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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第六章闘技大会〜其の二

  『ガタンゴトン』


かなり酷い揺れが雫達を襲う。

そう、今雫達がいる場所は馬車の中。

あれから三日何とか全員ランクC以上になる事ができ、会場のあるセレディアに向かっている処なのだ。

コウ、ラマ、クリスはぎりぎりといったところで何とかランクC。

サラは何とこの三日の間でランクAに上がっていた。


 「にしてもやっぱり三日でっての無茶だったんだなぁ。」


雫はこのひどい揺れの中でも構わず眠り続ける三人を見つめつつそう呟いた。

無論眠っているのはコウ、ラマ、クリスの三人だ。


 「そりゃそうだろう。実際あたし達が手伝って狩る訳にもいかない状態でやり遂げたんだからさ。」


 「全くです。正直私は三日では無理だと思っていました。」


サラとビレイはそう言って感心したように三人を見つめる。

この三人、実際この三日今日まで寝ないで討伐依頼を受け何とかCランクになった瞬間力尽きて倒れてしまったのだ。

其れをサラと雫で運んで今この馬車の中にいるというわけだ。


 「んでもまぁ、全員で参加出来てよかったよな。……そういえば、ビレイとサラは個人戦の方どうするんだ?」


雫がふと今まで聞いていなかったといった感じで二人に尋ねる。


 「なぁにを今更。勿論出るにきまってるだろう?あたしが出ないとでも思ったかい?」


ニヤリと笑いながらそう言ったのはサラ。


 「私は遠慮させて頂きます。個人戦闘の魔法はまだ取得しておりませんので。」


そう言ったのがビレイ。


 「ただ、コウ君とラマさんは個人戦の方にも参加すると言っておりましたよ。」


ビレイはそう付け加えて二人から預かった申込用紙を雫に渡す。


 「ほぅほぅ。それじゃあ個人戦に関してはライバルになるなサラ!実際戦った事無いから少し楽しみだな!」


 「そうだねぇ。あたしもあんたと戦えるのは楽しみさね。ただまぁ、あたしと当たるまで負けなければだけどさ。」


雫がそう言うと、挑発するようにサラもそう言い返す。

次の瞬間二人とも楽しそうに笑い声をあげた。


 「次の闘技大会までには私も個人戦闘の魔法を身につけて参加させて頂きますので、お二人の戦いを色々と勉強させて頂きますよ。」


ビレイもそんな二人にそう言って次の闘技大会は自分も参加すると言い切った。

そんな話をしながら三人、セレディアに着くまで断章を続けるのだった。





セレディアに着いたのは其れから五時間も後のことだった。

途中低レベルの闇者に襲われ、雫達が倒したりした為時間がかかったのだ。


 「……にしても……でけぇなぁ。」


雫は呆然と言った感じでセレディアの街を見る。

コウを除いた皆は何度か足を運んだ事がある為其処までではない物の、やはりディアの街と比べるとその大きさはゆうに十倍以上ある為浮足立っている。


 「っあ、雫さん。呆然としてないで早く宿をとらないと止まる処無くなってしまうかもしれませんよ!」


一番最初にそんな雫の様子に気づいたのはやはりクリスだった。

クリスの言葉に雫も漸く正気を取り戻し、宿を探し始める。

だが……。


 「申し訳ございません、当宿はすでに満員にございます。」


五件目の宿もその言葉で撃墜された。

セレディアには全部で七つの宿がある。

そのうち五つの宿がすでに埋まっていたのだ。

そしてさらに絶望を誘う事に……。


 「他の宿のもこの時期ですとすでに開いていないと思いますよ?」


というありがたいのかありがたくないのか解らない言葉までいただいてしまった。


 「……どうするよ?」


雫が困ったように呟くと、サラも「さてねぇ。」と困ったように呟いた。

そんな中救いの声を上げたのがコウだった。


 「それなら僕の家に止まる事にしますか?」


その提案に驚いたのは雫を除いた全員だ。

何故驚いたか……それは。


 「コウって貴族だったの!?」


と言う事だ。

このセレディアで家を構える事が出来るのは貴族のみ。

其れも王族に近い貴族だけだ。

他は皆借家で、借家であれば自分の家とは言わず借りてる家と表現する。


 「ええ、一応……末の息子なんで大した力は無いんですが皆さんを止めるだけの場所位なら用意できると思います。」


少し恥ずかしそうにそう言うコウ。

雫はどうしてみんなが驚いてるか解らないのでこっそりと虹に聞いていた。


 (この街では家を構える事が出来るのは貴族、其れも王族に近い物だけだからです。)


と、解りやすく短い返答で応えてくれた。

雫は虹に礼を言って改めてコウを見つめる。


 「あはは、代は兄が継いでいますので本当に僕が出来るのは寝床を提供するだけですからね、余り期待してないでください。」


そう言って歩き出す。

歩いていく方向は城の方だ。

三十分ほど歩き、城の城門が見える位置にコウの家は建っていた。

……。

…………。

皆が皆呆れていた。

と言うよりも驚いて声が出なくなっていた。

何故か……其れは最初に木が着いた雫が漏らしたこの一言で解るだろう。


 「でかすぎるだろう……。」


そうでかいのだ。

目の前の城と比べるとそれよりは小さいが、周りの家と比べても余りにもでかい。

雫が買った家の五倍くらいの大きさはありそうだった。


 「大きいだけですよ。実際使っている処は十分の一もないんです。貴族の見栄ってやつですよ。」


コウはそう言って門の中に入っていく。

門を守っていた衛兵らしき物たちが功を見た瞬間頭を下げ「御帰りなさいませ!」と言っているあたりでもう、全員引いていた。

其れからあれよこれよと言う間に話は進み、この馬鹿でかい屋敷の広間に案内されていた。


 「おお!コウ帰ってきたのか!御兄さんはうれしいぞぉぉぉ!」


そう言って突然コウに抱きつく、コウより拳一つ分程小さな黒髪の青年。


 「ああもう!兄さん人前何だからやめてよ!……あ、皆さんすいません、こちらが僕の兄でコレ=コロです。」


物凄く恥かしそうに自分に抱きつく兄を紹介するコウ。

其の一言できずいたようで、コレも漸くコウから離れ雫達を見つめる。


 「ああ失礼した客人方。コウから手紙で話は聞いております。貴方が団のリーダーの雫さんですね。いつも弟がお世話になっています。」


其の反応には皆が皆驚いた。

貴族。

これに偏見を持っていたせいかもしれない。

ディアの街にも貴族はいる。

そいつらは全員鼻もちならない嫌な奴……その言葉があてはなる奴らだった。

コウの兄も貴族で代を取っていると聞いてその覚悟をしていたから、普通の対応をされて驚いたのだ。

失礼であると言えば失礼だ。


 「あ、い、いえ。こちらこそコウには色々助けていただいてます。この度申し訳ありませんが闘技大会が終わるまでどうぞよろしくお願いします。」


雫が少し動揺しながらそう言って頭を下げる。


 「闘技大会が終わるまでとは言わず好きなだけ居て欲しい!むしろ皆でこの屋敷にすまないかい?」


等と言いだす始末。

流石にこの発言に驚いたのはコウだ。


 「兄さん!」


そう言って兄を怒るコウ。

コウに怒られ少しショボンとしてしまってる様子には皆が皆力が抜けた。

そして全員がコレに大して思ったのは『ブラコンだ!』という思いだった。

こうして雫達は無事闘技大会が終わるまでの止まる処を確保できたのだった。

……屋敷の中で色々とあったが其れはまた別の御話。

かなり久方振りの投稿です。

忙しいとです。

この短い話を投稿するだけでもぎりぎりだったとです。

一応闘技大会が終わるまでは書き続ける予定ですが、もしかしたら闘技大会が終わる辺りで打ち切ってしまうかもしれません。

時間が出来れば続けます!


この場を借りて御感想をいただいた皆様方ありがとうございます!

こんな自分の物語を楽しみに待ってくれた皆様、読んで下さっている皆様本当に感謝してもしきれません。

更新遅いですが、時間がある時に少しずつでも書いて投稿します!

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