〜第五章資金繰り〜其の三
[月夜の雫〜第五章資金繰り〜其の三]
「おはよー、おー皆ここに集まるのなんて久しぶりだな!一ヵ月ぶりくらいか?」
雫が食堂に入ると、其処には雫以外の全員がそろっていた。
「おはよう、そうだねぇ確かに一か月ぶりだね全員が顔を合わせるってのは。」
皆が挨拶している最中にサラが応える。
雫はどこか嬉しそうに自分の定席につき、フィアナに朝食とお茶を頼む。
「さぁて、この一カ月ほっとんど休むことなく頑張った御蔭でギルドのほうもある程度落ち着いたみたいだな。俺達の変なうわさもある程度沈静化したみたいだし段々元に戻ってきてるってのもあるんだろうけどな。」
フィアナが運んできた御茶を飲みながらそう言って皆を見渡す。
「そうですね、ギルドの方からは本当に感謝されてましたよ。噂も私最近になって初めて知ったんですけどほとんどもう話に昇ることも無くなってきてますね。」
雫の言葉に反応を返したのがクリスだった。
ふと気づいたように、クリスが雫に話しかける。
「あっ!そういえば雫さん、ギルドの方の資金なんですけど、ようやく五十万シルまでたまりました。一応この屋敷にいる時間が一番長い私が纏めていたんですけどどうしたらいいですか?」
「お!まじで?予想以上に早くたまるなぁ〜。皆頑張ってくれたからか!もうひと頑張りで目標金額にとどくな!んでもって資金の管理は今まで通りクリス、もうしばらく頼むわ。俺はまだしばらく何日かあけるような討伐以来受ける予定だから、すまねぇな。」
雫はクリスの質問にそう答えながら、他の皆にも話しかける。
「ひとまず、俺もできる限りそういった事もやっていくけど、他の皆も手伝えることあったら頼むな!」
雫の言葉に皆快くうなずき、クリスは「よろしくお願いします」と言って頭を下げていた。
「さぁてと、あたしはそろそろ出るよ。昨日受けた依頼があるんでね、多分明日には戻ってこれるはずさね。」
そう言ってサラがまず席を立った。
「あっ、私もそろそろ行かせて頂きます。あの依頼主の方に気に入られたみたいで、今日もまた手伝ってほしいとの事だったので……今日の夜には戻ってこれます。」
「それじゃあ私とコウも行くとしよう。コウは今日中に戻れるはずだが、私は恐らく明後日まで戻ることが出来ないと思う。」
「はい!行ってきます!」
続くようにラマ、ビレイとコウが席を立ち一緒に食堂をあとにした。
「クリスは今日は休みか?」
フィアナに運んでもらった食事を食べながら雫が尋ねると、首を振りながら「今日も夜からです」と言って微笑んだ。
「そうか、なんか屋敷やギルドの事まかせっきりにしちまってすまねぇな……もうしばらく頼む。」
「全然ですよ。気にしないでください。みなさん頑張ってるですから私だってこのくらい頑張らないといけないですよ!」
そう言って微笑んだクリス。
それに嬉しそうに頷きながら一つ気になっていた事を尋ねた。
「そういやさ、まぁ仕方ない事なんだろうけど依頼さ、いいやつほっとんど無くなってきてるよな?ラマとクリスは引き続き手伝ってるから変わってないけど、コウとビレイ、俺とサラは確実に前みたいな良い依頼が当たらなくなってきてるんだが、この調子でいけばどれくらいで目標金額に届くと思う?」
雫がそう尋ねると、少し考えながら応える。
「そう……ですね。恐らく二か月の内には大丈夫だと思います。何かしらの問題が起きなければ……ですけど。」
考えながらそう答えるクリスは、前みたいにどこか申し訳なさそうな雰囲気や遠慮した雰囲気が無くなっている。
この一カ月ギルドと屋敷の事をいろいろと頑張っていた事で色々と自信がついたらしい。
「そうか、それでも予想よりは半年くらい早くたまるんだよな……んじゃま頑張るとしますか!」
そう言って食事を終えた雫が席を立った時、屋敷に来客が訪れた。
「雫様、ギルドの方が御来訪されておりますがいかがいたしますか?」
「ん?誰だ?」
不思議そうにそう尋ねた雫にフィアナが「ギルド長です。」と答えたので、来客の為の部屋に案内するように言った。
「はぁ……何なんだろうな?クリス一応お前も一緒に来てくれるか?」
「えっ!私もですか?いいんでしょうか?」
突然そう言われたクリスは驚いたように雫を見つめながらそう問い返してくる。
「大丈夫だろう、頼むわ!」
そう言って手を合わせた雫に苦笑を洩らしながら「解りました。」と応えて一緒に来客室に向かう。
「本当に一体何なんだろうな?」
「私にも……解りませんね、何も問題起こした覚えもないですし、最近噂でもそういったものは何もありませんでしたから。」
不思議そうに二人で何があったんだろうと話し合いながら、ギルド長が部屋に入ってくるまで悩み続けた二人であった。
五章終わりです!
次から六章に入ります。
更新最近遅くなりがちですが、なるべく早く更新できるように頑張ります。