〜第六章闘技大会〜其の一
「取りあえず、高レベル闇者を数体狩るぞ!」
雫はそう声を上げ、椅子に座る面々を見つめた。
「ちょっとちょっとなんなんだい突然?」
みんなの気持ちを代弁しサラが雫に不思議そうに尋ねた。
「実は昨日なギルド長のデニスが来てだな……」
「ギルド闘技大会?」
ギルド長のデニスが来客室のソファーに腰を掛けながら静かに頷いた。
雫の隣にいるクリスが「ああそう言えば!」と言って声を上げ、説明を始める。
「雫さん、ギルドの闘技大会です。毎年四回三カ月ごとにある大会でして総合クラスC以上のギルドだけが参加可能な大会なんです!そう言えば私たちシード権があるはずなので三回戦からの出場になるはずですが……。」
其処まで勢いよく説明をしていたクリスだが、言いずらそうに口ごもってしまった。
「……出場資格のもう一つが個人ランクもC以上の人だけなんですよ。」
クリスが口ごもった先をデニスが引きついだ。
「……C以上?って事は……俺とサラとビレイしか出れねぇじゃねぇか!」
そう、雫とサラ、ビレイ以外は皆ランクDなのだ。
最近頑張ってギルドの依頼を数多く受けているのだが、何せ受ける依頼が雫とサラ以外戦闘以外の依頼の為、ある程度数をこなさなければ上がらないのだ。
「……それで其の闘技大会は何時なんだ?」
雫が頭を掻きながらデニスに尋ねると……。
「一週間後、此処から歩いて一日、馬車であれば数時間の距離にあるセレディアで開催されます。」
「ちょ!短いって期間!もう少し早く教えて欲しかったんだけど。」
俺がそう言うと、申し訳なさそうに頭を下げてきた。
「申し訳ありません……いい訳になってしまうのですが、今回はギルドが今迄に無い程立込みまして、処理出来てこの情報が出てきたのも今日の朝だったんです。この闘技大会、開催される期間はある程度決まっている物の、しっかり決まっているわけではなりませんので、一か月前にその報告書類が来るんですが、其れを今朝まで処理しきれていなかったという事なんです……本当に申し訳ありません。」
雫とクリスは少し気まずそうにしながら「謝らないでください。」と言ってデニスに逆に頭を下げていた。
「取りあえず、一週間、明日からだと後六日、移動日を考えると五日……短すぎるだろう!手っ取り早くランクを上げるには……あれしか無いよな……。」
「つーわけで、高レベル闇者を狩って、皆にはランクC以上になってもらう!」
俺が説明し終えると「なるほどね……。」という声が上がった。
「つまり、私とラマさん、コウさんの三人ですね、私たちがランクCになるためには私がライラを三匹、ラマさんはグリーズルを一匹、コウさんはグリーズルを三匹でランクCになります。幸いと言いますか何と言いますか、ディアの森に今丁度現れているらしいので其の依頼書を頂いておきました。」
依頼書の討伐内容は、グリーズル八匹にライラが五匹といったものだ。
「……僕のグリーズル三匹が大変ですね……。」
そう、一番のネックになるのがコウなのだ。
確かに実力だけを見ればランクC位になっていても可笑しくは無い物の、コウが扱う得物は刀に近い剣。
叩きつけるよりも斬り裂くのを主とした物だ。
グリーズルにだと其の刃が上手く通らないため、一匹だけなら何とかなっても二匹以上になると倒せない可能性が出てくるのだ。
何せ、斬り裂くのを目的に作られたその剣は、刃こぼれ等しやすく、刃こぼれがひどくなれば切れなくなってしまうからだ。
「そういう事で、ダーニャがコウの武器を先に仕上げてくれた。」
そう言ってダーニャがコウの前に一振りの刀を差しだした。
「いいかい、この刀はダイアモンドを加工し作り上げた一刀だ。確かに切れ味と丈夫さは折り紙つきだが、使い方次第じゃ一発でポッキリいっちまうからね。まぁ今迄その剣を使い続けているのならそんな物十も承知だろうけどね。後雫から聞いた話じゃコウあんたは居合いに似た攻撃を繰り出すって事だけど……。」
「はい、その辺りは大丈夫です。確かに僕の基本的な攻撃手段は居合いによるものです。」
「んじゃ大丈夫だね。今回この鞘の方にも工夫を凝らしておいたよ。居合い位素早く抜いた際炎の属性をつける事が出来るようにしておいた。逆に言うと、居合いで攻撃する際必ず炎の属性がついちまうから、敵によっちゃー効きづらい相手もいるから、そこだけ気をつければいいだろうさね。」
ダーニャは説明を終えると、その刀を手渡しまた工房の方に引きこもっていった。
コウは新しく手渡された刀を見て、驚いたようにじぃっとその刃を見つめていた。
「コウの腕前は問題ないからこれで何とかなるだろう。何としても闘技大会に出場して準優勝以上を狙うぞ!」
雫がそんな事を言うのも目当ては。
「賞金かい。確か準優勝だと四十万シル、優勝で六十万シルとギルドでの依頼の優先権だっけ?」
サラがそう言った後、大きく雫が頷き「絶対に無し遂げて貰う!」と言って気合の入った視線を皆に向けた。
「ああそれと、出たい奴は個人の方は出場自由だから、出てもいいからな。良い腕試しになるだろう。ちなみに俺も出る、目指すは三位入賞!目指せ賞金!」
一人盛り上がっている雫を一先ず置いておき、サラはコウとクリスとラマをそっと見た。
コウはいまだ刀に魅入られており、ラマは考えながらも行けると感じているようだ。
クリスは一か月前であれば無理です!とでも言うと思ったのだが、予想に反して雫に対して「落ち着いて下さい。」と苦笑をもらすほど余裕がある。
(皆それぞれ成長してるって訳だね。あたしもうかうかしてらんないね!)
サラはそう考えて、それなら自分もそろそろランクBに上がるための方法を思い浮かべる。
「それじゃあ、この依頼今日から三日以内の依頼何で明日いくぞ!今日中に準備をすましておいてくれな!」
雫のその言葉に全員が頷き、各自準備に入るため部屋に戻ったり街に買い出しに行ったりと別れた。
更新遅くなりがちですが書き続けます!
すいません。