1-5 殲滅した後は…
豪腕を振り回す魔法少女。
戦闘シーンはあっという間に終了するようです。(´・ω・`)
その夜のこと。
さすがに半日がかりで移動した距離を、夜通し戻るわけにもいかず、ノアと寅は村に宿泊することになった。
資金的には野宿もあり得ると覚悟していたが、ノアの獅子奮迅の戦いぶりを村人に目撃され、半分英雄扱いで尊重の家を間借りすることになった。
貧しい村なりの精一杯の持て成しを受けたノアは、間借りした客室で寝間着に着替え、ベッドで寅と向かい合っていた。
二人の間には、ゴブリンの魔石が山のように転がっている。
「いっぱい倒した」
「そうだな。これだけゴブリンの魔石があれば、討伐の証明になるだろう。この世界は魔物の素材をはぎ取る必要がないのは助かるな」
「この世界?」
「もう少し大人になったら説明してやる。しかし、あれだけの数のゴブリンを相手にしたのに、まさかほぼ無傷とはな」
「自分でもビックリ。ラリアットを唱えた後は、すっごく身体が軽くなる」
「ふむ……鑑定が出来る訳じゃないから正確ではないかもしれないが、即死のほかに必中の補正もあるのかもな」
「ひっちゅう?」
「必ず当てられる能力。逆をいえば、当たるまでは絶対的な無敵ってことだ」
「なにそれ、こわい」
「お前のことだがな。もっと細かく検証をしたいところだが、俺たち二人ではそれも難しい」
「どうして?」
「まず、俺が役に立たん。今のところ、魔力で動いているのは感じるが、魔法を発動できる気配がない」
「なるほど……」
「将来的には、背中を預けられる仲間を探さなければいけないだろうな」
「ん、わかった」
「ところで、ギルドカードはどうだ? ステータス更新はされているか?」
「レベルが上がっている。寅さんと出会ったときが4だったのが10になった」
「そりゃあ、結構な速度だな。と言っても、今日だけでゴブリン70体以上を討伐している訳だから、当然と言えば当然の成果だが……」
「ねぇ、寅さん、魔石どうしようか?」
「ん? どうしようってのは?」
「さすがにお持ち帰りするのは大変」
魔石一つで拳大の大きさがある。70個以上ともなれば袋に入れて持ち運ぶのは、リスクが大きい。袋で持ち破婚では、モンスターや野党に襲われたときに初動が遅れてしまう。
「そのことだがな、一つ朗報だ」
と、寅はムンズと魔石を一つ掴むと、そのままゴクンと丸飲みした。
「ふぁ!?」
「どうやら、俺の腹はアイテムボックス、次元収納の能力があるらしい」
「なんで今まで黙ってたの?」
「魔石を丸飲みにする機会なんて早々にないだろ。確認できたのは今日、お前がゴブリンと戦っている最中だ」
「いつの間に……」
「ま、いろいろあるってことだ」
実際問題、ノアが孤軍奮闘している最中、邪魔にならないように動き回っていたところ、飛んできた魔石が口に直撃し、そのまま腹の中に収まってしまった、と言う程度のことだった。
ちなみに、ノアの入浴中、試しに腹の中の魔石を口から取り出してみたが、無事成功した。
しばし哀愁を漂わせたのは秘密だ。
「というわけで、収納に関しては問題ない。魔物がでたら遠慮なく倒せ」
言いながら、寅は次々に魔石を腹の中に収納し始める。
「ん、わかった。どんどんレベルもあげたいから、がんばる」
「おう。あと、明日の予定だがな、朝一でビーダブへ戻って。討伐のクエストの代金を受け取ろう。当面の生活費にはなるだろうからな」
「うん、わかった」
「よし、じゃあ、今日は早く寝ろ。長距離の移動で疲れたろ」
「……あの、ね、寅さん」
ノアは四つん這いで寅に近づいていく。
挑発的な女豹のポーズになっているが、まだまだ子供なので妖艶な色気は見受けられない。
「相談が、ある」
「どうした?」
「じゃーまんすーぷれっくす、って魔法ですか?」
寅の口から、魔石が落ちた。
瘴気で核が作られるのは研究でハッキリしているものの、
本来は死体の中をほじくって引っ張り出す物です。
一撃で致命傷以上のダメージを与えると核だけになります。
そのあたりの考察はそのうち寅さんがしてくれる予定です。