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ずっと一緒

「さっきから様子が変だよウミカ?どこか調子でも悪いの?」

「い、いや!そ、そんな事はないですよ!?」

「それならいいんだけど……。でも少し顔が赤くない?」

「そ、それは……。そ、そうです!これはお風呂の温度が熱くて、その……」

 言い訳と呼べるかどうか分からないが、私は必死にカネリから視線をそらしつつ、そう答える。

 そもそもどうして私がカネリと一緒にお風呂なんて……。


 ――さかのぼる事少し前。長老さんが突然家から出て、その去り際に私達に風呂に入れと言ってきた事だ。

 まずどうして長老さんは突然家を出て行ったのかという事や、どうして突然お風呂に入ることになったのかと色々といいたいことがあるが、もうそれは後の祭りであり、結局カネリに無理矢理服を脱がされながら、こうして一緒にお風呂に入ることになったのだが……。

「……(チラッ)」

 今私達が二人で入っている風呂の大きさはそれほど大きくないのだ。

 だから当然、私とカネリの体は触れることになり……カネリの柔らかい太股や、腕、――下手をすれば胸までも触れてしまいそうな、そんな距離であった。

 そして当然ながら私達は裸である。

 ――や、やばい考えるだけでもう駄目になりそうだ……。

 そう思い、私は必死になって考えるのをやめようとするが、どうしても頭から離れない。

 そもそもどうして女である私が、これほどまでに過剰に反応するのかというと、――私はどういうわけか、よく男の人が見るような萌えアニメが大好きなのである。だから当然、美少女キャラを見てしまえば萌えてしまうわけで……こうして現実であれ、こんな美少女と一緒に――しかも裸で――いるとどうしても萌えてましい、それはもう現実でいう興奮に近い状態になるのである。

 一度これが原因で友達――と呼べるか分からないが――知人に避けられた事がある。

 だから私は極力、男子、女子関係なく人と関わることを避けていた。

 ――まぁ結局それが原因で私はこの世界に来ることになったのだが……。

「……さっきからどうしたのウミカ?なんだかとっても複雑な表情になってるけど?」

「い、いや!べ、別に大丈夫だよ!?」

 そう言って少しだけ近寄ってくる、カネリを無理矢理にでも意識しないように努力しながら――当然無理だが――明後日の方向を見ながら答えた。

 ――それにしても、普通女の子同士でもここまでスキンシップをするものなのか?!これは私がおかしいだけなのか!?

 い、いや私はおかしくないはず……、流石に女の子同士でもここまで過剰なスキンシップはしないはず……。……しないよね?

 ――もう分からない!だ、誰かリアルJKじゃなくてもいいから教えて下さい!

 そう天に仰ぐが、当然返事は返ってこない。

 ――あっ、そういえば……。

 ここで私はふとある事を考えた。

「カネリの歳って何歳なの?」

 そう、私とカネリは出会ってからまだ全く経っていないので、カネリの事は当然全く知らない。

 そしてカリンの事も同様だ。

 二人とも知っているのは、名前ぐらいしかなく、それ以外の情報は全く知らない。

 ――私は一瞬だけ、カネリにこの事を聞くかどうか迷ったが、こういうものは早めに情報を交換しておかないと思い、こうして問いかけたのである。

 だが、等のカネリはと言うと、先ほどと比べ表情が暗くなっていた。

 ――あっ、この空気は……。私また何かまずいことでも言ってしまったのか……。

 などと考えると、不意にカネリが口を開いた。

「――私は自分の歳も誕生日も……そして親の事すら知らないんだ」

「えっ?」

 あまりに突然のカミングアウトに驚きつつも、私は、思わず不味いことを聞いてしまったと、自分を責め、すぐに話題をそらそうと口を開こうとした瞬間、

「べ、別にそんなに重い話じゃないよウミカ。――むしろここじゃあ……いや、この世界の女性は私のような人は多いと思うよ。――でも別に私はそんな事を悩んでいるわけではないよ」

「そ、そうだったんだ……」

 ――まさかカネリにそんな事が、生まれた日や、自分を生んでくれた親すらも分からないなんて……。

 きっとカネリも心の中ではそういう情報を知りたいと思っているに違いない……。

 ――これは不味いことを聞いてしまったな……。

 いくら本人が気にしなくてもいいと言っても、こ

うやって一度聞いてしまえば気にせずにはいられなくなるのは人間のさがだろう。

 だが、当然私がカネリにしてやれることはない。

 そんな事は分かっているのだが……分かってはいるのだが……。

「……」

 ――そのカネリの冷たい表情を見てしまっている以上、私はなんとかしないといけない。

 ――きっとこういう時も、本来なら姉であるカリンさんがどうにか慰めていたのだろう。

 姉であるカリンさんの代わりになる事が今の私の生きる意味なのに、早速それを実行に移さなかったら、それはただの口だけの人になってしまう。

 ――だが、一番の問題はどう声を掛ければいいのかだ……。

 当然、私はコミュ症であるので、未だに二人きりで話す時は緊張したりしているわけで……。

「――じゃ、じゃあ誕生日は自分で決めたらどうかな?」

「え?」

 そのカネリの表情を見てると、どうにかしなくてはと思い、私は半ば無意識的にそう呟いた。

「――自分で決める……」

 とカネリはゆっくりと呟いた。

 ――確かこういうのはアニメで見た事がある。

 誕生日がない少女に、主人公は今日出会ったこの日を誕生日にしよう、とかそんな事を言った場面をふと思い出した。

 だったら私も……、

「だ、だからさ……。カネリと私が出会った今日この日を誕生日にしようよ。――って思ったけど……ごめん、流石に駄目だよね……」

 と途中で私は口を濁した。

 ――そもそも、アニメで見るセリフを私なんかが簡単に使っていいはずもない。あのセリフは主人公だからこそ言えることの出来るセリフだ。

 私は、異世界転生しているが、まだ主人公の立場として全く立っていない。

 ――異世界転生してすぐ痴漢に捕まり、さらに助けてもらった人が私をかばって死んだ。

 そんな異世界生活を送った私なんか主人公なわけがない。

 だから、私はすぐに前言を撤回する為、口を開こうとしたが、

「――確かに……それはいいかも……」

 とカネリが呟いているのが聞こえた。

 どうやらカネリは気に入ってくれたようだ。

 ――ふぅ……良かった……。

 カリネの少しだけうれしがっている表情を見て少しだけ安心していると、ふいにカネリの表情が少し暗くなった。

 一体どうしたのだろうか……?

 そう思ってじっと見ていると、

「――そうだ……。私は今日から生まれかわらないと……。もうお姉ちゃんはいないんだから……」

 そう呟く声が聞こえた。

 ――うっ……、結局暗い雰囲気になってしまった……。やっぱりこういうセリフは主人公ではないと使えないセリフだったのか……。

 い、いや!今はそんな事より、カネリをどうにかしないと……!

 元々私がカリンさんの代わりになってカネリを守るって言ったんだから!だから……だから……、

「私はカネリのそばにずっといるから!絶対ずっとそばにいるから!だからカネリも私と一緒になろう!」

 テンションが少しだけ高くなり、いつの間にかそんな事を叫んでいた。

 そして、そんな私の言葉を聞いたカネリは……、

「え、えっ!えっ?!」

 視線をあちこちにさまよせながら、口をぱくぱくと動かしていた。

 そしてそんな、カネリの様子を見て、私も少しだけ冷静になった。

 ――あ、あれ?私今……。

「――え、えと……!と、突然そんな事言われても私は……。そ、それに私達はまだ出会って間もないし……、それにウミカの気持ちもあるし……!だ、だからこういうのはもっとお互いの事をよく知ってからじゃ……!!」

 とカネリは慌てながらも一生懸命口を動かした。

 そしてそんなカネリを見て私は――や、やばい!カネリ可愛い!なんて思ってしまった。

 ――い、いやだって!あのカネリがこんなに慌ててる!いつもはカリンさんみたいに少し強きな態度なのに、急にこんなに照れたような慌てたような表情になっているなんて!ほんとにカネリは女神か何かですか!?

 なんて心の中で盛り上がっている間にも、カネリはまだ口をぱくぱくとさせていた。

 ――っと……、今は早いところ誤解を解かないと……。

「ご、ごめんカネリ!い、今のは……」

 そうして、私はなんとか誤解を解くことが出来た。

 ――その間、今度は羞恥で顔が赤くなっていくカネリも可愛かったが、私はそれを堪能をするのを我慢てし最後までしっかりと説明を続けた。



「――ご、ごめんウミカ!わ、私なんか勝手に勘違いして!」

「い、いやこっちこそごめんね!私が勘違いさせちゃうような事いっちゃって……」

 誤解を解くと、すぐにカネリが謝ってきたので、私はすぐに顔をあげるようにいい、私もすぐに謝った。

 ――だが、先ほどのカネリの発言に少しだけ引っかかることがあって……、

「――お互い、もっと知り合ったらカネリは私と……?」

 とそこまで口にすると、赤さが引いていたカネリの顔がまた赤く染まり始めた。

「そ、それは!こ、言葉の綾というか……!」

 と、さきほどのように、慌てて否定をした。

 ――うん、やっぱり何度見ても可愛い……。

 そうして今度は、ゆっくりとカネリの慌てている様子をじっくり観察した。

 すると、カネリにからかっているという事が伝わったのか、カネリはムスッとした表情を浮かべ、私に背を向けた。

「もうっ、ウミカなんて知らない」

 ――うっ……!なんだこの破壊力は!?

 こ、これが噂に聞く、お父さんが娘に暴言を吐かれた時の気持ちなのか!?

 この暴言を言われているはずなのに……それなのに……この喜びの気持ち……!

 ――勘違いしないでほしいが、私は決してドMではない。

 だが、そんな私にすら、今のカネリの暴言に喜びの感情を抱いてしまうほど、破壊力がすごいだけなのだ……。

 そしてさらに……、

「……(チラリッ)、……(ッ!)」

 先ほどから、背を向けたままこちらをチラリと様子を見て、すぐに顔を戻すというカネリの動きがもう本当に可愛すぎる。

 ――はぁ……はぁ……やばい……。なんだこの完璧なまでの生物は……。こんな生物がこの世に存在するなんて……。しかもこんな間近に、それも一緒にお風呂に入る事が……。

「――ちょ、ちょっとウミカ大丈夫!?」

 ――あ、あれ……?なんだかだんだんと意識が……。

 カネリの慌てるような声を聞きながら、私は閉じかける瞳の最後に映ったカネリの慌てた姿を見て――あぁ女神様――と心の中で呟いたのが最後、意識を失ってしまった。




 ペチャリ。

 ――ん?何だ……これは……?

 頭の上、ちょうど額の辺りに何か冷たいものが乗せられた。

 額に乗せられたものを確認する為、右手を動かそうとするが――右手が動く感覚が全くない。

 だが、私の額の上には確かに先ほどより重量が増えたわけで……、

「やっと、目が覚めたのね」

 ふと、そんな声が聞こえた。

 その瞬間、やっと私の意識は戻り、一体何があったのかと、頭が瞬時に働いた。

 ――こ、これすっごいデジャブだな……。

 瞬時に状況を判断した瞬間、呆れるように、心の中で呟いた。

 ――でもとりあえず、いつまでもこうしているわけにはいかないな……。

 そう思いながら、私は思い瞼をゆっくりと開けた。

「――ご、ごめんねウミカ」

 瞼が開いた瞬間、すぐに視界に入ってきたカネリに向かっすぐに謝罪を述べた。

 ――ここまではあの時とあまり変わりないが、カネリの表情は明らかに初めより変わっている。

「……もぅ。もっと気を付けてよ」

 と少しぶっきらぼうに聞こえるが、その表情からはとても心配してくれたという事が伝わってきた。

「――私……もしかしてのぼせちゃった?」

「そうだよ……。全くそんなに長く入ったわけじゃないんだから、それだけでのぼせないでよ……」

「ご、ごめん……」

 ――本当に全く返す言葉がございません……。

 そう、カネリの言葉を自分に深く刻み積めながらも反省した。

 すると、カネリは少しだけ表情を緩めて、

「――そんなんじゃ、これから私の事守れないよ」

 と小さく呟いた。




「――こ、これは大変な事になってしもうたな……。まさかあの小娘が――伝説の炎使いの魔法使いとは……」

 その背丈には似合わない、年寄りのような言葉で独り言を呟きながらも、小さな少女はひたすら暗く湿った道を歩いている。

「――さて、確かそろそろだったはずじゃ……」

 そう小さな少女が呟く。

 すると、

「――おせぇぞ、ババア!」

 とどこからか声が聞こえたきた。

 小さな少女は少しのため息をつきながらもゆっくりと声のした方――小さな洞穴のような場所に入っていった。

「――それにしてもあなたが私たちに収集をかけるなんて珍しいですわね」

「――うむ。確かにな。最近はめっきりおとなしくなったかと思っていたのだがな」

「――それより~、私達全員が集まるなんて久しぶりなんだからもっと楽しくいこうよ~」

「――けっ!そんな事はどうでもいいんだよ。今は――どうしてババアが今更私達なんかを集めたかだよ!」

 小さな少女はその声を聞いた瞬間、無意識のうちに表情を少しだけ緩めたが、すぐに表情を強ばらせ、一つだけ開いている椅子に腰掛けた。

 そして一度、テーブルに座っているそれぞれの顔を見渡した。

「――お主らを今日呼び集めた理由は……」

 小さな少女はゆっくりと口を開いた。

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