いざ異世界!なんて思ってたら……
「――ここは?」
私が目覚めた場所は物が一つもない、ただ地平線が広がっているそんな空間だった。
「――あれ?私どうしてこんなところにいるんだっけ?」
突然の事ながらも私は冷静に頭を巡らせ、ここにくる前記憶を一生懸命思いだそうとした。
そしてしばらくして、
「あ、そっか私死んだんだった」
そう呟いた。
そう私の頭が導き出した一番新しい記憶は、死だった。
ここがどこだか分からないが、私は確かに死んだはずだった。
死因はとっても簡単な――飛び降り自殺。
「ということは……ここはあの世って事?」
「――いえ正確には少し違いますね」
すると突然私の独り言に答えが返ってきた。
私は一瞬びくりとしたが、すぐに声のした方を振り向いた。
「あ、あなたは……?」
振り向くとそこには、一人の美しい女の人が立っていた。
その女の人は銀色の髪で真っ白なヴェールを羽織っておりどこかこの世のものとは思えないほどの美貌を感じさせ、よりいっそうここがあの世ではないだろうか?と考えさせられた。
などと考えていると、どうしてかその女の人はゆっくりと頭を下げた。
「――失礼しました。まだ自己紹介がまだでしたね。――私はアリス。そちらの世界で俗に言う女神という者です」
「め、女神ですか……」
そう言ってアリスと名乗った女の人――もとい女神さまは、女の私が思わず惚れてしまいそうなほど美しい笑みを浮かべてこちらをじっと見つめてきた。
なるほど……女神か。
だからこれほどまでに美しく胸もあるのか。
うんだったらしょうがないな。
うんしょうがない。
「……(じ~)」
「あ、あの……い、一体どうされましたか?」
はっ!
駄目だ駄目だ!
女神様のあまりにも美しい美貌に惹かれて思わず見惚れてしまった……。
「え、え~と……すいません……。そ、その……あまりにも女神様が可愛かったから、つい目の保養を……」
いけない、いけない。いくら女神様とはいえそんなに見つめ過ぎたり、胸を揉みたいなどと思ったらきっと罰か何かが当たってしまいう。
「ほ、保養……ですか?」
そう言って女神様は少し困ったような表情を浮かべた。
あー、駄目だ!完全に女神様を困らせてしまった!
もぉ~!私のバカバカ!いくら女神様だからっていっても、もう少し気を使って話さないと!
「い、いえ気にしなくても大丈夫です。そ、それより一体ここは……?」
そういいながら私は高度な会話術、話を誤魔化しながら質問をする事によって別の話題に切り替えるの術を使った。
この術は名前の通りのとても便利な術である。
――流石女神様、高度な会話術を持ちいらなければ会話できないとは……。
っと今はそんな事より女神様の話に集中しなければ……!
「は、はい。ここはですね、死者を導く場所と呼ばれている所です」
「し、死者を導く場所?」
なるほど、だから女神様か……。
つまり、私はここで天国か地獄に行くかを決められるとかそういう事なのだろうか?
いや、それよりかは記憶をすべて失ってもう一度赤ちゃんに生まれ変わるとかそういう事なのだろうか?
「え、えと……わ、私ってこれからどうなるんですか?」
「それはですね……」
そう尋ねると突然、女神様は私から視線をそらし、さきほどまで見せていた笑顔とは一変して少し曇った表情を見せた。
――あれ?何だろう?この気まずい空気は?
わ、私何かまずい事でも聞いちゃった?
などと考えながらもじっと女神様の反応を待っていると、
「――佐藤美香さん」
「は、はい!」
突然自分の名前を呼ばれ、思わず少し大きな声で返事をしてしまった。
そのせいで、壁がないにも関わらず少しだけ響いてしまった。
――そ、それにしてもどうして私の名前を?
女神様だからきっと個人情報なんか全部分かっているのだろうか?
と考えている間に女神様がそっと口を開く。
「あなたの死亡原因を天界の規則で乗っ取ると――第三級の罪になり、その罰としてこれからとある世界に行ってもらいます」
「え?」
第三級の罪?
それって一体?
それにとある世界って……?
などと突然一気に言われすぎて頭の中で疑問視が飛び交った。
そんな私を見た女神様は少し申し訳なさそうな表情を一瞬だけ見せた。
だが、すぐに厳しい表情に豹変した。
「あなたは命を軽視している。よって天界の法に乗っ取った結果、第三級の罪人になりました。――よって今からあなたがいた世界とは別の世界で命の大切さをしっかりかみしめて下さい」
すると今度は私にもわかりやすいように言ってくれた。
つまりは……天界で自殺した者は罪に問われるから別の世界でもう一度生きて反省をしろという事か。
――ん?でもこれってまさか……、
「異世界転生ですか!」
思わず大声で、しかも前のめりになって女神様に尋ねた。
すると女神様は私の反応に小さくため息を吐き、
「……はい。そちらの世界ではそう呼ばれています」
そう小さく呟いた。
だが、そんな小さな言葉だったが私は何度も頭の中で繰り返した。
――異世界転生!わ、私が異世界に転生!
と脳内で何度も繰り返し一人盛り上がっていると、
「――言っておきますがそちらの世界で言われている異世界転生とは少し違います」
「へ?」
少し違う……?
た、確かに女主人公の異世界転生は全く見たことがなかったけど……。
「あなたが行く世界はとても過酷な世界なのです。――確かに魔法と呼ばれるものは存在しますが……」
「魔法!?」
その単語を聞いただけで、私ついは女神様の言葉を遮ってしまった。
――魔法!や、やっぱりあるんだ!
という事は私も魔法が使えることが……!
「お、落ち着いてください!た、確かに魔法はありますがそれを使うにはたくさんの修行をしないと!」
「そのぐらいなんともないです!」
魔法が使えるくらいなら、すべてを投げ出してもいい!
そう思うのはやっぱりアニメやゲーム好きの人たちの性じゃないでしょうか!
「と、とにかくそんなに甘いものではないのです!」
と興奮していた私に女神様が厳しい口調で言った。
そんな突然の声に少し怯んだ。
女神様はその隙を見て、すぐさま口を開いた。
「異世界とはあなたが考えているような甘い場所ではないのです!それにあなたが異世界に行く理由は罪を償う為です!それをしっかりと肝に命じてください!」
「は、はい……」
す、少し調子に乗りすぎたな……。
――でもこんな可愛い女神様に怒られるなら本望!
って……駄目だ、こういう事を考えているとままた調子に乗って怒られてしまう。
そう思い押し黙っていると、女神様は初めて合った時のように表情を少しゆるめた。
「いいですか最後までよく聞いて下さいよ。後これから何を言っても落ち着いて下さい」
「は、はい……」
ひょ、表情を緩めたからといってもやっぱりまだ少し怒っているな……。
――私一度夢中になると中々止まらない癖があるから気をつけないとって思ってたのに……。
やっぱり癖っていうのはそう簡単に止めれるものではないな……。
「少し長くなりましたが、これからすぐに異世界に行ってもらいます」
「は、はい!」
つ、ついに異世界に!
興奮しないようにと思っているのだが、やはり今から異世界に行くとなるとやはり興奮してしまう。
い、異世界って一体どんな所なんだろう?
女神様は厳しい世界と行っていたけど……一体……。
などと少し冷静になった所で若干の不安を覚えた。
するとそんな私を見てか女神様はそっと頭に手を乗せた。
め、女神様~!
や、やっぱり女神様は天使だ!神だ!――いや女神様だ!
などと一人盛り上がっていると、
「最後に、今からあなたに一つだけ力を与えます。これは努力した者にしか使いこなすことは出来ません」
「えっ?」
ち、力?
という事はまさか……!
と、また興奮しそうになった私だったが、すぐに女神様の声で止めらることになった。
「それでは佐藤美香さん。これからしっかりと罪を償って下さい」
という女神様の声が聞こえた瞬間、辺りを光りが包んだ。
光に包まれる中、私は最後に言われた力の事について考えを巡らせていた。
――ついに異世界に行くことが出来たんだ!
異世界に来てすぐは私もそんなのんきな事を思っていた。始めてみる景色――異世界に私はまだ、目を輝かせていたし、これから私が女神様からもらったチート能力を使って無双できる――そうも思っていた。
――確かにそう思っていた時期は存在した。
だが今の私はそんな事は1ミリたりとも思ってはいなかった。
――それは何故かというと……、
「おいおいなんか言えよ姉ちゃん~!」
「ギャッハッハッハッ!おいこいつ震えてやがるぜ!」
「ほんとだ震えてやがる!ガモンもうちょっと優しくしてやれよ!」
「そんぐれぇ分かってるよ!――だから今からゆっくりと楽しませてやるぜぇ!」
そう言う毛深い三人組の男を、私は路地裏の壁――高さ5mはある壁――を背に見上げていた。
――拝啓、女神様。私がバカでした。
どうか助けて下さい!
そう心の中で女神様の姿を思い浮かべながら祈ったのだった。
「そこまでよ!」
とそんな祈りが通じたのかどこからか女神様のように透き通った声が路地裏の壁に響き渡った。
「あぁんっ!誰だお前は!」
そう目の前の男は怒鳴るが、全く返事は返ってこなかった。
そんな中、
「ちょっくら見てくるよ」
と私から少し離れた所にいた男の人が一人怒鳴りながら路地裏の入り口に向かって歩いていった。
「けっ、せっかく盛り上がってたのによ」
そう言いながら私の目の前に迫っていた男もその声に反応し後ろを見ている。
――な、なんだか分からないけどこれはひょっとしてチャンスじゃ……!
とそう思った矢先、
「頭の悪い事は考えるんじゃねえぞ?」
ともう一人の男がにやにやと笑みを浮かべて私を見てきた。
――うっ……やっぱり一度捕まってしまったら逃げられないのか……。
そもそもどうして一番初めの地点がこんなにも治安の悪い所なのですか女神様。もう少し治安のいい国とかにでもしてくれたらよかったのに……。
――しっかりと罪を償って下さいね。
うぅ……そうだった。私は一応犯罪者なんだった……。
だから女神様はこんな所から始めさせたのか……。
それにしても、もう少しだけ考えてくれなかったのですか女神様。異世界に来た瞬間に、痴漢に遭うなんて……。
これって私がついてないだけ……?
「――その場でジャンプして」
「え?」
突然、耳元で微かに声が聞こえてきた。
だが、見渡すそうにもここは路地裏で私は左右、後の壁に挟まれている。
そして目の前には男の人が二人いるだけで、他には誰もいない。
幸い私の声も小さかったので男の人たちには聞こえてないが……。
「――はやく!ジャンプして!」
まただ。
一体なんなんだろうこの声は?
前を見ても、大通りに続く道しかなく、その道にも人影は見あたらない。
――じゃあこの声は一体……?
「――はやくジャンプして!じゃないともう逃げられないわよ!」
今度は先ほどより大きくその声が聞こえた。
そしてそれと同時に先ほど私に声をかけた男の人が私の様子に気づいた。
そしてその男の人はゆっくりと私に近づいてきた。
「――はやく飛びなさい!」
「はい!」
今度は怒鳴るように聞こえて来たので、私は思わず返事を返しその場に立ちあがった。
だが当然そんな事をすれば、二人の男の人たちにばれてしまう訳で、
「おいおい、どうしたんだいお嬢ちゃん~?」
と向こうを向いていた男の人まで私に気づき、近づいてきた。
――怖い、怖い、怖い。
今捕まったら今度こそ終わりだ。
そう思うと私の中は恐怖という名の鎖で全身を締め付けられているように、体が動かなかった。
「あぁ~あ、また震えてる。そうかそうかそんなに怖かったのか~。――だったら今すぐにでもヤッてやるよ!」
「きゃっ!」
私にゆっくりと手が延びてきて、思わず目を瞑ってしまった。
――あぁ、きっと私は今から死ぬよりもつらいことが待ってるんだ……。きっとこれが女神様が言っていた罪を償うという事か……。
そう思いと同時に私の体の力が抜けていくのを感じた。
――もう私なんかどうなってでもいいや……。
そう心の中で呟き、そのまま脱力して床に崩れていく。
その瞬間、
「もうしょうがないわね!『ウインド』!」
そんな声と共に私の体がふっと軽くなっていくのを感じた。
「なっ!?」
すると、目の前に迫っていた男達が次々に驚きの声をあげていった。
――一体どうしたのだろう?
そう思いながら私は恐る恐る瞼を開く。
「――え、えっ!?わ、私飛んでる!?」
目の前には先ほどまで私を見下ろしていた男の人達が、私を見上げていた。
そして男の人達の顔がだんだんと高くなっていくのと同時に私の体がどんどん上に――どんどん空に向かって飛んでいた。
「い、一体これは……!?」
突然の事に驚き、そして足が地面についていないことへの恐怖心とが混ざり合って、私はただ手足をバタバタと動かすという謎の動きを繰り広げた。
「――ちょっとあまり手足を動かさないで!じゃないとそのまま落ちちゃうわよ!」
「は、はい!」
また先ほどの声が聞こえ、私はその声の言うとおりにじっとしていようとしたが、何分、私は今まで空を飛んだ事はなく、じっとしていたら落ちるのではないかという恐怖もあり、空中でじっと待っているという事はできずにいた。
「くっ!もう少しだけもってよ!」
その声はさきほどより必死そうな声に変わっていた。
さしてその声もだんだんと遠くなっていった。
「わ、私これからどうなるんだろ……」
そう呟きながら、そもそもこれはどこまであがるのだろうか?とこんな状況の中考え始めた。
――まさかこのまま空の上――宇宙までとかないよね?
ま、まさかそんな事は……。
「……」
ほ、本当にないよね?
などと思っていると、
「は、はやく壁にしがみついて!」
と微かだが、声が聞こえた。
か、壁?
壁って一体……?
そう思い、改めて辺りを見回した。
「あっ、これだ!」
後ろを振り返ると、さきほどまで私を苦しめていた行き止まりだった壁のちょうど上まで来ていた。
それを見つけると同時に声の言うとおりに、私は大急ぎで壁にしがみつく。
そしてそのままあの男達から逃げるように、壁の反対側へと身を乗り出した。
「もう……だめ……」
私が壁の向こう側へと身を乗り出した瞬間、力尽きたような声が聞こえた。
――え、これってまさか……?
そう思うと同時に先ほどまで私を包んでいたような包容感がなくなり、重力にひっぱられるように地面に吸い込まれる感覚が私を襲った。
「う、嘘?」
そう呟いた瞬間、私は真っ逆さまに壁の向こうへと落ちていった。
――あぁ、この感覚はあの時と同じだ。私があのビルから飛び降りた感覚と同じだ。
だが、二度目だからといってこの感覚は慣れるものではなく、私は思いっきり目を瞑った。
「――頼む!もう少しだけ!」
すると下の方でまた声が聞こえた。
その声は先ほどのように聞こえにくくはなく、私の耳にはっきりと聞こえた。
そして次の瞬間、
『ウィンド』
また私の体を風のようなものが包み込んだ。
そして今までの速度が嘘だったみたいに、私はゆっくり、ゆっくりと落ちていった。
ボトンッ
「いたた……」
そしてそのままゆっくりとお尻が地面についた。
幸いにも、途中で体の向きを返ることが出来たので地面に頭から落ちることはなく、さらに下が何か柔らかいものだったのでけがをする事はなかった。
「――大丈夫だったか?」
すると頭上から、ずっと聞こえていた声が聞こえた。
――こ、この声の人が私を助けて……!
だから助けてくれたのだから何か礼を、そう思って私は顔をあげると、
「全く……あんな男どもに捕まるなんて……。もう少し気を付けないと――いやそもそ気を付けるなんてレベルじゃないか」
と困ったような表情で、とても真っ赤な髪を掻きながら少女は言った。
「――あんた、女だったらもうちょっと強くないと。じゃないとこの世界じゃ生きていけないよ?」
そういいつつも赤髪の少女は私に手を伸ばした。
「あ、ありがとうございます……」
私はなんとか言葉を絞り出し、手をとり、ゆっくりと立ち上がった。
そしてまじまじと赤髪の少女を見つめた。
「ん?どうした?私の顔に何かついてる?」
赤髪の少女は私の視線に不思議そうにしていた。
だが、私の耳にはそんな言葉は入ってきていなかった。
――赤い髪のショートヘアー!少し男の子っぽい言葉遣い!さらにキュッと引き締まったその体!
じっくりと赤髪の少女を観察した瞬間、私は腕を大きく天に上げ、
「メインヒロインきたー!!」
と叫んだのだった。