1-4 ラリアット無双
ゴブリンの群れと接触しました
この世界の魔物は、全て核となる魔石で動いている。
つまり、人間や動物とは全く種族自体が異なる、と言えるだろう。
解明された原理では、障気と呼ばれる黒い霧と、魔石が重なり合うと、魔物になる。
ゴブリンやスライムといった種族がこれに該当する。
障気が濃ければ濃いほど、強い魔物が生まれる。
また、普通の動物が障気を浴びても、魔物となってしまうケースも多い。
たとえばグローウルフやロックバードなどのケースはこちらに該当する。
竜族などに関してはどちらに該当するのか、未だに未解明ときている。
障気とは何なのか。魔石とは何なのか。何故動物が魔物になってしまうのか。
この謎については、未だに議論が紛糾する。
いつ、どこで、どのように生み出されているのか。
誰にも分からないのだ。
街道を移動すること、およそ数時間。
日も傾き始めた夕刻に、ノアと寅は目的地である村にさしかかった近くの野原で、大小様々なゴブリンたちに囲まれていた。
武器を手に威嚇しているゴブリンに対し、ノアと寅は背中合わせになりながら警戒している。
「到着早々、依頼の遂行とは忙しいな」
「大丈夫、疲れてない」
「上等。とはいえ、だいぶデカいのが混じっているな」
「寅さんのアドバイスは無駄にしない。全部、高さを合わせて、ラリアットをする」
「その意気やよしだ。ノア、形にとらわれるな。思いつくことは何でもやってみろ」
「分かった!」
ノアは大きくうなずき、一番大きいゴブリンに向かって走りつつ、必殺の言葉をつぶやく。
「ラリアット」
大きなゴブリンが巨大な斧を振りかぶり、ノアを迎え撃つ。振り下ろされた斧を紙一重で避けたノアは、斧を足場にして目標に向け飛び上がる。
「だりゃあ!」
ゴブリンの胸元にノアの腕が叩き込まれた。
集団の中で一番大きなゴブリンは、二歩、三歩と後ろに下がると、断末魔の声を上げて霧散した。
魔石が乾いた音を立てて地面に転がる。
一瞬の出来事に、ゴブリンたちに同様が広がる。
ノアはこの隙を逃さない。
着地と同時に槍を持ったゴブリンに向けて既に走り出していた。
我に返った槍ゴブリンが、正面からノアの胴体を突き刺そうと槍を繰り出す。
「ラリアット……ぉぉああっ!!」
ノアは自ら回転して槍を切っ先を回避すると、左腕でラリアットを放つ。
槍ゴブリンは悲鳴を上げて四散、再び魔石が転がった。
勢いが余ったのか、体勢が崩れているノアに対し、2体のゴブリンが矢を放つ。
「ラリアット」
ノアは崩れた体勢を利用して前転、すぐに立ち上がると矢を放った弓ゴブリンに肉薄、横っ飛びに矢を避けると、次の矢を放つ前にゴブリンに接近。
両腕を広げるようにして左右同時にラリアットを放ち、弓ゴブリン二体を絶命させた。
「あと、16……」
冷静に呟くと、ノアは次のゴブリンに向けて走る。
夕暮れの赤い畑に、ゴブリンの断末魔と、頭部が破裂する音が響き続けた。
魔物に関しての考察は追々の予定。
ラリアットの効果に関しても追々。
合い言葉は、コマケェコタァイインダヨォ!