8話
森の中の探検を続けると少し歩き回るだけで他にも幾つか洞窟が見つかった。時間がかかるかもしれなかったので洞窟の中は覗かず、外から確認するだけにしておいた。――そういえば洞窟と洞穴の違いって何だろう?どっちも同じようなものなのかな?考えてみるとウインナーとソーセージとかホットケーキとパンケーキの違いとかも分からない、どっちがどっちなのか分かりにくい物って多いよな。大きさとか材料の違いだった気がするんだけど…おむすびとおにぎりはおむすびが山の神様に対してのお供え物だったかなんかで形が三角形限定でおにぎりはどんな形でも良かったんだったかな。
今はどうでもいいんだけど―――ああ、おにぎり食べたい。おにぎりは定番だな、日本人は大抵おにぎりがあればなんとかなると思う。中身は色んな具があるし、何が一番とかは議論が止まらなくなりそうだけど今は梅干しが食べたい。あと緑茶が飲みたい。緑茶はカテキンが入ってたりして代謝が良くなったりで健康にもよくてガンの抑制作用があって海外でもブームになっているらしい。・・・もう二度と口に出来ないかもしれないんだけど。
色んな事を連想しているとふとした考えから寂寥感を感じる。まだしばらくは消えそうに無いホームシックを感じていると、異世界に来てから初の便意を感じた。消化吸収能力がスキルで上がっているようなのであまり出ないのかなと思っていたんだけど、どうなんだろうか?2日に1回は少ないのかな。腸内で吸収出来ない物が少ないとう○こも少なくなるだろう、そのう○こもとい便の中の半分いかない位は腸内細菌の死骸だったらしいからその分が出るのか?そこら辺はどうでもいいけどトイレ事情は大事だからよく考えないと。臭いがするのは嫌だし、動物が来るかもしれないし、あまり住居に近すぎるのもいけないが、あまりに遠い事も問題だからな。一旦拠点の方に戻っていこう。
排泄後お尻を拭くにしたって何を使うかとか考えるべき事はある。昔の人は木の棒を使っていたらしいし歴史上石とか砂とか葉や茎とか色んな物を使ってお尻を吹いてたらしい。なら自分はどうするか?石を使うのは痛そうだ、手近にある物で一番良さそうなのは葉っぱかな。そういえば毎度お馴染みの流浪の番組で野糞の時に向いてる葉っぱをやってた回があったな。どんな葉っぱだったか詳しく覚えてないけど…表面に細かい毛があるといいんだったかな。大きめの葉っぱの方が使いやすいと思うんだけど持ちやすさとかいろいろな事の兼ね合いで良い葉っぱを見つけたい。時間をかけて探していく感じかな。
実際に拠点から離れた所で穴を掘って使ってみると何種類かある内の一つが手頃な大きさで使いやすかったので普段から集めて洞窟に貯めておくことにした。小便も大便もしないようなアイドルとは違ってこういうトイレ事情はちゃんと考えないと。サバイバルするにしたってこういう事を何も考えずにやると後々絶対後悔するから。ただ固有スキルの影響か量と回数は少なくなってる。
今日はもう寝よう。日も暮れてるし、やることも明るい時にやったほうがいいよね。やらなきゃいけない事、やりたい事はたくさんあるが、時間が掛かる事ばかりでどうにもままならない。明日は魚を捕って火を起こす事が目標かな。食べられる植物があるかパッチテストを川に行ってして継続して食べられる物を見つけたい。ビタミンとか生きてくために必要な栄養素を摂れる食べ物を揃えたい。これでまだ二日目なのか。時間には追われてないのにやることがあるから1日が長く感じる。早く生活を安定させたい。
拠点に戻り、明日やることを考えながら眠りに就く。
次の日、朝目覚めてから川に向かい、水深が浅く川の流れが緩やかな所まで移動する。川幅はそれなりの広さがあり、流れの遅い所には川魚が泳いでいた。魚を捕る前に生えている葉っぱを一枚むしって腕の内側の肘に張り付けておく。このままほうっておいて痒くなったり赤くなったりしなければいいんだっけ、その次に舌の先にチョンとつけて痺れたれしないか、少しだけ呑み込んで1日様子を見るとかあったけどそこまでやるのは面倒だから腕で試して大丈夫だったらもう食べよう。大丈夫だった葉っぱは忘れないように一枚取っておいて見分けがつくようにしよう。かぶれたりしても洗い流せるように川沿いで試すんだから。
試して待ってる間は暇だから魚を捕まえよう。この角魚は動かないようにしているとなぜだか近寄ってくるから捕まえやすいしじっくり探すと結構な数いるからいいね。
順調に魚を捕まえながらパッチテストをしていると反応の無い葉っぱが多かったが腕が痒くなったり、真っ赤に腫れ上がる物もあった。赤くなった腕を水に浸けて冷やしたりして続けていると魚が10匹集まった。
角が10個あれば火起こし出来そうだな。とりあえずこれで火が起こせるかやってみよう。杉っぽい植物の葉っぱを集めて、薪になりそうな乾燥した木の枝も集めてくる。石で土台を下に隙間があって上で火をつけると空気の流れが出来る煙突の構造になるように隙間を開けて作る。杉のような葉っぱを着火材にするので土台の真ん中に集め、その上に角を集めて乗せて、大きめの石で一気に砕く。
するとどんどん熱くなっていって触ってられない程の温度になった。そして葉っぱに火がつき勢いよく燃え始めた。やった!火があると大分いい暮らしが出来るはず。焼くだけの簡単な料理が出来る。これと同じ事を洞窟でもしないと…。――あっ!火が消えちゃうから早く薪を足さないと。まだ火が必要な場面はあるしもっとこの角を集めたい。
火が消えないように気を配りながら魚を捕り続け、15匹程捕まえると魚がいなくなってしまい、一度止める事にした。角を折ってまとめてポケットの中に大きめの葉っぱで包んで入れる。
25匹も角を折った魚があるので今食べられるだけ食べよう。せっかく焚き火があるので焼き魚に挑戦してみようかな。枝で魚を突き刺し、火の周りに刺しておく。どれだけ焼けばいいのか分からないので適当な所で止めて食べる。食べられるんじゃないかっていう葉っぱも一緒にちょっと焼いたりして食べる。焼いては食べ、焼いては食べを繰り返しているといつの間にか全部食べきってしまった。なんだか前より大食いになってる気がする。消化が速いとお腹がすくのも速いのかな。決して味が良くはないのにこんなに食べたのはやっぱり空腹っていう最高の調味料があったからだな。一日三食の生活に慣れてたから空腹が続く状態に慣れてない。
せめて塩があればかなり美味しくなるのに・・・
あっ、塩!!
塩が無いってかなりヤバいじゃん!