6話
洞窟に戻って来て、休憩する。
どうにも疲れるなあ。運動部じゃなかったし体力が無い。
食べ物も全然足りてない気がする。このまま生きていけんのかな?やっぱりちゃんとしたチート能力があると深い森の中に転移してもすぐに出られるんだろうし、出なくてもこんなに死を感じる事もないんだろう。
今の所継続して食べられる物もないし、緩やかに餓死していってる気がする。でも同じような日常を過ごすより楽しく感じるんだよなあ、こんな森で生きていけるなんて楽観視はしてないけどこんなふうに死を感じる環境だと、生きている実感がわく。もっと楽しく生きていたいしまだまだ死にたくない。
異世界に来るって事は人生をやり直す大きなチャンスだから、誰も自分の事を知らないし、なんのイメージも先入観も無い、そんな事異世界じゃなかったら絶対にない。こんだけ恵まれた環境なら誰だってやろうと思えば自分の事を変えられる。たとえ連続殺人犯でも異世界に来て聖人として崇められるような人に変われるかもしれない。まあそう簡単に人は変わらないと思うけど。普段から思い通りに行くことなんてあんまり無かったし、自分の現状に不満もあった。理想の自分とまでいかなくとも自分の事を変えたい。人見知りだし。
自分らしく生きるじゃないけど自由に暮らしてみたい。まあ結局世の中色んな事があるけど楽しかったらなんでもいいや。
ゲームとかテレビが無いから暇でいろいろ考え込んじゃったけどもうそろそろ休憩は十分か。今朝起きた時身体中が痛かったから簡易的でも寝床を整えるかな。
まずは洞窟内の地面に転がっている石を拾い上げて一ヶ所にまとめていく。地面は土が露出してたり、大きい岩になってたりする。もっと苔が生えてたら、ベッドとして使えたのかな?平らになった岩の上に外に落ちている葉っぱや枝を拾い集めて並べていく。木の枝と葉っぱで適当だけど寝床が出来た。猪とかの寝床みたいだ。・・・まあ完成度はそれなりでいいんだ、ゴツゴツした石の上よりずっといいはず。適度に適当でいいんだよ。
言い訳はそれくらいにしておいてちょっと寝転がってみよう。
ガサガサッ
う~ん、、、良くはない。でも固くはないから比較的楽だと思う。ちくちくしたりするけど服の上からなら大丈夫だからまあいいかな。多分もっとこういう用途に向いてる葉っぱもあると思うんだけど、今はないからもし見つけたら回収する事にしよう。
ん~、色んな物がなくて無い無い尽くしだなぁ~。あー、ゲームもテレビも無い。娯楽が無いのは結構キツい。ゴロゴロと寝転がりながらぼんやりと色んな事を考えていると、
バキッ
何だ!?何か踏んだか?ポケットの中何か入ってたっけ?
あっ!そうだ!川魚の角入れてた!固そうだったけど割れたのか?
するとポケットの中がじんわりと温かくなり、熱を持ってきた。ポケットから角を出してみると、幾つか角がバラバラになっており、光沢が無くなり色が薄くなっていた。その内どんどん熱くなっていき、ずっと持っていると低温火傷しそうなぐらいの温度になった。しかし1分もしない内に温度が下がり、熱を持たなくなった。一つだけ角が割れずに残っていたので地面に置いて
石で割って触っていると、温かくはなっているがぬるいぐらいの温度で、さっきの幾つかまとめて割れた時とは違ってそこまで温度は上がらなかった。
う~ん、これは同時に何個か割ると数が多い程熱を持つみたいだな。これがあれば火が付けられるかもしれない。食糧にも燃料にもなるなんて便利過ぎる魚だな。火が有ったら相当便利だろうし、大量に魚を集めてなんとか火を付ける!
当分はそれが目標だな。それはそれとして、後はこの洞窟の入り口が丸見えだから木の枝と葉っぱで覆い隠そう。
落ちている枝だけでは足りないので、低い位置に生えてる枝を折る。
バキッ バキッ
手の届かない位置の枝もジャンプして掴んで、折る。
ピョン グニョーン
「全然折れないな。すげえしなってる」
力を入れ、苦労しつつ枝を折り。木の枝を集め続け、十分な量が集まってきたので、入り口上部の丘のようになっている地面に枝を刺してその上に葉っぱを被せる。
少し、いやかなり変だけどぱっと見だと分からない位にはなってるかな。洞窟があるとは外から見て分からないと思う。茂みとか低い街路樹みたいに見える。周りにはあんまり茂みないけど。少しはあるから大丈夫、、、だと思っておこう。きっと大丈夫!
そう思わないと辛い。。