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11 港町ルセルク

 青い空! 白い雲! そして一面のオーシャンビュー! 


 「海ぃーっ!! キタコレー!!」


 「そんなにはしゃぐと転びますよ」


 ドベシャーッ!!


 「ぐはぁ、痛いおー」


 「子供ですかまったく」


 転移前から考えても結構久々の海にはしゃいで転んで膝小僧擦りむいた。


 「ヒール」


 「かたじけない」


 小言を言いながらもしっかり回復魔法使ってくれる。リヴァイアさんはよくよく考えてみると俺を甘やかしてると思う。性格がお姉ちゃん属性なんだろうな。ガキの頃の母ちゃんに唾つけてなすっときゃ治るって放置されてた時と雲泥だ。


 「やはり町は賑やかですねー。港町だけに交易とかも行われてるんでしょうね」


 うーん、おのぼりさん。キョロキョロしてしまう。


 「勇者様、町の散策は後にして、とりあえずギルドに登録しに行きませんか?」


 真面目なリヴァイアさんの提案に、ほーいと返事をしてギルドへと向かう。


 そして眼前に現れた中々に立派な建物、冒険者ギルド。


 をスルーして、俺はスタスタと更に歩を進める。


 「いかがされました勇者様? 冒険者ギルドを過ぎてしまいましたよ?」


 町の入り口にあった町の地図で俺は確認していたのさ。俺の求めるギルドは冒険者ギルドじゃねぇ。そう、ズバリここ!


 「桃色ギルドでーす! いいですかリヴァイアさん、切った張ったの鉄火場ばかりが仕事ではないのですよ。リヴァイアさんがここに登録して春を売れば一瞬で売れっ子スターでんがなまんがな」


 俺のナイス過ぎる案に目が点になって放心してるリヴァイアさん。ちょっと面白い顔しとる。


 「さぁさぁ、ボーっとしてないでレッツ桃色!」


 ハッと、リヴァイアさんは我に返ると、


 「勇者様には選択権があります。撲殺、溺死、八つ裂き」


 全部死ぬやんけ!


 「沈黙してるのでこちらで決めますね」


 言うや否やリヴァイアさんはファイティングポーズを取ると、無限の軌道で身体を動かし始めた。


 「やめてー! デンプシーロールはやめ…ぶべらぁぁぁあぁぁああ!!」





 「ぼ、冒険者の登録で宜しいのですよね」


 リヴァイアさんのデンプシーロールでフルボッコ状態の俺に、ひきつりながら冒険者ギルドの受付嬢は対応していた。


 「はい、お願いいたしまふ」


 「では、手続きがありますのでこちらへ」


 冒険者登録するにはきちんと身辺調査がある。

 犯罪者なんかを冒険者にするわけにはさすがに不味いからね。調査といっても特別な魔道具、所謂水晶球に手を暫くかざすだけ。


 「はい、それで結構ですよ…あ、また勇者…」


 調査が済むと受付嬢が怪訝な表情を示した。


 「また? 俺の他にも勇者が?」


 「あ、はい。詳しい事は個人情報なので話せませんが、最近レア職業の勇者様があちこちのギルドで登録が確認されてて… ルセルクのギルドでもここ一週間で二人程…」


 俺とリヴァイアさんは顔を見合わせた。

 

 「二人、ですか」


 この町にいる確率は高いだろうな。

 港町だ、人の往来は激しいからな、下手に動き回るよりやって来るのを待つ手もある。特に俺のような神眼ギフトを持ってれば尚更だ。


 俺達はギルドを後にするととりあえず宿をとり、部屋で作戦を練る事にした。


 「まずは勇者の確認からですよね、俺の神眼で勇者を見付ける」


 「ただ、街中で戦う訳には参りませんよ。衛兵に捕まってしまう… 勇者を街中で殺してしまっては犯罪者になりかねません」


 リヴァイアさんの言う通り、勇者バトルロイヤルを知らなければ、只の通り魔になってしまう。


 「つまり、勇者を見付けたら都合の良い場所に誘い出す、あるいは相手が都合良い場所に移動するまでつける、ですかね」


 「はい、どちらにしろ上手くすればこちらが不意をつけたり、罠にハメたりと出来ます。神眼を手に入れたのは僥倖でしたね」


 先手必勝を絵に描いたようなもんだよな、勇者バトルロイヤルって。暗殺とか、穏形的なギフトやらあれば尚良しだ。極論言うなれば核ミサイルでも適当にバカバカ撃ちまくれば、アッと言う間に終わるかも… ん? でもそれなら…


 「リヴァイアさんてリヴァイアサンなんですよね?」


 「はい?」


 「あー、つまり、俺の理解してるリヴァイアサンてのは物凄く大きな海竜で、どう考えたって向かう所敵無しなんですけど。小賢しい策なんていらないし、衛兵を敵に回すどころか国家を相手にしても屁でもないのでは?」


 「……そうですね、おおよそ合っています。例えばこの町程度なら海の藻屑にするくらい散歩する様なものです。本来の力を使えればですが」


 本来の力? いやに含みをもたすな。


 「勇者様は異世界からいらっしゃいましたね。ネオピアの過去についてはご存知無いので、少し説明させて貰いましょう」


 リヴァイアさんはゆっくりとネオピアの歴史、それに絡む自分の事を語りだした。


 ネオピアの歴史は、実は浅いものだった。

 誕生して三千年程度だとか。神界、下界、魔界とあり、神界には神、下界には人間、魔界にはモンスターと住み分けられていた。


 下界、魔界は神により統治…と言っても直接手を下したりはなく、ざっくり言うと見守られてる感じだった。


 平和と言う事も無いけれど、絶滅する様な事にならんようには手心を加え、下界、魔界共に独自の発展を遂げていった。

 

 そこでおおよそ一千年前、事態はおこる。


 当時の神界の王を決めるバトルロイヤルである。


 ネオピアの神には定年もあるが一定期間の任期もあり、その都度行われていたのだ。


 ただ、それまでの勇者バトルロイヤルは下界の民から選出されていた。現在よりも雑だが、優勝者は神になれると言う破格の褒美だった。敗者は普通に死ぬらしいが。


 それでも勇者に選出される事はこの世界ではとても光栄な事で、誰もが勇者に選出される事を喜び、勇敢に闘いあった。

 

 そして予想外の悲劇が起こった。


 優勝した勇者に神の一人が憑依した。


 受肉である。


 この神は勇者からの成り上がりの神で、素行は本来の神にはあるまじき者だったらしい。


 本来、下界や魔界に直接には干渉出来ない神が受肉した為に、神の力を振るう事が出来た。


 そもそも素行の悪い神。当然の様に無茶苦茶をやり始める。


 中でも最悪なのが下界と魔界を繋げてしまった事だった。  


 

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