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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第三章活動開始!〜其の二

     [月夜の雫〜第三章活動開始!〜其の二]





  「出来たよっ!?」


 さぁ今からギルドに何かこなせる依頼がないか探しに行こうと、玄関に三人が集合して歩き始めようとした瞬間、外側から勢いよく扉が開け放たれ、そんな叫び声と共に女性が飛び込んできた。。


  「全く!宿にいったらあんたら居なくて探し回ったじゃないか!まぁギルドに問い合わせたらここにいるって解ったから良かったんだけどさ、んでもってほれほれ!これがあんた達の武器と防具だ、早速装備してみてちょうだい!」


 口早くそう捲くし立てるのはそうダーニャだ、興奮して頬が紅潮しているその様子は腰下までの長い銀髪と相成って物凄く魅力的に見えるが、興奮しすぎて周りが受ける印象もそれを軽く凌駕してしまっている。

 興奮し話し続けるダーニャの話を半分ほど聞き流しながら必要なところだけを拾っていく雫達は最後にそう言って差し出してきた武器と防具の包まれた布が所狭しと並ぶカートを見て全員眼を光らせた。


  「本気で!うぉぉぉぉ!やっと武器と防具が手に入った!」


  「へぇ……どんなもんなんだろうねぇ今のあたしの武器よりいい物……ってのは想像しにくいから楽しみでしょうがないよ」


  「私の武器……私の防具……初めての……み、見てもいいですか!?」


 武器と防具の存在に気づいた雫達三人はダーニャの興奮が移ったかのように同じく興奮し、武器と防具に手を伸ばしていく。

 大きさや形からどれが誰の装備かというのがすぐ解る。

 まず初めに飛びついたのは意外とクリスだった。


  「クリスの装備は杖と服、それとマントと腕輪の四点だよ!杖はダイアモンドを研磨して多角形状にしたんだ!その内に魔力を乱反射させ増幅する事が出来るようになってるのさ!服はちぃっと婆ちゃんに手伝ってもらったものなんだけど、聖樹の加護が宿してあるから並の鎧より頑丈だし、魔法の威力の軽減とナマクラな刀剣類は通さないよ!マントも婆ちゃんに手伝ってもらったやつだけど、これには風の加護が宿してあるからいざというとき風がその身を守ってくれる!最後に腕輪なんだけど、これはアースライムと呼ばれる土の結晶で作った物でね、術者のある程度までのダメージをその腕輪が砕け散るその時まで肩代わりしてくれるものなんだ!ただ……いざという命にかかわるようなダメージは無理だけどね」


 クリスが装備を手に取った瞬間そんな長い説明を一瞬で済ませるダーニャ、その瞳がどうだい凄いだろう!と物語っている。

 クリスはその武器と防具に見惚れ一言「すごい……」と感嘆のため息を漏らしつつ、優しくそれらを抱え込み自室へ駆けだした。

 それを傍目にサラも自分の装備に手を伸ばしていく。


  「サラの装備が一番どうするか悩んだんだよね!元々かなりいい武器防具そろってたし、何より私の実力が一番いかんなく発揮できる種類の装備類だったからさ!サラの装備は剣と鎧、髪飾りとネックレスだよ!まず剣なんだけどダイアモンドとサラマンドラの革と角どっちにするか迷ったんだよね……結局サラマンドラの方選んだんだけどさ、何となくあんたにはこっちの方が似合いそうでね!特徴はその奇麗な紅い刀身とその波紋さ!その波紋ただの波紋じゃなく紋章の役割を果たしていてね魔法効果が付いてくるんだ、もちろん火属性さね!ただそれだけだと火属性の敵に対抗できないから、『火なるものから無なるものへその姿を変えよ!』のキーワードで無属性の剣にもなるようにしたんだ!本格的に使いこなせるようになれば、その刀身を炎に包ませたり、炎を出したりする事も出来るようになるからサラの実力次第さね!次に鎧だけどやっぱりこれも揃えてサラマンドラの鱗で作らせてもらったよ!一応全魔法に大しての軽減効果があるけど炎に関しては無効化、水や氷に関しては半減までもってけるよ、もちろんその防御力は最高峰!クリスの服もかなりいい感じだけどその比じゃないよ!その鎧を貫けるものなんてそうそうないと思っていい!そんでもって髪飾りだ、兜つけるがらじゃないだろうサラはさ、だからあえて髪飾りにしといた!これなら邪魔にもならないだろうからね!その髪飾りもサラマンドラの逆鱗を使った代物でね、自然発動で防御魔法が展開されるんだ!ただ上からの攻撃に関してだから下からとか真正面からつかれると全く効果を発揮できないから気をつけてちょうだい!最後にネックレス、これはサラマンドラの心臓をそのガーネットに封じた物でね、サラ自身の攻撃力と防御力を底上げしてくれる効果がある!もちろん身につけている間でなおかつ私が用意したサラマンドラ装備を全部身につけていることが条件になっちまうんだけどさ!」


 一つ一つの説明が叫ぶような説明だが、不思議と聞きづらさがない、ダーニャの説明を受け、サラは感心したように一つ一つの武器と防具を確認していく。

 確認するにつれて頬を紅潮させていき一言「着替えてくるよっ!」といってサラも自室に走って行った。

 最後に残った雫が期待に胸をふくらませその装備に手を伸ばしていく。


  「雫の装備は……悔しいけどほとんどが先祖から受け継がれている技術で作られたものさ、今の私だけじゃここまでの技術きっと見つけられなかった……けど、いつかは超えて見せるけどね!まずは武器何だけどその黒い塊あるだろう?それを手に『黒夜の刃』といってみて」


 二人の時のように興奮した様子はないが、どこか悔しさ少しの誇らしさを秘めた瞳で雫を見つめる。


  「黒夜の刃」


 雫がそう言った瞬間掌に握った黒いクリスタルのようなものが突然雫と同じくらいの大きさの漆黒の鎌にかわった。


  「これが雫の武器、ただあまりにも大きいんで持ち運びが大変だろう?だから普段はそのクリスタルになっていて、そのキーワードをもとにその姿に変わるようになってるんだ、ちなみに『無なるクリスタル』で元に戻るよ」


  「無なるクリスタル」


 そう言った瞬間元の黒いクリスタルに戻った、どういう仕組みかはダーニャ自身知らないみたいだが、先祖の技術だということだ。


  「ちなみにそれの材質ダークマターっていう黒いこの星以外からきた物質らしいよ、実際さっき持って見て重さって感じなかっただろう?ただ頑丈さは折り紙つき、それを破壊できるものがあるなら逆に私に教えてほしい位の頑丈さでね、切れ味も鉄位までなら普通に切れるはずだよ、それ以上は雫の腕次第って訳だね」


 雫は改めてそのクリスタルを見つめた。

 確かに先ほど持った時、このクリスタルを手に取ったときの重さとまったく変わらない重さであり、頑丈さ切れ味も話を聞くだけだとあり得ないといってもおかしくない代物だ。


  「んでもって防具何だけど、まず婆ちゃんに手伝ってもらったこの服、妖精王の加護を受けし服でね、魔法の軽減効果とヒーリング効果があるから、多少の傷はこれを身につけてるだけで少しずつ回復していくはずだよ、まぁ余りにも酷いと保証はできないけどね、んでもってその上からこの部分鎧を着けてもらう事になるんだ、全部ダークマタで作られ、弱い魔法であれば反射し強い魔法であれば効果を軽減することができるよ、まず肩と腕、胸当てに脛この部分だけだけど、効果は全身にいきわたるから安心して、頑丈さはサラのサラマンドラより少し上位だけど、重さが全然違うでしょ?これも先祖の技術何だけど、どうやってかその重さを限りなく軽くしてるみたいなのよ」


 その服を手に取った瞬間、つい最近出会った森の精霊が思い出された。

 雫はまさかなぁと思いつつ鎧を持ち上げてみるが、その重さが服の重さと比べて同じくらいか少し重さがあるかどうかといったくらい軽いものだった。


  「ん〜完璧に物理法則無視してやがるなぁ……これぞまさにファンタジー!」


 雫はまた一人違うところに感動して悦に浸っていた。

 そんな雫を気にせず、ダーニャは続いて説明を続けていく。


  「んでもって次がこのサークレットね、これは中央に太陽石って呼ばれる石がつけられていて、周りの素材は黒竜の逆鱗、自動で頭上からの攻撃を防御する魔法が発動するけど、あくまで限界はあるからね、あと衝撃を吸収するわけじゃないからそこは気をつけて」


 一人悦に浸っていた雫はその説明を聞き、サークレットに手を伸ばす、仄かに暖かさを持つそれはどこか心を落ち着かせてくれるような気がした。


  「何となく気づいたかもしれないけど、太陽石っていうのはその人本来の力を発揮できるようにするため、心を落ち着かせる効果と全身の保温効果があるよ」


 ダーニャのその追加説明を聞き納得してそれをつけてみると、あまり変わった感じはしないものの、どこか安心感が感じられた。


  「さて次にこの指輪二つなんだけど、こっちの銀色の鳥が彫られてる指輪が物理的なダメージを壊れるまで軽減してくれる効果で、こっちの竜が彫られてる銀色の指輪が精神的なダメージを軽減してくれる効果があるから、左右どこの指でもいいから常につけておいて」


 雫は説明のあった鳥が彫られた指輪を右手の人差し指、竜の彫られた指輪を左手の人差し指にそれぞれつけ、着替えてくるという一言をダーニャに残し部屋に戻った。



 数分後、三人がそれぞれ新しい装備に身を包みその場に姿を現した。

 明らかに可笑しな位威圧感を発してるその装備に身を包んだ三人は苦笑をもらした。


  「ダーニャありがとう、本当に凄い装備ばかりだ、サラとクリスも凄く感謝してる……けどこれはいざという時以外なかなか身につけられないよ、クリスと俺の服やアクセサリーは問題ないけど、この特殊すぎる素材の部分鎧やサラのサラマンドラの装備はあまりにも他の人の眼を引く……というか引きすぎるから、ある程度この団が有名になってどうしても隠せなくなるまではいざというときだけ使わせて貰う事にするよ」


 雫が申し訳なさそうにそう言うと、ダーニャは一瞬はてなマークを浮かべた後笑いだした。


  「あ、なるほどね、クックック!ご、ごめん説明がたりなかったわ!」


 少し我慢しながらでもその笑っているのが解るくらい、苦しそうなダーニャは笑いの発作が治まると改めて説明を始めた。


  「クリスに関しては全部問題ないけど、サラと雫は装備の大半使えないと思うよいまのまんまじゃね、明らかにレベルにあってない装備だからさ、一応サラはその武器とネックレス、雫は武器と服と指輪しかいま装備しても効果が全く意味ないはずだよ、ちなみにその武器とアクセサリー類もすぐに完璧に使いこなすのは至難の技だと思うよ、私の作った武器防具、先祖の技術共に厄介な事にね……」


 ダーニャはそこでいったん区切ると三人を見回し挑発するようにこう言い放った。


  「持ち主を選ぶのさ」


 つまるところ、装備する物であっても、それらが雫達を認めなければその効果を存分に発揮することをしない……といったことらしい。

 一瞬何のことだろうという顔をしていた三人だが、ニヤニヤと面白そうに見つめるダーニャを見ている間に頭の整理がつき、三人ともまた苦笑をもらしたがその瞳には絶対認めさせるといった強い意志が感じられた。


  「なるほどねぇ……まぁ旨い事そうそういかないか」


  「まぁ逆に少し安心したよあたしは、つまるところ使いこなし、武器にしても防具にしてもその効果が発揮できてると思えるようになれば一人前、それまではあくまで半人前扱いってわけだね、上等!あたしはそういうの好きだよ」


  「大変そうですけど……これだけの凄い装備なんですそれくらいじゃないと逆におかしいですよね!でも私だってそうそう遅れをとったりしません、絶対に使いこなして見せます!」


 雫は軽くため息をついているものの、その瞳の強さは誰よりも強かった。

 サラとクリスも自分自身を改めて鍛えなおし、一刻でも早く与えられた装備を満足に使いこなせるようになろうと決意した。


  「はぁふ……にしても疲れたよ私は……完璧に徹夜で仕上げたからね……あ!そういえばさ雫あんた団長なんだってね私も今日からここの団に入るから後でギルド行ったときにでも申請しておいて、ポジションは鍛冶師でいいから……ごめ私限界だわ、今日から私もここに住まわして貰うから適当な部屋貰うね……あーそこの透明なメイドさん、どこでもいいから私の部屋作って案内して」


 余りにも突然なその決意表明についていけずぽかーんとしている三人と一精霊。

 一番早くに回復したのは精霊ファリスだった。

 伊達に一番年を生きている?わけじゃない、雫によろしいですかといった感じの視線を投げかけ、返事をまつ。

 それに気づいて、ようやく我に戻った雫は頭を軽く掻きながらうなづいた。


  「早くしておくれ〜それじゃないとその辺でぶっ倒れるよ〜」


 ダーニャは本当にもう限界らしく、先ほどの元気はどこから来ていたのかと聞きたくなるほど今にも力尽きそうだった。

 雫は強引だなぁと思いながらも、新しい仲間の誕生に喜びを感じていた。

 ダーニャがファリスに案内され、二階に行こうとした背中に雫は呼びかけた。


  「ダーニャ、改めてこれからよろしくな!」


 それに遅れてようやく調子を取り戻した二人も「よろしく頼むよ!」「よろしくお願いします!」とその背中に声をかける。

 ダーニャは、背を向けたまま軽く手を振りそのまま二階に上がっていった。

 三人は顔を見合わせ苦笑を洩らしながら、初めてそろった装備を一度部屋にもどり、使える物だけを持って改めて玄関で集合した。


  「さて、ようやくある程度身支度もそろったんだ、武器や防具に認められるためにも頑張ろうぜ」


 雫がそう言うと、サラとクリスは笑いながらうなづいて、屋敷を後にした。

 向かうところはギルド、ようやくそろった武器と防具を試すように、それを生かせる依頼を探しに向かった。

誤字脱字に注意を払いつつ書きました……が、恐らく自分の事です、気づかないところでやらかしてる気がします。

もし気づいたところなどありましたら、よろしくお願いします!

そろそろ、三人のギルドでの初?仕事の始まりです。

もしよろしければこれからもどうぞ読んでやってください。

それでは失礼します。

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