きそうな巨体だった。


 「私が以前倒した時は一飲みでしたので、あまり細かいサイズなどは覚えてませんが」


 出た! 神獣あるある! リヴァイアさんの過去の経験談は一々規模がデカ過ぎて何の参考にもならん。一飲みって、スナック菓子じゃあるまいし!


 「よし! 撤退だ!」


 「ブレませんね」


 「技術は上がっても、性格ってのは変わりませんからね」


 「その冗談はさて置き」


 「さて置かれた! 仕方ない、やってやろうではないか!」


 大剣化したリヴァイアさんを握り締める。沸々と沸き立つパワーは、勿論リヴァイアさん装備時のステータスアップ。


 今はそれだけじゃ無い。ヨルムさんに鍛えられたギフトの剣術に、リヴァイアさんに鍛えられた水珠だってある。いくぜ突貫!


 「はにゃふらぁ~!!」


 気合いのこもった? 掛け声とともにトロールに斬り掛かる! デカくはあるが、その分動きは速いとは言えない。初撃はトロールのスネを深く強く斬り付け、その足を切断してやった!


 「どんなもんじゃい!」


 いきなり片足だけになったトロールはたまらずその場に倒れた。


 「ブフゥオオオオ!!」


 不意に襲った激痛に、足を押さえ転げ回る!


 「デカいのは転がるだけで立派な攻撃だな! 追撃しようにもこれでは……って、おいマジか!?」


 トロールの切断した足がまた生えて来たのである!


 「回復力が速いったって、限度ってあるだろうよ!」


 「勇者様、倒れてる間に水珠で攻撃しましょう」


 「了解!」


 俺の側に2つの水珠が出現する。俺とリヴァイアさん、それぞれの水珠だ。


 2つの水珠から圧巻の水鉄砲の連射が始まった。魔力切れの無い俺達の反則的な乱射がトロールの肉をこそぎ落としていく!


 「ブフゥオオオオァァァ!!」


 間断無く注がれる水鉄砲にトロールも叫びを上げる。このまま押し切ってやるか! と思ったのだが、


 ズゴォォォォ!!


 トロールを守る様に地面が隆起した!


 「土魔法使えるのかよ!」


 魔法が使えるのは思ってもみなかった。隆起した土壁に阻まれ水鉄砲は届かない。

 

 「不味いですね、これでは回復されてしまいます」 

  

 リヴァイアさんの言葉通り、トロールはすっかり回復し巨体を立ち上がらせた。


 まったくもって呆れた回復力だ。そもそもどれだけ削りゃぬっ殺せる? さすがに首チョンパしてやりゃ死ぬだろうか? 


 「ブルフゥゥゥ!」


 立ち上がったトロールは巨大棍棒を振り回し突撃してきた。だが、スピードは無い。棍棒をかわしてすれ違い様に一撃入れてやる。

   

 剣術により鋭さを増した一撃も、矢継ぎ早に追撃出来ないとたちどころに回復されてしまう。


 「この回復やっかいだなー」


 さてどうしたものか…… 


 


 

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