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16 剣術道場

 ユッコちゃんに招かれたその家は……


 ボロっちかった。


 敷地面積はかなりあるのだが、所謂剣術道場であり、広さだけはいっちょまえと言うと失礼になってしまうが、何しろ傷み方が半端ないのだ。もちろん繁盛してないんだろうな。


 ユッコちゃんが家に帰るとトタトタなかへ走って行きお父さん? にしては歳がいってる男の人を連れてきた。


 「いやはや、この度は孫のユッコが大変お世話になったようじゃの。ささっ、なんのお構いも出来んがあがって下され」


 どうやらユッコちゃんのお祖父さんらしい。ただ、背筋はピンとして、足腰もしっかりしている。何よりその眼光は老いてなお衰えを知らぬようだ。ユッコちゃんを見る時は優しい好好爺そのものだけどね。


 居間に通して貰い、お祖父さんとしばしお話しをする事になった。お祖父さんの名はヨルム。この道場の剣術師範との事だが、


 「恥ずかしい話じゃが、ご覧の通り今はすっかり門下生も離れてしまっての、道場は寂れ行く一方なのですわい」


 「しかしなんでまたそんな事態に?」


 「あの娘の……ユッコの両親が、両親の死が関わっておっての……」


 ヨルムさんはゆっくりと道場の寂れたいきさつを話し出した。


 「十年前じゃ。ユッコが生まれた年の事じゃったの。その頃はここは町一番の誉れ高き道場じゃった。ユッコの父も母も師範代として、日々精進しておったのじゃ……」


 まさに順風満帆の生活だったが、そこに悲劇が起こる。


 ユッコちゃんの両親の死である。

 

 ルセルクよりやや南西に翡翠峡谷と言う谷がある。その名の通り翡翠がとれる。

 普段はさほど強いモンスターも出現しない為、採掘場としは結構な賑わいをみせていた。

  

 ところがある日町に悲報が届いた。採掘場でかなりの人数のモンスター被害が出たのである。

 町は騒然とするも、このモンスターを放っては置けないと、討伐をするべく有志を募った。


 ユッコちゃんの両親も討伐に要請されたが断固拒否、いや、討伐自体を考え直すように有志達に説得を始める。それは決して臆病風に吹かれた訳ではない。むしろモンスター討伐など散々してきている。それだけに今回はかなりヤバイ相手であると感じとれたのだ。

 採掘場はそれでもモンスターが全く出ないわけではなかった為、それなりの人数の冒険者の護衛もあった。しかし壊滅に至っているのである。

 少し腕が立つものならばこれがどういう事かなどわからないわけがない。モンスターの情報も無いのに飛び込むなど自殺行為だ。

 ここは王国軍に出張って貰うか、冒険者ギルドと連携して上位冒険者を数名雇い、それに準ずる実力の無い有志は行くべきではないと声高に訴えた。

 

 しかし、これに耳を貸さない者がいた。町のもう一つの剣術道場の主である。

 この男はユッコちゃんの両親を臆病風に吹かれた守銭奴などと裏で罵った。要するにユッコちゃんの両親はタダ働きなんかゴメンだから行かない口実をのたまってるだけだと。

 この噂が広まってしまい、ユッコちゃんの両親の声は届かず、結局有志のみで討伐へ行く事になる。


 ユッコちゃんの両親も討伐隊に参加した。町一番の実力者たる自分たちがいざと言うときの盾になる覚悟だったとヨルムさんは振り返った。

 

 結果、有志による討伐隊は手痛い敗北を喫する事となる。

 

 モンスターはネームドモンスター風牙だったのだ。ユッコちゃんの両親の最悪の懸念は当たり、風牙は討伐隊を次々に屠っていった。

 ユッコちゃんの両親もここで儚く散る事になる。帰って来れたのは、もう一つの道場のあの主と幾人かのその道場生だけであった。

 この男はユッコちゃんの両親が名声欲しさに無理に進撃しただの、殿を努める自分を尻目に我先に逃げていったなどと、ユッコちゃんの両親の戦犯扱いしたのである。


 死人に口無し。何の反論も出来ない状況ではヨルムさんもどうしようもなかった。

 一人、また一人と門下生は抜けていき、この現状を迎えたのであった。

   

 「……何でしょう、キナ臭いと言うか、向こうの道場主がなにがしかの絵を描いたと思われるのですが……」


 「まぁの、十中八九間違いないと思うよ」


 「なら何で!」


 「思われる。だけなのじゃよ。生き残りに揃ってそう言われたらどうしようもない。向こうの道場主が嘘を言ってる証拠がないんじゃ」


 「ちくしょう……ユッコちゃんが不憫過ぎる」

 

 「わたしは全然不憫じゃないよ!」


 そこへユッコちゃんが現れた。俺達が話してる最中は剣術の自主トレをしていたのだ。


 「わたしはお爺ちゃんがいるから全然寂しくなんてないよ。ただちょっとお父さん達の悪口を言われるのが悔しいけど」


 全然大丈夫とサムズアップするユッコちゃん。


 「可愛い!!」


 ひしっ! 思わず抱きしめてしまった。


 「だからやめなさいエロオヤジ!」


 ズビシッ! 安定の天丼コントが炸裂した。

 

 「カッカッカッ! 中々愉快な御仁達じゃの。どれ、お礼代わりと言っちゃなんだが、このじじいがお主に一つ稽古を付けてやるでどうかな?」


 「え!? その、大丈夫なんですか? あ、いえ、その、お歳もお歳ですし」


 「カッカッカッ! まだまだ若いもんには遅れはとらんよ。それにの、年寄りならではの技術ってもんがあるんじゃよ」


 ニッカリわらうヨルムさん。いぶし銀のかっちょええジイサンだ。


 「ならお言葉に甘えよっかな? お願いしてよろしいですか?」


 「もちろんじゃ、では道場に行こうかの」


 きちんとした剣術を極めた人に稽古付けて貰えるいい機会だ! ただリヴァイアさん使うわけにいかんから、ステータスアップの恩恵ないんだよな。純粋な剣術のみたぜ!




 

 

 

いつも読んで下さってる方も、初めて読んで下さった方も、読んでいただいてありがとうございます。


今日は出来ればもう一話くらい投稿したいかなぁとか思っております。

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