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月夜の雫  作者: 榊燕
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〜第一章異世界〜其の一

     [月夜の雫〜第一章異世界〜其の一]



「HAHAHA☆眼が覚めると其処は山の上♪ってなんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!?」


 叫び声をあげるのは二十を幾分か過ぎた普通の男、肩上位までの奇麗に整った漆黒の髪に切れ長の瞳が特徴的だがそれ以外は特に目立つところのない顔、黒いジャケットに少し汚れたジーンズをはいている本当にどこにでもいそうな青年だ。

 その男がいる場所は木々一つない朽ち果てた山の山頂、あるのはやたらごつい岩や、所々に転がる鳥にしてはでかすぎる羽根の生えた生き物の亡骸。

 その亡骸は一つの大きさをとっても全長二メートル、そんなものが数十転がっているのだ。


「……ちょ!怖っ!怖すぎるだろう!何でこんな鳥っぽい奴の死骸ごろごろしてんのよ!?ってかなにこれ!?」


 上を向きながら叫び続けていた男が、疲れ果てたせいか下を向いたときにその生物の亡骸が目に入った、一瞬息を飲んだ後混乱の極みの如く限界を超えた喉で再び叫び出していた。


「ぜーはーぜーはー……お、落ち着け俺!いいか落ち着くんだ……さっき思いっきり頭を殴って夢じゃない事は確認したな?ああしたともこれは夢じゃない!ならばこれは何だ!俺は確かに寝る前までは自分の部屋の自分のベッドの上でTVをつけっぱにしながらお菓子の滓に塗れて眠りこけていただろう?ああ間違いないぞ、確かにあれは俺のベッドだった!ならばなぜこんな朽ち果てた山のそれも山頂にいる上、周りはこんな死骸の山なんだ?知るか!?いやちょ知るかってどうすんのよ!いやすまね、本気で知らねぇ、そうですよね〜。」


 一人二役を器用にこなしながら現状を理解していく男……ぶっちゃけはたから見たら頭のおかしな人にしか見えず、黄色い救急車を呼ばれそうだが、本人にとっては物凄く追い詰められた状態での仕方のない行為だったのだろう。

 一しきり喚き散らし日が沈みかけたころとうとう力尽き丁度いい岩に座りこんだ。

 まるで椅子のような形の岩に腰掛け、改めてあたりをじっくりと観察し始めると、混乱の極みにいた男の顔が段々嬉々としたものになっていく。

 周りの景色は謎の生物の亡骸を除けばとても奇麗なものだ、山頂ということもあり、眼下に広がる風景は青と緑、所々に茶色い建て物らしき物だけで、そこを真っ赤に近い夕陽が照らし出している、この山周辺以外はとても素晴らしい景色だった。

 そこに思い至ったとき男は一つの可能性に気付いた。

 それはとてつもなく突拍子もなく、現実味なんてものはみじんもない考え。

 むしろ夢であると思い込んだ方がまだ可能性は高いのではないかと思うほど、おかしな考えだが、男はそれでも、もしという思いとともにその表情に笑みを張りつかせていく。


「もしかして……もしかするとあれか!あれなのか!?だったら俺は信じたことのない、信じる事がこれからもないであろう神にでも感謝するぞ!」


 先ほどまでの混乱による叫びとは違う、興奮したような叫び声をあげる。


「此処は……此処は!もしや異世界!?」


 全く突拍子のない発言だ。

 だが今まで生きてきた世界にはこんな奇麗な景色の場所があるなんて知らないうえ、寝て起きたらこんな状態になっている異常性から段々その考えが間違い無いような気がしているらしく、興奮がだんだん収まっていくと、今度は確信したようにあたりを見回し頷いた。


「間違いないだろう!これで異世界じゃないとか言いやがったらたとえ神を名乗る野郎が来やがっても許しはしねぇ!」


 男は確信を持って頷いた後、自分の身を確認しはじめた。


「特に変わったところは……ないか?持ち物も……ライターに財布だけだな……ってなんで財布なんてあるんだ……まぁいいか、その辺は多少都合してくれたんだろうな俺をこの世界に呼んだ何かが……でもまぁここが異世界でこの周りの風景を見てると絶対武器とかあった方がいいよな……まぁこんな馬鹿でかい生き物を倒す奴がいるんなら武器を持っててもまず勝てないだろうけどな!でもまぁ何かねぇかなぁ〜。」


 きょろきょろとあたりを見回す男、幸いな事に周りで山となっている亡骸からは血も出ておらず腐ってもいないせいで、どことなく不気味な雰囲気はあるもののグロテスクな光景じゃない、だからこそ気づいたのであろう。


「おぅ!あれもしかしてナイフじゃねぇ!」


 男はその亡骸を見回していると夕日に反射した何かを発見した、それは柄に丸い宝石が埋め込まれた銀のナイフ。

 そのナイフに埋め込まれた宝石は不思議な事に七色に光り、その刀身の銀の刃ははこぼれ一つ、シミや汚れ一つないとても奇麗なものだった……実戦向きとは思えないその美しさに男も思わず手にとってじっくりと見つめていたのだが、突然吹いた風によりそのナイフをまっさかさまに地面に落とした。


     [サク……]


「ちょまって!なにその擬音!サクってなによ!地面に何の抵抗もなく突き刺さりやがったぞ!?」


 恐る恐るそのナイフを改めて抜いてみるとやはり抵抗らしい抵抗が全くなかった。

 そしてその刀身にも傷も汚れも見当たらない、実戦向きには見えなかったが、明らかに実戦向きのナイフより強力な威力を誇っているのがよく解る。

 男もそのナイフが少し怖くなったのだろうが、他に武器になりそうなものもなかったらしく仕方なくそのナイフを持って道とは間違っても呼べないような山を一人降りて行く。


「ナイフよナイフよナイフさん、お願いだから俺だけは切らないようにしてください!」


 ナイフに向かいあいながら真剣にそんな事をのたまう男、明らかに精神に異常をきたしてる!そう言われても仕方なのないような行動だ……が!


「もちろんです御主人様。私は御主人様だけは決して傷つけず、どんなものからも守って見せます。」


 男は[ピシィ]という擬音が聞こえそうなほどにナイフを見つめたまま固まった……気のせいかなぁとか冷汗を流しながらナイフから眼をそらし、もう一度呼びかけてみた。


「あ、あの〜もしかしてナイフさんお話することできるのですか?」


 怯え腰なのは仕方のない事だろうだってあの切れ味で突然話し出したのだ、明らかに呪われている武器……そんな考えが頭をよぎったとして誰が責められるというのだろうか。

 男は怯えながらナイフに問いかけ返事を待った。すぐ来た。


「はい、私は虹と申します、ご主人様の盾として牙としてその身に尽くさせていただきます。至らぬ我が身ですが末長くよろしくお願いします。」


「あぁぁぁぁ!やっぱりナイフが喋ってる!……って此処は異世界これくらいの事は不思議でもなんでもないのかな?いやきっとそうだ、そうにきまってる!だからこの虹と名乗ったナイフも当たり前の出来事なんだな!」


 男がナイフから視線をそらしながらそんな事をのたまう。

 ただ悲しいかな、現実というものは時として残酷に事実を知らせてくる。

 そのナイフはしゃべるのだと。


「ご主人様、出来ればご主人様のお名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 虹の遠慮がちなその質問に律儀にこたえる。


「あ、ああ、俺は夜月 雫だ……よく解らないがよろしく頼む」

          後書き


     これが物語の始まりだった、突然の始まり。


     行く先に何が待ち構えているのか、何をしていくのかはこれからです。


     何か気になる点や、可笑しいなという点、誤字脱字などありましたら是非ご指摘ください、よろしくお願いします。


     最後まで読んでくださった方々ありがとうございます、もしよろしければこれからも是非お願いします。


     それでは失礼します、また次のお話で。

     

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