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ラリアットって魔法ですか?  作者: 道中木方
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1-3 クエストへの道すがら

少女とヌイグルミの旅が地味に始まりました。

あくまでも状況の整理だけです。

長めですが暢気にお楽しみ下さい。


 ビーダブの街近くの街道の朝。


 リュックを背負ったノアと、ヌイグルミの寅が依頼書片手にテクテクと歩いている。



「よし、状況を整理するぞ」


「うん」


「まず今回受けたクエストはゴブリン討伐。ラリアットが使える以上、負けることはないと思うが、油断は禁物だ」


「うん!」


「目標額だが、ゼンニとローレの入院費、治療費は見積もりでは600トココ。

 ゴブリン一体の魔石で100トココだから、最低でも6体倒せれば、見通しは立つ」


「うんうん!」


「まぁ、火事場のクソ力とはいえ、お前はすでにゴブリン50体をぶっ飛ばしている。気負わずいこう」



 50体をぶっ飛ばした、というのは、寅が目覚め、ノアがラリアット無双を開眼した時のことだ。


 両親を助けた後も、ノアはゴブリンの軍団に対してラリアット一つで暴れ回り、全てを殲滅していた。


 本来なら、魔石はノアのものになりそうなものだったが、初めてラリアットを連発した疲労からか、ノアはゴブリンを討伐した後、気を失ってしまい、目覚めたときは病院のベッドの上。


 尚且つ、救援に着た警備兵達が全部の魔石を回収してしまい、現在受け取り不可能。


 少女が一人でゴブリンを全滅させられるわけがない、と言うわけだ。


 現在、キャラバンの責任者が交渉をしてくれているが、まだまだ時間がかかるだろう。



「わかった!」


「移動中に他の魔物が出てくる可能性だってある。ラリアットの実践訓練にしていこう」


「うん!」


「よし、それじゃ少し急ぐか」


「おーっ!」



 ノアは拳を突き上げると元気よく街道を走っていった。



 太陽の位置が真上にくる頃。


 ノアの腹時計に従い、街道の木陰で昼食をとる。


 町の中で買っておいたサンドイッチだ。


 ハムレタスのサンドに、タマゴサンド。


 この世界では、一般的な携帯食だ。



「そういえば、寅さんってご飯はいらないの?」


「言っても、しがない虎だからな。空腹感もなければ、食事をとる口もない」


「ふーん……」


「必要とするなら、魔力、だろうな」


「魔力?」


「魔法を使うときの源になる力だ。魔力が枯渇したときが、俺の死ぬときだろう」


「それ、困る!! 魔力、どうすればいいの!?」


「慌てるな。俺の魔力の源は、おそらくお前だ」


「あたし?」


「俺が目覚めた時、ノアは何を言っていた?」


「ラリアットって唱えてた」


「これは、あくまで俺の推論だが、あのときノアの魔力に俺の中にある魔石が反応したと思われる」


「魔石? じゃあ、寅さん、魔物なの?」


「おそらくな。そうじゃなかったら、ヌイグルミが勝手気ままに動き回る訳がないだろ」


「うん……」


「ま、俺自身、自分の正体が分からんのだから、分類として魔物が正しいのかすら怪しいがな」


「寅さんは……寅さんだもん」


「そうだな。所詮、俺はしがない虎さ」


「うん」



 ノアは寅の身体を抱き寄せると強く抱きしめる。


 自分の師たる寅が、人間の敵の魔物な訳がない。


 そう否定するかのように。



 ガサリ、と不意に木陰から物音がする。


 飛び出してきたのは、半透明の液体の塊。


「スライム!」



 ノアは立ち上がり、すぐに臨戦態勢をとる。


 個体で動く魔物だが、ひとたび人にとりつけば、皮膚から骨から溶かしてしまう、恐ろしい魔物だ。



「おあつらえ向きってやつだな」


「え?」


「ラリアットの実践訓練にはもってこいだ」


「でも、ラリアット、いっぱい使った」


「あくまで、人の形をした相手にな」


「あっ……」



 寅の言わんとしていることを理解し、ノアはぷるぷると震えているスライムに向き合った。



「……ラリアット」



 力ある言葉を唱え、ノアはスライムに向けて走り込み、全力で右腕を振り抜いた。


 しかし、何も起こらなかった。


 ノアの必殺の魔法の豪腕は、スライムの上空を通過しただけだった。



「寅さん、大変!」


「どうした?」


「ラリアットが当たらない!」


「だろうな」


「どうしよう!?」


「頭を使え! 要はラリアットが当たる高さにお前が合わせればいいんだ」


「高さを合わせる……そっか!」



 寅のヒントにすぐにイメージを修正し、ノアは低く猫の様に四つん這いに構え、



「ラリアットーッ!!」



 スライムに向けヘッドスライディングで飛び込む。


 今度はスライムの首?にジャストミート。


 スライムは粉々に吹き飛んだ。


 結果、ノアは大地と熱烈なキスをした。



「やった!」


 嬉しそうに飛び起きるノア。


 せっかくの装備が一瞬で台無しだ。


「30点だ」


「えー?」



 寅の厳しい採点にノアは不満を隠さない。



「頭を使え。高さを合わせるところまでは正解だが、もし他にも魔物が隠れていて、お前の隙を伺っていたとしたら、どうだ?」


「魔物が隙を……?」



 言われて、ノアは想像してみる。




 ノアの攻撃、ヘッドスライディングラリアット。


 スライムに会心の一撃。


 スライムは倒された。


 草むらから別のスライムが現れた。


 ノアはスライディングした直後で動けない。


 スライムの攻撃、覆い被さる。


 ノアは息ができない。


 ノアは死んでしまった。




「……ごめんなさい」


「分かればいい。次はすぐに動けるように足から滑り込め」


「そっか! さすが寅さん!」


「誉めても何も出ねぇぞ」


「じゃあ、かってに取り出す」



 と、ノアは寅を抱き上げると、嬉しそうに頬ずりする。



「うへへ、寅さん、もふもふ」


「こら、やめろ、こういうことは、クエストが終わったときにしろ!」


「はーい」



 ノアは寅を肩車すると、元気よく街道を走り始める。


 木漏れ日が街道を明るく照らしていた。



魔物については追々設定公開。


とりあえず、ラリアットには必中と即死に近い効果がくっついている魔法と思って下さい。


ええ、あくまでも魔法です。


コマケェコタァイインダヨォ!

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