〜第五章資金繰り〜其の一
[月夜の雫〜第五章資金繰り〜其の一]
雫達が新しいメンバーを迎えてから一週間。
新しいメンバー達全員が、雫の屋敷で暮らす事になり、それぞれの部屋の手配と足りない道具などを買い求めたりしているとあっという間に時間は過ぎ去った。
「よし!ここで重大発表があります!」
漸く落ち着いたメンバー達を雫は食堂に集めていた。
やったらいい笑顔で皆を見つめる雫。
この時全員の気持は一つになっていた……『嫌な予感がする!』と。
「……なんだってんだい?」
一番初めに口を開いたのはサラだ。
クリスは少し考えながら、何となくその嫌な予感の答えに気づいたらしく、冷汗を流していた。
「うむ!それがなんと!……金がそこをついた!」
クリス以外の全員が「はぁ?」といった感じで聞き返してきた。
「どうしてだい!かなりの大金がこの前手に入ったじゃないか!」
「そうですよ、僕なんてあんな大金みたの初めてでしたよ!」
「詳しい説明をしていただけませんかね?」
「……少し……納得ができません……」
上から順に、サラ、コウ、ビレイ、ラマだ。
確かに、何も見ていなかったメンバーにとって、あれだけの大金がたった一週間で無くなったと聞けば、不思議に思うだろう。
九万シル。
普通の人であれば二三年は普通に暮らしていけるだけのお金なのだ、逆に不思議に思わない方が変だろう。
そんな質問の嵐に答えたのはクリスだった。
「恐らく……皆さんの部屋の備品と、足りなかった道具の購入、後は皆さんの装備品の修理代……ですか?」
恐る恐るだが、間違いないだろうという確信をもってクリスはそう言った。
クリスの横にいたダーニャが頷き、迎えにいたフィアナもコクコクと頷いている。
「その通り!クリスは何度か俺と買いだし言ってたから気づいたみたいだが……一通りそろえたところすっかり全額無くなっちまった!」
(てかむしろ足りなかった位なんだけどな……特に修理……今回はダーニャがかなり無理して協力してくれたからなんとかなったが……このままじゃ毎回、毎回金欠でなくことになりかねねぇ。修理が意外といい値段するからなぁ……)
当初、修理しようと思った時点で、資金が二千シルほど足りなく、ギルドに借金を使用と考えてていた所を、ダーニャが実家のほうにある道具を持ってきてくれ、何とか今回は借金をしなくてすんだのだ。
しかし、今回はこれで何とかなったが、次回からはもう道具などもほとんどないから無理だという言葉を頂いているので、ある程度余裕を持って資金を稼がないといけない。
そう言う結論を出していた。
「ちなみに簡単に内訳を言うとだ。まず各部屋の備品を揃えるのに二万シル。足りない道具ともしもの時の道具。後日持ちする干し肉と干した果実、あと硬いパン等もある程度まとまった数を用意したところこれだけで一万シル。これが一番高くついたところなんだが、修理……これが六万シルかかっている。今回は一番金のかかる修理品の俺とサラはほとんど修理をしておらず、クリスの修理品が服とマントだけにもかかわらず、これだけで修理代が五万万シルだ。コウ、ビレイ、ラマはほとんどすべて修理したとはいえ、全部合わせても一万シル位で済んでいる。つまり、だ!」
「間違って雫やサラの装備品が一つでも出れば、一つあたり安くても三万シル。高いもので八万シル位を見てもらわないといけないってわけさね。クリスの装備品だって同じくらいかかる。新しく入った子たちには近いうちに私自身が自慢の一品を打ってやるからそうなると、一人頭全部修理するとなると、雫が大体三十万シル、サラが二十万シル、クリスが十五万シル。他の子達は私がその時どれだけのものを用意できるかにも関わってくるけど、大体少なくても十万シルは見といてもらいたいねぇ。」
「という事だ。正直異常な金額がかかるんで、普段この装備品は使わないように!といいたいところだが、命を預ける道具何だからんなわけにもいかねぇ!だからだ!これ以上を稼ぐしかないっつーわけだ!ぶっちゃけ衣食住に関してはある程度この屋敷があるからなんとかなるとして、修理品やもしもの時の治療代なども考えて常時九十万シル以上は保持しておきたいところだ。それだけあればある程度余裕をもっていけるようになるはずだからな!まぁぶっちゃけよ、全員が一気に武器防具が壊れるなんてーこと滅多にあるわけもねぇしさ、そこまでいらないかも知れねぇけど、もしもってことを考えるとそれくらい欲しい訳だ!という事でこれからしばらく金策に走るぞ!いい依頼などあれば見逃すことなくかっさらえ!」
雫に続きダーニャが補足し、最後にまた雫が締める。
聞き終えたメンバーはサラとクリスを除いて、少し信じがたいといった感じの表情だ。
実際、十万シルという大金すらお目にかかるのは滅多にないことだ。
それはコウやビレイ、ラマとて同じだろう、下手をしたら今まで見たことすらないかもしれない。
それなのに、それを大幅に超える九十万シルを最低欲しい……正直今までの世界観から離れ過ぎて理解するのに時間がかかっているのだ。
「……はぁ……いい武器に防具ってのは本気で助かるけど、修理の金額までいいものだからねぇ。普通の武器の相場の百倍ってのは確かに始めて聞いたんじゃ茫然としても仕方ないねぇ。」
サラが其の三人を見つめつつ方を落としながらため息をついた。
修理品の相場、今サラが言ったとおり、全部の武器と防具を修理しても通常千シルから三千シルくらいだ。
それも、ほとんどすべて修理をしないといけないなんて状態も少なく、軽く手入れを頼むくらいであればそれこそ数十シルから数百シルくらいで済む時も多い。
今まで冒険者をやってきた三人もそのあたりを知っているからこそ、あまりの現実離れした金額に唖然とするしかないのだろう。
「……そうですね、私たち、雫さんとサラさんと私の武器と防具は確かに店で買えるような代物じゃない分……お金がかかるのも仕方ないですよね……でも、それだけの大金を最低限保持するとなりますと、かなり大変ですよ?」
クリスがどうするんですか?と雫に尋ねる。
「ん〜ぶっちゃけ今はまだ策は無し!ってかさ俺この世界で冒険者として闇者倒して、依頼をこなして金を稼ぐ以外、金の稼ぎ方ってしらねぇんだは。しばらく過ごしていればいい策もでるかもしれねぇけど、今はまずギルドの依頼をこなして金を稼ぐしかないだろう!ひとまず俺とサラは一人である程度いい金額の依頼をこなして、クリスとコウとビレイとラマはその依頼に応じて全員で挑んでもらうか、分かれてそれぞれで動いてもらうかを決める感じだな。」
「……そうですね、私も一人で稼ぎたいところですが、後方支援が主な私にはそれも難しいですからね。前衛と組んで挑んだ方が絶対効率がいいですよね。」
少し落ち込みながらも、理由がはっきりとしてるため反論できず、少し情けなさそうな笑みを浮かべながら雫とサラを見る。
「正直俺たちだって、依頼によってはクリスがいないとどうしようもない場合だってあるんだ。そんな落ち込む必要ねぇって!正直俺やサラがクリスより強いってわけじゃないだしさ。強さのベクトルが違うだろう?比べようがねぇんだって!」
雫はそういいながら少し乱暴にクリスの頭をなでる。
言っている事は解るのだろうが、それでも情けない気持ちをすべて拭い去ることはできないようだ。
それでも、気遣ってくれる雫と、その後ろでしっかりと頷いてくれているサラを見て、表情には少し力の入った笑みが戻った。
そうこうしてるうちにようやく三人の意識がこちらに戻って来たらしく、ひきつりながらも雫達の話を聞いていた。
「さぁて、んじゃまぁ早速ギルドに行くとしますかね!目標は俺とサラは一人当たり一万シル!クリス達は四人で二万シル!あくまで目標としての金額だが……自分達でいけると思えばそれ以上を目指してくれてもいい!もしくは危険だと思えば無理すんなよ?ぶっちゃけ金策なんかで命落としちまうなんて、絶対嫌だからな!」
雫がそう言うと、サラとクリスは頷いて部屋に準備をしに戻った。
他の三人は雫に色々と話を聞きながら、やるしかない!という事がいやでも解ってしまい、準備をしに部屋に戻っていった。
「……ふぅ……にしても金かかるなぁ……かかり過ぎだろう。」
「まぁしゃあないさ。雫あんたの武器なんてぶっちゃけ自動修復がほとんどできるんだ、時間さえ立てば直せるけど、すぐに直すにはさっき言った金額くらいはかかるんだよ。他の子達のもね。さぁってと!私はあの三人の武器と防具をうちに行くとするか!幸い良い工房がある訳だし、道具も運び終わったからね!一か月もあれば終わるはずさ。楽しみに待っときな!」
あっはっは!と笑いながら食堂を後にするダーニャ。
その後ろ姿を見つめながら。
「だからその新しい武器と防具が金かかるんだっての……まぁいい事だから何も言えねぇんだけどな……」
とこぼした。
そんな雫にフィアナが覚めたお茶を交換し、「お疲れ様です」の一言をかけていた。
以外に心にその一言が響き、どうして涙が出そうになりながら、新しく出してくれたお茶を飲み干し、雫も部屋にもどり準備を始める事にした。
しばらく間が空きました。
申し訳ありません。
これからいろいろと今までの話を見直しつつ、修正出来ればしていこうと思います。
更新遅くなりましたらすいません。