5話
「う~~、痛てぇ~」
身体中に痛みを感じる気分の悪い朝を迎え、寝起きで回らない頭で辺りを見渡す。
(あれ、ここ何処だ?・・・ああそっか。)
ホームシックと共に今の状況を思い出す。朝から少し暗くなりつつ今後の事に考えを巡らす。
どうしよっかなー。お腹減ったな~。一晩たったけど、腹壊しては無いみたいだな。また蛇でも蛙でも食える物ないかな。生で食べるなんてやってみたいと思った事ちょっとしかないよ。毎食なんて勘弁して欲しいね。魚ならいいんだけど。それに一匹で栄養だとかカロリー足りてないだろう。嫌な事でも続けたら慣れる慣れる。その内何とか火だって付けられる!といいな。ウイルスも寄生虫も大丈夫なら毒さえなければ大抵の物は食えるはずだ。戦時中から戦後の日本人だって食糧難で食べられる草とか蛙とか食ってたらしいし、現代では食わなくなっただけだ。でも虫は嫌だ。蠍で限界かな。出来るなら避けたい。本当に限界じゃないと虫は嫌だ。虫、触れるかな。いやこんな森にいないわけ無い、しかも異世界なら新生代並みの巨大な虫もいるかもしれないから虫触ったり潰したり出来ないと。虫触れないで死ぬ、なんて笑えない。
今考えるとよくこんな洞窟で寝てたな。毒持ちの虫やら蛇やらがいたかもしれないのに。毒持った生物がいるかは分からないけど、奥行きも5m位だし外から丸見えだ。後で入り口隠そうかな。
ここから川まではそれなりの距離があるし、大体の方向は分かるけど忘れそうだし、印をつけながら水を飲みに行こう。川の方から昨日こっちに来て洞窟の入り口が見えたから入り口から出て真っ直ぐ行けばたどり着くはず。石で途中の木に傷を付けて行けば帰りに道が分かるだろう。
川に着くと水を飲み、一息つく。水の中を覗くと魚の姿があるようには見えない。流れが遅い方に行こう。川の流れに沿って下って行き、10分程行くと流れも遅く深さもそれほど無くなったので魚がいるか探してみる。しばらく探していると15cm~20cm位の魚が数匹泳いでいるのを見つけた。背中側が黒くなっていて腹の側が白く、体の横に黒い点が並んでいる。そこまでは普通の川魚と似た姿だが、それ以外に決定的な頭部から1、2cmの鈍く光る角が生えているという違いがあった。
・・・ちょっと危ない。何で角生えてんの?刺して来んのかな?刺さっても痛そうだけどそこまで深い傷にはならなそう。
スニーカーと靴下を脱ぎ、ズボンの裾を捲って川に入って行く。
「冷て~」
ひんやりとした水に足首まで浸かり、波を立てないようにそーっと魚の近くまで近寄っていく。近くまでくると少し離れたが、足が冷たくなっていきながら動かず待っていると、また近付いてきたので、前屈みになって手を伸ばし、
バシャッ!!
一気に魚を掴もうとするが、逃げられる。何度も繰り返すとコツを掴んで来て触る事が出来るようになり、捕まえる事が出来た。両手で逃がさないようにしっかりと掴み、川原に移動して魚の頭を石に叩きつける。
バンッ!バンッ!バンッ!
何度も叩きつけると段々と動かなくなっていき、石に血が付く。そこで頭の角を触ると、結構硬くしっかりついている。角を掴んで力を加えると根元からポキッと折れた。手元の角は硬く食べられそうではないが、光っていて何か使えるかな?と思ったのでポケットに入れておく。死んだ魚を川の水に浸けて洗い、尖った石を拾って魚の肛門から腹を裂き、内臓を出して捨てる。内臓に毒があるかは分からないし、胃の中身や排泄物を一緒に食べたくないから内臓は食えないなあ。鱗を石で剥がしていく。寄生虫がいるかもしれないが見えないし、もう気にしても仕方がないもんだと割りきって例のごとく火が無いもんで生で噛みつく。やっぱり美味くはない。骨密度上昇のレベル上げのために骨も食べる。あれ思ったより楽に骨が噛み砕ける。骨密度上昇で歯も硬くなってるのかな?かといって硬くない訳ではないけど。
食い終わったのにレベルが上がらない、、なぜだ。骨食べるのが条件ではないのか?それとも量が足りないのか。いくら考えても分からなかったので、もう一度魚を捕まえに川に入る。
その後、さらに何匹か同じように食べきってある程度空腹が満たされたので、拠点とする洞窟に戻って行く。