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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第二章ギルド〜其の二

     [月夜の雫〜第二章ギルド〜其の二]





 街の外れにあるそこそこ大きな建物、そこがギルドだ。

 カランカランという音と共に雫達三人はギルドの中へ入って行った。

 中に入るとごちゃごちゃとした雰囲気が……全くなく、きちんと小奇麗になったカウンターと恐らく依頼であろう紙の貼ってある掲示板に少し大きめのテーブルが五つあった。

 あたかも市役所によく似た雰囲気を醸し出している、その景色だけであれば。

 ただそこにやはり冒険者であるギルドメンバーが鎧やローブを身に着けそのテーブルで談笑をしていたり、職員達も各自武器を携えているあたり、そこは冒険者達の集まるギルドだという事が認識できる。


  「お〜意外と奇麗だな……ととこれが掲示板ってやつだな、結構たくさん依頼ってあるのか」


  「……ふぁ……これがギルド……」


 雫は興味津津に掲示板やら建物なかやらを観察し、クリスは少し呆けたようにやはり建物の中を観察している。


  「あはは、何だい何だい、初めて見たってわけじゃないんだろう?クリスはともかく雫はさ!」


 クリスト雫の反応に苦笑を洩らしつつそう言って近くのテーブルに腰掛ける。


  「あ〜言ってなかったっけ?俺ギルド初めてなんだ、今日登録するために来たんだわ」


  「!嘘でしょ?あれだけの実力があって今までギルドに所属してなかったってのかい?」


 腰かけたサラが心底驚いた事に逆に雫が驚いている。


  「雫さんもなんですか?私も今日ギルドに登録しに来たんですよ!」


  「「!?」」


 今度の驚きは二人とも同じだ、まさかクリスが冒険者としてギルドに登録しに来るとは二人とも思っていなかったらしい、てっきり何か依頼をしに来たものだと思った二人はバッとお互いの顔を見合わせ、酷く慌てたように捲くし立てた。


  「ちょ!クリス本気かい!冒険者になるってんなら一日の宿の保証どころか命の保証だってないんだよ!」


  「そうだ!俺も詳しい内容を知っているわけではないが、生半可な者じゃ勤まらんところだろう!クリス悪い事は言わない考え直した方がいい!」


 二人が二人、素直に心配してそう言っているのだが、言われてるクリスはあまり面白くはない、ただその二人の気持ちもわかるため、簡単にすねたりする事も出来ず、どうしようかと考えていると言い手を思いついた!と言った感じに二人に近づいてきた。


  「私だってそう甘い気持ちで登録しに来たわけじゃありませんよ?一応それなりに力も身に付けたつもりです、雫さんサラさん、少し身体を預けていただけませんか?」


  「……まさかクリスあんた!」


  「……よく解らんが、俺はいいぞ」


  「ありがとうございます……それでは行きます!」


 クリスが少し自信があるようにそう言うと、サラは思い当たることがあったらしく驚きながらも体を預け、雫に関しては何も考えずに身体を預けた。

 それを嬉しそうに確認すると、少し今までと違った空気がその場を支配する。

 クリスから聞こえてくる声は何ら変わってないはずなのに、その声はとても神聖で邪魔をしてはいけないと心から思ってしまうような不思議な感覚。


  「我願う、我思う、この者等の心身を癒し、傷を癒す奇跡よ、今こそあれ!ヒーリング!」


 クリスがそう言い終わると雫の腕に着いていた傷とサラの赤くなった足の打ち身がスゥっと消えていった。


  「なるほどね……納得したよ、クリスあんたは神聖使いか……」


  「はい!これでも他にも何種類かの奇跡を起こすことができますし、ヒーリングに関しては威力が落ちますが、神言を省略することもできます、直接戦闘はできませんが、後方支援ならなんとか頑張れると思うんです!」


  (なぁ……虹、神聖使いとはなんだ?)


  (はい、魔法使いというものがいるというのは以前話しましたよね、神聖使いは神の奇跡を使う者の事です、魔法使いが攻撃を主に扱う事に関して、神聖使いは神の奇跡による、回復と支援を主に扱う者達の事です、ちなみに神聖使いというのはかなり稀少ですので、この年であれだけ使えるなど、よっぽど才能がある上で努力したのでしょう)


  (なるほどね、助かったサンキュウ、にしても意外とすげェ奴だったんだなクリスも)


 サラとクリスが話し合っている間に、虹に耳打ちしながら新たな知識を手にいれ、会話に参加し始めた。


  「すげぇなぁ〜神聖使いって稀少なんだろう?それもその年でそれだけの奇跡?だっけ使えるのかなり凄いらしいじゃねぇか!さっきは悪かったな侮辱しちまったみたいになって」


  「ああ、私も謝って無かったね、それだけの力を持っていりゃ誰もクリスを馬鹿にしたり、実力不足だなんて言えないね、悪かったよ」


 雫とサラがそう言って頭を下げると、あわあわと慌てながら声を上げる。


  「そ、そんな!謝らないでください!私を心配して言ってくれたというの解ってます!だからそんなえっとですね、だから!謝らないでください!」


 混乱した頭で何か旨い事を考えようとしたらしいが、全く思い浮かばなかったらしい、結局言えたのはお願いだから頭をあげて、謝らないでと言った事だけだ。

 そんな驚愕に満ちたクリスと雫の告白でまたしばらくドタバタと登録をするのを忘れ騒いでいた。



 十分ほど三人で改めて話しているとようやく落ち着いたらしく、雫とクリスが登録してい来るという事で、カウンターに向かった。

 サラはもうすでに登録済みだからという事で、テーブルで二人が戻ってくるのを待つことにしたらしい。


  「こんばんわ、本日はどういったご用件でしょうか?」


 ギルドのカウンターの女性はにっこりと笑いながら、それでもじっくりと見極めるように雫を見てきた。

 じっくり見る……と表現したものの、その女性の視線が雫を見たのは数秒にもみたず、笑顔を全く崩さない、かなり慣れた感じで瞬時に見極める事が出来るのだろう。


  「こんばんわ、今日はギルドに登録させていただきたく参りました」


  「そうですか、それはありがとうございます!ギルドは新しい仲間を歓迎致します、それでしたらまずこちらの用紙に御自身のプロフィール等をご記入ください」


 手渡された用紙はちんぷんかんぷんな文字が書かれた未知の用紙だった。

 たらりと冷や汗を流しながらも辛うじて笑顔でそれを受け取り、近くにあったカウンターの空きスペースで睨みつけながらペンを進め始めた。

 種明かしをすると。


  (わ、わかんねぇよ!何だこれ!俺普通に話せてるからてっきり日本語だとばっかしおもってた!?)


  (落ち着いてください、私が文字を御教えします、幸いな事に記入に必要な文字は全部その用紙に書かれてるみたいですので私の指示に従って書いていってください)


 という事だ。

 用紙の内容はというと。


  「まずは名前と……OK,次に年齢と住所……年齢は二十五歳っと住所は不定……でいいのか?そうかいいのか、次が戦闘スタイル?……近接戦闘っと主にナイフだが得物を選ばずっと、戦闘経験はライラ三匹……」


 こんな感じの簡単な自分自身の自己紹介みたいなものだ、簡単に言うと履歴書と言ったら解りやすいだろう。

 まずは文字を認識するのに苦労しながら、四苦八苦してようやく書き終わったその用紙を満面のやり遂げた笑みで先ほどのカウンターの女性に渡す。

 どこか不思議そうに小首をかしげながらも、素直にその書類を受け取り眼を通していくが、次第に表情から笑みが消えて行った。


  「雫様、少々よろしいでしょうか、この戦闘経験なんですが、ライラ三匹というのは御一人でという事でよろしいですか?」


  「ん?そうですけど……えっと何か変でした?」


 雫の返答に少し困ったような表情になりながら重ねて質問を繰り返していく。


  「いえ……申し訳ありません、それでライラ三匹は一匹ずつ違うときに倒したという事でよろしいんですよね?」


  「え?いや違いますよ、三匹で襲ってきたのを倒したんですけど……」


 その返答に表情が固まる。


  「え、ええとですね、それで戦闘総時間が一分未満というのは……」


  「あ、はい、それはどうかこうか悩んだんですが、実際まともに闇者と戦ったのはライラ達三匹が初めてでしたし、その戦闘も数十秒で終わってしまったので一分未満とかいたのですが……すいません、もう少し違う書き方をした方が良かったですか?」


  「…………い、いえ結構ですよ?少しお待ちいただいてもいいですか……課長!ちょっと来てください!」


 雫がどこか間違えたか?と考えながら不安そうにカウンターの中の女性を見ていたんだが、最後に酷く困った顔をして、席を立つとこちらに聞こえてるのを知ってか知らずか大声で上司を呼び出していた。

 呼び出された上司の人もその用紙を見ると少し困ったような顔になり、今度は二人で雫の所へ戻ってきた。


  「ええっと雫様、このライラ三匹ということなんですが何か証明できるものは……」


  「ああ!そうでしたねすっかり忘れてましたすいません!これです……爪と牙でいいんですよね?」


 雫はライラの皮で包んであった爪と牙のセットを三つ取り出した……ライラのその皮ごと。


  「……ええ、確かに間違いなくライラの爪と牙ですね、そしてこれは皮ですか……解りましたしばらくお待ちください」


 それらを確認した上司の人とカウンターの女性は一度奥に引っ込んでしまったので雫は一度サラの待つテーブルに戻ってきた。

 そこには既に登録の済ませたクリスが来ていて、雫の登録がまだ終わってない事に二人は少し驚いていた。


  「へぇ……まだ終わってないのかい、何かあったの?」


  「ん〜解らねぇ、戦闘経験と戦闘総時間を聞かれてカウンターの女性が上司呼び出して、そのまま奥に引っ込んでいっちまった」


  「私の場合、稀少能力である神聖が使えるので、簡単な奇跡をいくつか見せただけですぐ登録できましたよ?ちなみにランクはGからだそうです、かなりいいランクから始められました、これもサラさんの推薦があったからですね、助かりますありがとうございました」


  「いやいや、推薦いくらして駄目なものは駄目なんだ、それで評価をもらえたってことはそれだけクリスの力があったってことだろう?」


 サラとクリスは不思議そうに雫の現状を感じながら、ランクと推薦といった話をし始めた。


  「推薦ってのはなんだ?」


  「ああ、まだ言ってなかったっけ?私一応これでランクBまでいってんだよね、それでランクC以上の奴は一応推薦ってのが出来て、推薦した人間がそれ相応の実力を持っていれば、最低ランクからのスタートではなく、ある程度上からのスタートが出来るって訳さ、一応あんたも推薦しといたからそこそこ上からスタート出来る筈だよ」


  「なるほどな、それは助かる、ありがとな」


  「あはは、むず痒くなっちまうよ!気にしないで!」


 顔を赤くして照れてるサラを微笑ましく見ながら、雫はサラとクリスにどうして自分だけこんなに時間がかかるんだろうという事を話し始めた。

 サラの話を聞くと、登録自体にそうそう時間がかかるのは滅多にないらしい。


  「そういや、さっき戦闘経験と戦闘総時間を聞かれたあと色々あったって言ったけど、どんなこと書いたのさ?」


  「あ、それは私も気になってたんです、戦闘経験とか戦闘総時間とか私は無しって書いてしまいましたので、雫さんはどうお書きになられたんですか?」


 先ほどのカウンターの女性に話したのと同じように話すと、二人の表情が一気に固まった。

 反応まで先ほどの女性と同じような反応だ。


  「なぁ……そんなに変な事俺いったか今?よく解らんのだがどこがおかしかったんだ?」


 心底不思議そうに聞く雫にサラとクリスは顔を見合わせため息をついた。


  「あのなぁ……普通ギルドに登録してない一般人がライラなんて結構上位の闇者を倒せるわけがないんだよ、それも一匹でもおかしいのにそれが三匹もだって?そりゃ誰だって固まるよ」


  「はいその通りです、それに冒険者といってもランクA相当かそれ以上でなければそれこそ三匹なんて纏めて相手できませんし、出来てもかなり大けがを負ってしまうか、もしくはそれ相応の時間がかかってしまう物なんです、それを雫様は三匹を数十秒でそれも大した怪我もなく倒してしまったと言われました……明らかに異常な出来事です」


 サラとクリスが本気でため息をつきながら雫を見つめる。

 どうやら本気にされていないようだ、どうしようかなぁと思っていると、先ほどのカウンターの女性から呼び出しがかかったので一先ず二人を置いてカウンターに向かった。


  「大変お待たせしました……まずこちらがギルドの登録の証であるカラードと呼ばれるブローチです、それとこれをお持ち下さい、カラードをこれに嵌めお使い下さい、これはカラドアと呼ばれる一種の通信をするための道具でして、そちらから話す事はできませんが、こちらからの依頼を伝える場合カラードに情報を転送し表面にその依頼が表示されるようになります」


 雫は女性の説明を受けながらそれらの品を受け取り、言われたとおりカラードをカラドアに嵌め、胸につける、カラードは直径十センチほどのだ円形の黒曜石みたいなブローチで、カラドアというのがそれをカチっと使えられるような銀の入れ物だ、きちんと胸に付けられるように細工してあるのはかなり使い勝手がいい。


  「そしてこれが先ほどのライラ三匹の報奨金となります、この度は依頼を受けてというわけではありませんので、爪と牙の買取だけですので、この金額になります、合わせて千五百シルです、ああ伝え忘れるところでした、雫様のランクはCとさせて頂きます、一応Dランク以上の方であれば上位の最高Aランクまでの依頼をお受けすることができますが、上位の依頼になればなるほど命の危機が付きまといますのでご自身にお合いしたランクの仕事をお受け下さい」


  「はい、解りましたありがとうございます、えっとひとつ聞きたいんですけど、ランクはどうしたら上がるんですか?」


 少し早口に説明をした女性がほっと一息をついたのを見計らって、一つだけ尋ねた、ある程度落ち着いたように先ほどまでの笑みを顔に貼り付け、親切に説明をしてくれる。


  「はい、ランクは上位の依頼を受け、ギルドに上のランクにいけると認められた者か、同ランクの依頼を多数こなし、地道に経験を積んであげる方法、後は例外的に国やギルドの上層部からの推薦でランクが上がることもあります、あとはそうですね、雫様がなさったように、自分より上のランクが倒すような闇者を倒した場合も、ギルドの方の認識になってしまうのですが、それ相応のランク上がることがあります、ランクのアップの仕方としてはこのあたりです、よろしいでしょうか?」


  「はい、助かりましたありがとうございます!何かいろいろ迷惑かけちゃったみたいですいません」


  「いいえ、こちらこそ大変長い時間お待たせしてしまい申し訳ございませんでした、それではこれで登録完了となります、改めてよろしくお願いします」


  「はい!よろしくお願いします」


 雫は軽く頭を下げると、もらったお金を手にサラ達の待つテーブルに戻っていった。


  「おーお帰り〜ようやく終わったみたいだねって何だいそれ!」


  「お帰りなさいです、凄いですね……かなり大金ですよねそれ?」


 サラとクリスが驚いているのは俺が持ってきた袋だ、大量のお金が入ってるのが見て解ったらしい。

 雫にはどれほどの価値があるかが全然わかっていないので、誤魔化すように笑うしかない。


  (雫様、基本宿屋に一泊するのに一シル、食事などであれば、大概一シルあれば二日は存分に食事ができるくらいの価値があります、小さなはずれにあるくらいの家であれば買えてしまうほどの大金です)


 虹のフォローによる教えにより、何とか価値は解ったが、予想以上の大金に雫の動きも止まってしまった。


  「……あ、あはは、ライラ三匹分の報奨金らしいよ、今回依頼じゃなかったから爪と牙だけのお金だってさ」


  「お、おい!さっきのライラ三匹ってのは本当だったのかい?」


 雫がそのお金の出所を言うと、お金自体よりライラ三匹を倒したことが事実であった事に二人とも驚愕していた。

 そういえばと、雫は思い出していたのは虹に受けた説明だった、ランクAクラスでも無傷で素早く三匹のライラを倒すのは難しいという事。


  「いやー知れば知るほど面白いやつだな!雫は!良かったらさ私と一緒にパーティ組まないかい?」


  「あ、で、出来ればいいんですが、私もパーティーに加えていただけませんか!」


  「パーティ?って仲間ってことだよな……どういうものなんだ?」


 雫は団という物については説明を受けたが、パーティという物の説明を受けていなかった、思わず素直にそんな質問が出てしまったのは多少気が緩んでいたからだろう。

 ただそんな質問を二人は少し物を知らない奴だなぁという認識しかもたなかったみたいで、普通に説明を始めてくれた。


  「パーティっていのは依頼をそのパーティと呼ばれる仲間同士であたることだ、ちなみに団っていうのがあってこれは固定パーティという物であり、一々探したり、抜けたりすることがないので、いろいろ便利だな、出来れば団を作りたいんだが……すまないね、私はどこの団にも所属してなければ、団を作る資格もないんだよ」


  「団を作る資格というのがですね、レベル十以上の魔物を一人で討伐する事……なんです、これくらいできる人間でないと、団を作ってもまともに機能しないという事らしいんですが……サラさんは資格ないという事ですが、ライラを倒した雫さんなら資格があります」


 なるほどなるほど、と頷きながら聞いていた雫は、どこか期待するかのように見つめる二人の視線にようやく気付いたらしい……。


  (えっと……もしかしなくてもこれ俺が団作るのを期待してるって訳か?)


  (雫様、もしかしなくても間違いなくそうですね、ただ私から見てもこの二人であればパーティを組んでも絶対間違いがないように思えます、何より団に所属してた方が色々と便利ですので作っても問題はないと思いますよ?)


 虹と二人耳打ちで相談しながら、少し考えるが……作った際のデメリット(めんどくさい)よりメリットである各種特典の方が心ひかれる上、何より一番心を動かすのが、雫に団を作ってほしいを瞳で語る二人の存在だ。

 正直異世界に飛ばされ初めて出来た人間の知り合いであり、気も合えば性格もよく、その上腕も立つ……何より、何だかんだで雫自身も彼女たちを気に入っているし、彼女たちも雫を気に入ってくれている、そんな彼女たちに期待されていることから、雫は一つ頷いてどうするかを決めた。


  「ん〜そうだな!団作ったときのメリット色々便利そうだし、サラとクリスが入ってくれるなら作ろうと思う、二人とも一緒に入ってくれるか?」


 雫がそう言うと、とても嬉しそうにクリスが頷き、サラも少し照れながら頷いた。


  「はい!是非よろしくお願いします雫さん!」


  「ああ、私も入らせて貰うよ、よろしく頼むね雫!」


 そう言って三人は手を合わせた。

 そこでクリスがふっと重要な案件を持ちかけた。


  「それで団名はどうなさるおつもりですか?」


  「「……か、かんがえてない!」」


 あーでもないこーでもないと話し合いが開始されるが一向に決まる気配がない、二時間ほど食事を取り入れつつ話し合いをし続けたが結局決まらなかった。

 そんなとき虹がポツリと一つの名前を言ったので、代わりに雫がその名前を二人に伝えた。


  「月夜の雫……ってのは?」


 雫は言った後によくよく考えるとこれって自分の名前とほっとんど同じじゃねぇか!と思い急ぎ取り消そうとしたが……。


  「……いい、いいですよそれ!何かしっくりきましたそれがいいです私!」


  「そうだね、あたしもかなりストンってきたよ、それいいじゃないか」


 二人が揃って大賛成してしまったため、取り消すこともできなくなってしまった。

 その後、食事を終えると、三人で先ほどの女性のカウンターに行き、団を作りたいという旨を伝えると、驚いたように雫を見ながらも、一つ頷き用紙を渡してくれた。

 用紙に団名と構成員をかき、各自のランクを書きながら提出した。


 ・団名:月夜の雫


 ・構成員、リーダ:夜月雫


      副リーダ:サラ=ライカ.クリス=サイラック


 ・ランク:B一人C一人G一人の為総合D


 と言った簡単な書類だ。

 これを書き終えると三人顔を見合わせ満足そうに頷きながら提出した。


  「団のランクがCを超えますと全員にカラードルが配られます、ぜひ頑張ってください」


 雫達はその女性の応援の声に元気よく返事をし、ギルドを後にした、今日の宿屋を探すためにである、外に出たらもうすでにあたり一面は暗闇に支配されており、目の前にあった宿屋に入った。

 部屋を二つ、雫の部屋と、サラとクリスの部屋で二つ、お金は報奨金が手に入ったからといって雫が出した、そして、いろいろあって疲れていたせいか、詳しい話は明日にしようという事になり三人は分かれ各部屋に入っていった。

 雫は久しぶりのベッドのような感じがし、勢いよくボフッっと飛び込んだ。


  「んでさ、虹、カラードルって何?」


 先ほど女性から言われたそれが凄く気になってはいたが、二人の手前まともに聞くこともできず一人になり虹と話せるようになるまで待っていたのであった。


  「はい、カラードは先ほど説明があったとおり受信だけのものですよね?カラードルは送受信が可能なブローチで、最初からだ円形の宝石とシルバーの土台がセットになっている希少な道具です、ちなみにギルドへの報告もでき、ギルドからの依頼も受信できます、ただ特別に登録した人同士であれば、送受信以外にカラードルを通して声を届けたりする事も出来るようになるので、出来るだけ早く手に入れられるようにした方がいいですね」


  「なるほどね〜それは便利だ、がんばって早くそれもらおうか〜」


 そんな話をしている間にも雫の瞼はトロンとしてきていた、話し終わる頃には既に瞼は落ちており、もういつ寝てもおかしくない状態になっている。


  「雫様……今日はゆっくりお休みくださいませ、お休みなさい」


  「……あ……と……おや……み……」


 雫がかろうじて返事をしていたが何を言ってるのかわからない返事だった、だが虹にはしっかりと通じており、再度お休みなさいと言ったのを最後に聞き雫の意識は落ちた。

 雫の意識が落ちた後、ひと振りのナイフの虹は雫の方に意識を向けた。


  「安心してお休みください、何があろうと雫様は私がお守りいたします……」


 雫に向けていた意識を部屋全体に張らせ、雫が起きるまでずっとその状態を維持し続けていた。

 ちなみに、雫が起きたのは次の日の昼くらいであり、起こしに来ようとしたサラとクリスは部屋から異様なほどに嫌なプレッシャーが出てた為近寄れなかったとの事、そして遅れた雫は昼食を御馳走するはめになっていた。

第二章其の二です。

少しだけ前回より長いです、といっても全然短いですけどね。

ここでようやく下地ができてきました。

此処から色々と団として動き、仲間を増やし絆を強くしていくはずです。

最後まで読んでくださった方ありがとうございます。

もしよろしければこれからもがんばりますのでよろしくお願いします。

それでは失礼しますね。

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