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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第三章活動開始!〜其の一

     [月夜の雫〜第三章活動開始!〜其の一]





  「あっはっはっはっは〜!?流石我等がリーダーだけあるね!怪我も治りきらない内に朝一番の挨拶が鉄格子を挟んでなんて」


 思いっきり笑いながら……腹を抱えて笑いながらサラは涙すらその瞳に携えている。

 その隣のクリスも何と言っていいものやらと言った感じで苦笑を洩らしつつも心優しい言葉を投げかけてくれた。


  「雫さん本当ですよ、怪我だってまだ治ってないんですから無暗に出歩いたりしちゃだめですよ、それにしても普通の人なら後二、三ヶ月は全く動けないはずなんですけど、やっぱり凄いんですね……それでも本当に気をつけて下さいよ!起こしに行ったら居なくて本当に驚いたんですからね……心配させないでください」


  「ああ、すまねぇな、ありがとうクリス、んでもってサラ手前ぇ笑い過ぎだ!俺は何も悪くねぇのにこの街の警備兵とやらが勝手に勘違いして連れてきやがったんだからな!」


 雫はそう言うとサラは尚も勘弁してくれと言った感じで笑いを強くしてとうとう涙を流しながら笑いだした。

 クリスも本当に全くと言った感じで困ったように苦笑しつつも警備兵にきちんと話を通し雫が解放されるように手まわしをした。

 サラは結局雫がその檻から出るまでずっと笑いっぱなしでようやく笑いが納まったのは痛くなった頬とのど、そして腹が限界に近づいてからだった。



  「ふぅ……ったくよぉ善良な一般市民……ってわけでもねぇが無害な冒険者捕まえていきなり牢屋ってのはいかがなもんよ!」


 クリスはまぁまぁとたしなめながら理由を訪ねてくる。


  「それで、どうして雫さんは捕まっていたんですか?警備兵の方から聞いた話によると何やらえっと……」


  「にやにやと犯罪者面でミイラみたいなやつが徘徊してたって聞いたよ、本当にそんな怪我で動き回るうえ、どんな顔してたかわからないけどね、捕まったってのはそれなりに緩んだ表情だったんだろう?いったいどうしたってんだい?」


 クリスが言いにくそうにしていたことをサラがさらっと(洒落じゃないですよ?)言いきって理由をクリスから引き継いで聞いてくる。

 サラのその質問にうんうんとうなづきながら不思議そうにこちらを見ているクリス。

 そんな姿だけを見ると小動物みたいに見えるなぁと雫は思いながら理由をはな……そうとしてやめた。


  「いやたださ……っとと、今は秘密だ!そうだ二人は宿屋に何か荷物おいてきてんのか?」


  「全部引き払ってきたさ、今日までの予定で宿泊してたからね、また行く事も出来るけど……それがどうしたんだい?」


  「ちなみに、雫さんの荷物も全部持ってきてありますから大丈夫ですよ」


 サラは不思議そうに、クリスはにっこりと可愛い笑顔を浮かべながら雫の荷物をひょいっと持ち上げる。

 といっても雫の荷物なんて持ってきた財布とギルドでもらったカラードル、置いていったのはというよりも忘れて行ったのは財布だけだ、カードだけは物珍しげにいじっていたのでポケットに入っていたから何とか買い物ができたのだ。


  「ふむ、ナイスだ二人とも!クリスはサンキューな俺すっかり置いたこと自体忘れてたから下手したらそのまんまになっちまうところだった、んじゃまぁこれから行きますか!」


 雫は二人にお礼をいって、そのままずんずんとあの屋敷に向って歩き出す。

 勝手を知ってるのは雫のみ、他の二人は不思議そうな少しワクワクしたような感じで付いてくる。

 ついてくるのを一度確認すると、後ろから「教えろ!」という文句を言ってくる二人を全く無視しながら歩き続ける。

 詰め所からギルドまでは歩いて五分もかからない距離で、ギルドから屋敷までも歩いて五分かからない距離すぐに目的地に着いた。


  「わぁ……御城……やっぱり御城になると私の屋敷よりも大きいですねぇ、一度でいいからこういう御城に住んでみたいんですよ私!でも私の家もそれなりにですからなかなか……」


  「……ここがどうしたんだい?誰か知り合いでも出来て紹介するって事……かい?」


 クリスは素直に感激したように「御城」とその屋敷を表現して夢を語りながら少し落ち込み、サラは誰か知人の紹介かぁと言った感じで雫に視線を向けてくる。


  「そうかそうか!クリスは城に住むのが夢なのか、でもすまねぇなこれただの屋敷なんだわ中身は普通とは言い難い設備がそろってるけどな!サラ、紹介って言うのもあながち間違いでもないが、それだけでもねぇよ、さて行くか!」


 二人に意地の悪い笑みを向けながら雫が門の鍵を開け放つ。

 後ろで二人が驚いたように何で鍵を持っているのか聞いてくるが、雫はなおも黙って玄関の前まで歩いていき、その扉を開け放った。


  「お帰りなさいご主人様!あら?お客様ですか?」


  「いや違う、この二人は俺の仲間で団、月夜の雫のメンバーだ今日からこの二人もこの屋敷で暮らすから頼むな」


  「ああそうなんですか解りました!それにしても雫様団に所属されていたのですね」


  「所属って言うよりも俺が作った団だからな」


  「あら!流石雫様ですね!やはり我が屋敷の御主人様になられる方はこうでないと」


 などと二人を置きっぱなしに普通に会話を続ける雫とファリス、しばらく話を続けているが全く反応を返して来ない、最初の「お帰りなさいご主人様」という発言と、その後の「今日から二人もここで暮らす」発言、最後に「我が屋敷の御主人様」といった言葉達を一生懸命今頭の中で処理して理解しようとしているのだろう。

 少しだけ早く処理が終わりハッと気づいたように雫に詰め寄ったのはクリスであった。

 やはり頭の処理や理解の早さといった頭脳関係はクリスの方が得意らしい。


  「し、雫さん!これはいったいどういうことなんですか!?解りません、解るように説明お願いします!」


 処理したとはいえ未だ混乱の真っ最中らしく、せっつくように質問を繰り返していく。

 その姿にようやく我を取り戻したサラもそれに続いて質問の嵐だ。


  「ちょ、雫あんたどうしたんだいこんな屋敷!?ご主人様って私たちも暮らす?挙句の果てには我が屋敷の御主人様?訳わからないよ!いや何となくわかったけど全然解らないよ!きちんと説明てくんないかな!?」


 そんな二人の驚きように満足したようににんまりした笑みを浮かべる雫。

 その隣ではファリスが小さくため息をつきながら「説明なしで連れてきたんですね」と首を軽く横に振った。


  「初めまして、御二人様、私この屋敷の精霊でファリスと申します、以後よろしくお願いいたしますね」


 このままにしておいてもどうにもならないと判断したファリスは視線を二人に回し、自己紹介から始めて、静かに二人にも自己紹介を促す……本当にできたメイドといった感じでその場を収めようと動き始めた。


  「あ、ああ私はサラ、サラ=ライカだ……すまないね未だちぃっと判断に困っているがよろしく頼むよ」


  「は、初めまして、クリスです、クリス=サイラックです……なんだかよく解りませんがよろしくお願いします」


 落ち着いて静かに挨拶してくるファリスに、多少冷静さを取り戻した二人が釣られて自己紹介を始める。

 よく解っていない二人だが、これからここにお世話になるという事だけは何となく理解したらしい、あとこの屋敷が雫の物だという事も。


  「サラ様、クリス様よろしくお願いいたします……それにしても全く雫様、驚かせたいのは解りますがいきなりでは本当にサラ様とクリス様にご迷惑ではありませんか?自分で言うのもなんですが私たちを受け入れられるような人達は稀有なんですよ?」


 ファリスは二人に向って笑顔でお辞儀をすると雫に向きなおりそんな事を言い放つ。

 その言葉に導かれるように二人もファリスを見つめると、何やら半透明で後ろが透けて見えている事にようやく気付いた。

 ただ手足や体等も全部ある状態でただ少しだけ透明なだけなのだが、二人にもファリスが幽霊にみえたらしい。


  「……雫さんこの人……彷徨える者です……私が今浄化を……」


  「ったく雫!そいつは幽霊だよ!変なの取りつかれちまいやがって!」


 そう判断した二人はクリスは杖をサラは剣を構える。

 それを見た雫がここで初めて慌てたように二人を止めた。


  「ちょまて!確かにこいつはゆ「精霊です!」……せ、精霊だがこの屋敷自体みたいなんだよ!少し落ち着けや!ってかいきなり倒そうとかサラもクリスも意外と暴力的なんだな」


 雫の幽霊といった発言にかぶせながら強い勢いで精霊といったことを強調したファリス、二人のそんなやり取りに毒気を抜かれたように杖と剣を下ろす二人。


  「そう言えば……先ほど自己紹介の時にも精霊と言っておりましたね……申し訳ありません勘違いしてしまったようで……そうですよね雫さん何だか取りつかれるってイメージじゃないですよね」


  「すまないね、すっかり動転しちまってね少し考える事が出来なかったよ、にしても全部雫が悪いんだから勘弁ね」


 意外とこの世界で精霊とはポピュラーなものなのだろうか、二人はファリスのその精霊といった強い強調に素直に納得する二人、クリスもさらっと何か少し毒を吐いたような感じだが雫は気にしない事にしたらしい、思いっきり故意に流し、サラのその発言に「すまねぇな」と苦笑交じりに呟いた。


  「いやはや驚くとは思ったがこれほどまでとは……にしてもファリスが精霊だっつぅ事には驚かないんだな……なんだか他の連中はファリスを見た瞬間逃げ出したって言ってたから、てっきり珍しいというか普通あんまりいないもんだと思ってたぜ」


  「いいえ、精霊はめったに人に姿を表しませんので、ほとんどの人は伝説の生き物位にしか思っていないでしょうが私はこれでも神聖使いなんで、一応そっちの知識もあっただけです」


  「私は今までの冒険で偶々以前に一度精霊ってやつに会ったことあったからね、雰囲気がそいつと多少似てるところがあったからだよ」


 雫の疑問に二人はそう答えると、改めてファリスに挨拶をして、屋敷の中を案内することになった。

 まずは各自の部屋を用意してもらった、雫は一階の中央奥の部屋で一番いい広い部屋、サラとクリスはそれを挟むように少し離れた左右の部屋、左がクリスこの部屋も普通の客間と比べるとかなりの大きさの部屋であり、内装もベッドに本棚机にテーブル挙句の果てにソファーまで用意してあった、右がサラの部屋で大きさと部屋の内装はクリスと同じだ、ちなみに雫の部屋は二人の二倍近いスペースに他に書斎や事務室と言った部屋まで付いているので全てを含むと三倍近い大きさになる。

 雫の部屋の内装は大きな本棚二つにテーブルと椅子、ソファーにベッド、あと壁に何か高そうな絵まで飾ってある、事務室には大きめのソファーが二つとそれらの真ん中に大きめのテーブル、それと雫用の事務テーブル、書斎には天井までの本棚が十四置かれており、一番奥にはライト付きの小さなテーブルまで用意されている。


  「雫様は我が屋敷の御主人様ですからね、こちらの部屋は御主人様専用の部屋なのです、お二人には申し訳ありませんがどうぞご了承ください」


 と恭しく頭を下げてきたファリスにとんでもない!と慌てたように返答を返して自分達の部屋ですら大きすぎて、もっと小さくてもいいと言ったくらいだった。

 その後居間から始まり食堂、倉庫、武器庫、地下室、鍛冶場、風呂場、あと各種客室と両サイドにある塔の紹介、それと大広間にバルコニー、屋上を案内された。

 それら全部回るだけで説明付というのもあり三時間ほどかかった程だ。

 ちなみに両サイドの塔はギルドから時折挑戦者達も来る、アーティファクトであるらしい。

 見た目はただの五階建の塔なのだが、中に入ると上下ともに最高百階の高さ深さにまでなるらしい、左の塔が比較的低レベル用で、右の塔が高レベル、もちろん実際死ぬ事もあるらしいが今はまだないらしい、ギリギリになると帰還の魔法が掛かり勝手に外に放り出されるという事だ、ちなみに本人がいくら大丈夫であっても塔が危ないと判断した段階で放り出されるため、なかなか攻略が難しいらしい。


  「ちなみにこの塔は挑戦料がかかりますので、それらのお金はすべて雫様の元に届けられるようになります、もちろん雫様方が入るのには挑戦料等かかりません、一度の挑戦に低レベルだと十シル、高レベルだと百シルになります、結構頻繁に来ますので意外といい収入源になると思います、今までのお金は全部この屋敷の修繕費と備品代として消えていきました、雫様にはこれからこれらもご負担していただかないといけませんのでよろしくお願いします、と言っても今までもこの塔だけでやっていけた上に少しは余裕が出る時もありますので、あまりご迷惑をおかけすることはないと思います」


 流石に雫達は今日は塔に入るのをやめ素直に居間に戻ってお茶を飲むことにした。

 雫を迎えに行ったのがお昼近くであり、何だかんだとそこから出るまでに二時間近く、そして今この屋敷の案内で三時間近くかかりもうあたりは夕方になっていた。


  「それでは今日は少し早いでしょうがお食事に致しましょう、あと三十分ほどで出来ると思いますので、それまでごゆっくりお過ごしください」


 ファリスはそう言って居間を出て行った。

 残された三人は疲れたようにその居間に置かれた大きなテーブルの上にほかほかと湯気を立てる紅茶を顔の横に置きながらぐて〜としていた。


  「この御城……屋敷広すぎます……全部回っただけでもうくたくたですよ」


  「全くだ……でも確かに凄いいい場所だね、それがあの値段だったなんて信じられないよ」


 雫は一応一通り説明し終わっていたらしく、クリスは疲れたといってダウンしており、サラは疲れた表情の中にもニヤリと軽く口元を動かしそう言った。


  「だろう?いやさ図面見た瞬間一目ぼれっていうのかね、しちまって思わず買っちまったよ」


 サラのその言葉に嬉しそうにそう言って笑う雫、そんな事を話しながら安らいんでいると、ファリスがまた入ってきて、食事の準備ができましたといいながら食堂まで連れて行かれた。

 出てきた料理はまたかなり豪勢なもの!というわけではなく、普通の酒場やレストランなどで食べるものと同じらしい。

 雫は酒場でしか未だ食事をとったことがなかったので、酒場と同じような料理だなぁと思いながら食べていると、隣でクリスがレストランと似てますね!といいながら美味しいと言って食べていた。

 サラもその料理達を美味しそうに平らげていき、雫もすべて食べ終わると美味しかったと満足そうに言いきった。

 確かに料理自体は酒場やレストランと似たようなものだったが味が全然違った、比べ物にならないほど美味しかったのだ。

 そんな食事をとりながら今日はもう疲れたから休むと二人が食堂を出て行った。

 雫はそんな二人を見送りながら、ファリスに雫自身も休む旨を伝え、軽い挨拶をした後食道を後にした。

 初めてづくしの行動に疲れていた雫はまたも、すぐ眠りに落ちて行った。

第三章です。

しばらく間が空いてしまい申し訳ございません、リアルがいろいろ忙しく思うように執筆ができませんでした。

ですが暇と時間を見てこれからも書かせて頂きますね。

最近読んでくださってる方も増えたようなのでなお頑張らせて頂きます。

この度も最後まで読んでくださりありがとうございます。

これからもがんばって書いていきますのでよろしくお願いします。

何か気になる点、誤字脱字等ありましたらぜひご一報ください!

それでは失礼します。



修正事項。

第一章其の一から第三章其の一までの誤字脱字を修正しました。

かなりの量の誤字脱字があり、読んでくださった皆様には大変読みづらかった事を謝らせて頂きます、申し訳ありません。

AKASAKAさんよりご指摘いただいたところは全部修正したつもりです、もし何か気付いた点やおかしな点ありましたら、ぜひご一報ください。

改めてこの場でお礼を申し上げます、AKASAKAさんご指摘いただき本当にありがとうございました。

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