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ラリアットって魔法ですか?  作者: 道中木方
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1-2 初めてのハンター登録

まずはギルドに職業の申請。

ほぼ、はじめてのお使い状態。



「ノア」


「はい」


「ハンターギルドはどこだ?」


「知らないよ?」



 初めての街でノアに土地勘があるはずもない。



「寅さんは分からないの?」


「オレはしがない虎だ」



 ぬいぐるみに土地勘は存在しない。



「答えになってないよぅ」



 と、ノアは大通りでキョロキョロとあたりを見渡す。


 街の名前はビーダブ。


 様々な冒険者が行き交う大きな街だ。


 また周辺には山岳地帯と湖に囲まれており、駆け出しのハンターなどが修行の地として選ぶことが多い。


 情報として知っていても、街の作りは分かるわけがない。


 寅さんを抱きながら街中をさまよったノアは、ようやく警備兵を見つけてハンターギルドの場所を聞き出した。


 あやうく迷子と間違われそうになったが。




「ねぇ、寅さん」


「なんだ?」


「寅さんって、結局何者なの?」


「しがない虎だ」


「それは何度も聞いた。本当は何者なの?」


「ふむ……」



 道すがら、ノアの両手に抱きしめられながら、寅さんは首を傾げる。



「正直に言って、自分でも判断が付かない。ノアたちがゴブリンの襲撃を受けていたとき、唐突に意識が目覚めた」


「なにがきっかけだったの?」


「さてな。ただ、ノアが口走っていた言葉が鍵になったとは思う」


「らりあっと?」


「そうだ。その言葉が何かオレは知っていた。もっとも、オレが何者で、何故ぬいぐるみなのか、皆目検討も付かないが、ノアの使う固有魔法の為に、オレは存在しているのだと思う」


「……そっか」


「ま、当面はハンターとして、魔物狩りをしようじゃねぇか。人型の魔物はラリアットで倒せることは実証済みだ。当面の路銀稼ぎにはなるだろ」


「うん」



 ノアは軽くうなずくと、ハンター協会へと急いだ。



「ハンターさんがいっぱい……」


 ノアがギルドに入ると、かなりの数のハンターがひしめいていた。


 屈強な男女、騎士の格好をした男、魔法使いの女、荷物持ちをする少年少女も見受けられる。


「さて、まずは登録をしないとな」


「うん」



 ノアはパタパタと受付へ向かう。


 時間帯が良かったのか混み合ってない。



「ハンターギルドへようこそ。本日はどのようなご用件ですか?」


「ハンター登録をしにきました」


「承知しました」 



 受付嬢のラエミは営業用のスマイルを浮かべる。


 ノアの年齢で登録というのは珍しい話ではない。


 荷物持ちをする事で日銭を稼ぐスラムの少年たちは相当数いるので、競争率は高くなるが。



「では、この書面に名前と出身国、あと使える魔法などがありましたらお書きください。文字は分かりますか?」


「大丈夫」



 迷い無く書き始めたノアに、ラエミは少し驚いた表情を見せる。


 荷物持ちを志望するスラムの子供たちは当然読み書きが出来ない。


 基礎的な知識があるのか、分からないことを質問するコミュニケーション力があるのかを試す意味もあるのだ。



「書けました」


「はい、ありがとうございます……はい、特に不備はありません。仕事について説明をしますね」


「大丈夫。色んな人から聞いている」


「そ、そうですか?」



 本来初めて登録した冒険者に、Fランクから始まって、一番上はSランクですよ、そこを目指して云々かんぬんと説明をするのがラエミの仕事なので、盛大な肩すかしだ。



「説明を聞かないと不都合もあると思いますが?」


「寅さんもいるから大丈夫」


「寅さん?」


「これ」



 と、掲げられたのはぬいぐるみ。



「あ、ああ、なるほど」



 苦笑いを浮かべるラエミの前で、虎のぬいぐるみは、受付台の上で自分で勝手に動き始め、中腰になってサッと手を前に差しだし、



「お初にお目にかかりやす。私、生まれも育ちも記憶になく、未だ身を立てる渾名も持たぬ身で御座いますが、何の因果かこの姿、なんの力もありやせんが、ワータイガーのぬいぐるみ、名を寅と発します。以後お見知り置きを」


「え……」


「「「えええええええ!?」」」



 ぬいぐるみが勝手に喋る異常事態に、ギルドにいた全員が大声を上げてしまう。



「ノアちゃん、これ、どういうこと!?」


「わーたいがーの寅さん」


「ええ、いま、聞いた。じゃなくて、なんでこのぬいぐるみ、動いているの!?」


「知らない」


「知らない!? ノアちゃんが動かしているんじゃないの!?」


「違う。私は寅さんに助けられた」


「助け、られ……ええ~?」



 言っている意味が分からない。ギルド受付歴十ン年、ラエミはすっかり混乱をしている。



「ラエミさん」


「は、はい」


「正直に言えば、俺自身にもまだ自分が何者なのか覚えのない身。だが、間違いなく言えるのは、俺はノアの為に存在する。ノアのサポート役として今この場で動いている。それ以上でも、それ以下でもない」


「分かりました。では、寅さん? は、ノアさんのテイムモンスター扱いとして、登録させていただきます」


「分かった。助かる」


「ところで、本当にギルドの説明はよろしいのでしょうか?」


「ノアの使う魔法もかなり特殊でな。しばらくはソロのハンターで通す予定だ」


「魔法?」



 言われて、ラエミは書面にもう一度目を通す。


 そこには、



「ら、らり、あっと? ですか?」


「寅さんが教えてくれた」


「ああ、近接用の魔法と思われるが、効果や威力もまだまだ不透明なんだ。パーティを組もうにも自分の能力すら分からないのでは話にならないだろう?」


「それで、ソロのハンターですか……」



 ラエミはうなり声を漏らす。


 ノアの環境は間違いなく特殊。


 ギルドランクは入りたてのF。能力不明。お抱えのぬいぐるみは意志があって喋っている。


 こんな得体の知れない子供を、何処の誰がパーティに入れるというのか。



「……こちらへ来て頂けますか?」



 と、ラエミは受付卓から立ち上がると、ノアを様々な依頼書が張り出されているボードへ案内した。



「こちらのハンターボードには、様々な依頼がいつも張り出されていますが、ノアさんが該当するのは討伐ハントと呼ばれる依頼になります」



 ハンターの依頼は大まかに、護衛、採取、納品、討伐に分かれている。


 護衛はある程度のランクがないと受けられないのは言わずもがなだが、ノアに関わる依頼は主に「討伐」になる。


 モンスターが倒された時に生じる結晶体が「魔石」で、ハンターギルドに持ち帰ることで、なんのモンスターか判定してもらうことになる。



「討伐ハントは請負型になりますが、魔石を持ち帰ってから受けることも出来ます。もしパーティを組まず、ハンター登録をするのなら、このスタイルの方が良いかも知れません」



 説明を聞き終えたノアは大きく頷き、



「なるほど、分からん」


「あー、大丈夫だ、俺があらかた理解した。まぁ、一般的なゴブリン討伐から始めてみるか」


「わかった」


 ノアが手に取ったのは依頼ランクE、ゴブリン討伐だった。



この世界では名乗ったらハンターですが、ギルドに申請することで担保になります。

お互い詐欺に遭わなくて済む、ということですね。


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