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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第三章活動開始!〜其の三

     [月夜の雫〜第三章活動開始!〜其の三]





「あっ!雫さん丁度いいところに来てくれました!」


 ギルドに入ると、ラリアが雫を目ざとく見つけ、素早く声をかけてきた。

 とてもいいタイミングだ!と笑顔を浮かべながら。


「ラリアこんにちわ、どうしたんだ?」


 雫の後ろで、意外と手が早いんですねなどとクリスとサラがひそひそと話をしているが思いっきり雫に聞こえている。

 むしろわざと聞かせているのかもしれない、それを何とか無視しながらラリアと話を続けていく。


「はい!丁度いま月夜の雫への依頼書が回ってきたんですよ。今からカラードルの方へ連絡入れようとしたところだったのでまさにベストタイミングです!」


 元気よく答えたラリアは一枚の書類を雫へ手渡した。

 後ろから覗きこみながら二人もその依頼書を見る。

 依頼書には。



  [依頼書……ランクC強〜ランクB弱]


 ・場所:ディアの森、闇者の集落。


 ・闇者の討伐:グリーズル五匹、ラルカ五匹(追加可能性大)。


 ・集落の壊滅。


 ・成功報酬:九万五千シル+収集品、集落にあるアイテム類。


 *上記二つの完全遂行が任務完了となり、闇者の収集品をもって確認するものとする。

  集落に存在する闇者が現在確認されている数が上記、実際数の上下はあると思われるが全て殲滅し、その集落を壊滅、壊滅の証としてカラードルにて映像の保存を行う事。

  モンスターの数においてランクのアップもあり得るので、収集品の獲得は必須。



 そう書かれていた。

 後ろの二人が息を飲む音が聞こえ、振りかえるとかなり驚いた表情で、その書面を見続ける。

 最初に書面から目を離したのはサラだった。


「ちょっとラリアっていったかい!これは誰からの依頼なんだ!明らかに私たちの手におえるレベルを超えてるじゃないか!確かにランクはCだけど明らかにランクBクラスの依頼書だよこれは!確かに書面に書かれてるだけの闇者だけなら何とかなるかもしれないけど、それでもぎりぎり、ましてやそれに追加がきたらかなりの確率で全滅しかねないってのは解るはずだ!何より、場所がディアの森の中だろうこれ!たどり着くまでにだってかなりの数の闇者を相手にしないといけないって条件だってあるんだよ!ギルドのミスじゃないのかい!?」


 一気にそう捲くし立てるサラ、クリスも顔を少し青くしながらコクコクと頷いている。

 雫だけがそのモンスター達がどれくらいの強さを誇っているかを知らないため、状況を理解できていなかった。


(なぁ虹、グリーズルってやつとラルカってやつはかなり強いのか?)


(はい、ライラよりワンランク上の闇者と思ってください、グリーズルはデスブリンガーのレベルが低い者で、ラルカがライラのレベルが上の者です、共にレベル二十前後の闇者になります、特徴も似たようなものですので、本当に其の二匹の上位と下位に位置する闇者とお考えください。ちなみにデスブリンガーのレベルは四十前後です。)


 こっそりと虹から情報を聞きだす雫、確かにその話を聞くとかなり無茶な依頼に聞こえてくる。

 以前虹から聞いた話で、レベルが三から五違えばワンランク上になり一気に強さが増すという話を聞いている雫も、そこまで説明を受けてラリアを難しい顔で見つめる。


「そんな事言われましても……私もこの依頼書をち……ギルド長から渡されただけでして……」


「その依頼書はギルドからというよりも、元々私個人の依頼ですよ。ただ最近問題が大きくなり、その闇者たちによる冒険者襲撃により、冒険者の負傷率があまりにも高くなりすぎたため、団への依頼とし、貴方達であればなんとか出来ると私が判断したので回させて頂きました。」


 突然雫達の後ろからギルド長、デニスがそう三人に言い放った。

 いつもと変わらぬその微笑みをたたえながら。


「あんたかい!確かにリーダーの活躍を見れば出来るように見えるかもしれないけどね!私達は団を組んでまだまともに依頼を受けた事もなければ、戦闘を経験した事もないんだよ!何よりまず初めは手頃な腕試し程度の依頼を回すのが普通じゃないのかい!」


 サラはかなり興奮しているらしく、突然出てきたデニスにくってかかる。

 仕方のない事だろう、これはゲームではなく現実であり、一歩間違えれば死というものが待ち構えているのだから。

 いくら慎重になってもなりすぎるということはない。

 ましてや情報がある程度揃っていて、明らかにその依頼が死に近いと解ればどれだけそれを取りやめてもらおうと掛け合っても当たり前の事だろう。


「……申し訳ありません、実際はそうすべきことなのですが、私共も本当はそうしたかったのですが……今すぐに動ける団が雫さん率いる月夜の雫だけであり、ほかに動ける団は軒並みランクがEかDだけなのです。上位の団は皆今この付近にはおらず、早く戻ってこれる団であっても半月はかかるという事です。それまでこの闇者の集落を放置しておけば、近いうちに街に襲いに来る可能性が大いにあります、ですのでかなり無茶で無謀な事であると承知の上で月夜の雫の皆様にこの依頼をお願いしたいのです……この度の依頼に関しては拒否して頂いても、何ら罰則がかかることがありませんので、もちろん拒否していただいてもよろしいのですが、今頼れるのが貴方達だけなのです……」


 いつもかぶっている微笑みという仮面を捨てたデニスは、とても苦しそうに三人を見つめた。

 流石にそこまで言われるとサラもそれ以上突っかかることができないようで、しぶしぶ引き下がり、青い顔をしたクリスは……。


「雫さん!何とか引き受ける事はできないでしょうか?」


 雫にそう尋ねてきた。

 驚いたのはサラだ、さっきまでの様子を見ると怯え、明らかに一番恐怖していたクリスがサラでさえ及び腰になるレベルの依頼を受けてほしいと頼んできたのだから。


「まぁ……この街が襲われるとどっちにしても戦わねぇと行けねぇ訳だし、何より……」


 そう言ってクリスを見る。


「お前の実家がここにあるんだろう?見捨てられねぇよな!」


 雫はニカッと笑うとクリスの頭を乱暴に撫でた。

 少し恥ずかしそうに、どこか嬉しそうになすがままになっているクリスは「はい!ありがとうございます!」といって微笑んだ……まだ顔は青いままだが、それでも少し顔色も良くなってきている。

 雫の言葉でやっと頭が回り始めたらしいサラが軽く頭を掻きながら「ったくあたしとしたことが」と呟きながら。


「すまなかったね!あたし一人少し混乱し過ぎてたみたいだね、いっちょ気合い入れてやってやろうか!」


 そう言って雫とクリスの肩をバンバンと叩く。

 そんな三人をどこか眩しそうに、とても申し訳なさそうに見つめながら、デニスは一枚の書類を雫に手渡した。


「雫さん、こちらが今朝新しくなりましたこの件の依頼書です、確認してください。」


 その言葉にその依頼書を改めて確認した雫達は改めて驚いた表情でデニスを見つめた。



  [依頼書ランクBオーバー〜???]


 ・場所:ディアの森、闇者の集落。


 ・闇者の殲滅。


 ・闇者の集落の壊滅。


 ・報酬:十三万シル+収集品、集落のアイテム類+闘技大会へのシード権


 *上記二つの完全遂行が任務完了となり、闇者の収集品をもって確認するものとする。

  集落に存在する闇者が現在確認されている数が上記、実際数の上下はあると思われるが全て殲滅し、その集落を壊滅、壊滅の証としてカラードルにて映像の保存を行う事。

  モンスターの数においてランクのアップもあり得るので、収集品の獲得は必須。



 雫が驚いたところは報酬の大幅アップ。

 クリスとサラが驚いたところは闘技大会へのシード権。


「闘技大会のシード権なんて……ギルド長これは本当なんですか?」


 クリスが疑わしげにそう尋ねる。

 そんなクリスが不思議で虹に理由を尋ねると。


(ギルドの闘技大会は基本ギルドに所属していればだれでも参加は可能ですが、優勝者はほとんど決まっているようなものです。ランクSクラスの人間が優勝者になり、優勝者にのみ通常次の大会へのシード権というものが手渡されます。シード権はそれだけで準々決勝からの戦いになり、参加した時点でそれ相応の名誉と名声、お金が手に入ります)


 そんな説明を受け、なるほどと頷く雫。

 参加しただけで有名になれ、その上お金まで手に入る、それだけを聞けば大したことのないように聞こえるが、サラとクリスの驚きようを見ると、その有名になる度合いと金額がかなり凄いのだろうと考えた。


「はい、もちろんです。この度の依頼を貴方方にこなしてもらうのはこちらの我がままであり、明らかな上位ランクへの依頼になります。それに応じる為にはこれくらいの報酬は当たり前でしょう。」


 そう言っていつもの微笑みをその顔に張りつかせ、頷いた。

 サラはそれを見て明らかにやる気が出ていた。

 クリスもサラ程ではなかったが少し表情が明るくなっている。

 雫はそんな二人を見つめながら、これはどんなことをしても生き残り、戻ってこないといけないと改めて心に誓い、二人と一緒に頑張ろうと頷きあった。

 ラリアはそんな三人を少し羨ましそうに見つめながら、一つの書類を用意していた。

 その時はデニスを含む雫達四人はラリアの行動を全く見ていなかったので誰一人気づくことはなかった。

 改めて用意をするためギルドを出ようとしたとき、雫が一つの事に気付き慌ててラリアの元へ向かった。


「忘れてた!ラリア団のメンバーに一人追加があるんだけどどうしたらいい?」


 雫がそう言うとハッと顔をあげて、何かを隠すように慌てて返事をしてくる。

 何を隠したか……雫には関係ないものだと思い、突っ込まず、ラリアが出してきた書類を見つめた。


「こちらに記入してください……その方は戦闘メンバー扱いでよろしいんですよね?」


「いや、鍛冶師だ、団専属の鍛冶士になるんだけど、それだと何か変わるのか?」


 雫は書こうとしていた手を止め、ラリアを不思議そうに見つめる。


「はい、戦闘メンバーによってランクが決まるため、非戦闘メンバーは違う扱いになるんです。ちなみに非戦闘メンバーにもランクがありますのでそれは追々その方がいらっしゃったときに説明しますね、そちらではなくこちらの用紙に記入をお願いします。」


 そう言って雫が書こうとしていた書類と似ているが書く欄に職種・ポジションという欄が増えていた。

 雫は職種・ポジションの所に鍛冶師と記入し、名前を書き込んだ。

 

  [ダーニャ=ニルベスト]


 そう書き込んで、それを見たラリアはあっ!と声を上げた。

 またも不思議そうにラリアを見る雫。


「ニルベストさんってもしかして、あの路地裏に住んでるあのニルベストさんですか!?」


 少し興奮気味にそう聞いてくる、その大声に地下にいたデニスがまた寄ってきてラリアに注意をした。


「ラリア、お客さんの前で大声はやめなさいと何度言えば解るんだ、全く……ほぅ……」


 そう言いながら書面を見たデニスも少し驚いたように雫を見つめた。

 不思議そうにしている雫に気付くとデニスは微笑みを少し崩し苦笑を洩らしながら。


「いや、すみません、ダイロウとは少し付き合いがありましてね、その娘のダーニャとも……それでこの子なのですが、ある筋ではかなり有名な鍛冶師で誰の元にもつかない!と豪語していたもので少し驚いてしまったんですよ、申し訳ありませんでした。」


 そう頭を下げてきた。

 なるほど、と頷きながら頭をあげて下さいと雫は言いながら、改めてダーニャが凄い人物だった事に気付いた。

 そんな話をしながら無事登録を終え、ギルドを後にする。

 出発は準備もあり、ダーニャにも説明しないといけないので明日という事になり、三人は各々明日の準備のために分かれ、歩きだした。

 全ては明日、生き残るために。

更新が遅くて申し訳ありません。

それでもしっかりと書いて行くつもりですのでよろしくお願いします。

これと同時進行でエルドラドというMMORPGを主題にした物語も最近書き始めたので、もしよろしければそちらも読んでみて下さい。

この度も最後まで読んでくださいありがとうございます!

これからもがんばって書いていきますのでよろしくお願いします!

失礼します。

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