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 街に戻り冒険者ギルドへ二人並んで向かう。

 二人でいるとよくいる冒険者らしく見えるのか門を通る際も質問されることなくやり過ごすことができた。


 ギルドに入り依頼達成の報告をしようと受付に向かうと、登録の時の受付嬢と目が合った。


(…しまった目が合った。ここで別の受付に向かうのも不自然だ。しかしあいつの名前が分からんマズイ)


 高速で思考を巡らせながらそれとなく歩幅を狭めゆっくり歩く。

 不意に立ち止まってキーヴァに話しかける。


「ああ、そうだ。報酬の分配はどうする?」


「そうだねー、今日は助けてもらっちゃったしクーロンが多めでいいよ!」


「いやーそんなことないよ!キーヴァが居なかったら今回の依頼は無理だったよ。薬草の知識も無くってこっちこそ助けられたよ」

(クーロンって誰だ…、俺か。分かりにくい名前にするんじゃなかったか?まあいい)


「いやいや私こそ…」


「いやいや僕こそ…」

(よくやった!そんな中身の無い返答を待っていたいい時間稼ぎになる)


 そんなやり取りをした後、受付嬢の名前を思い出したので会話に区切りをつける。


「じゃあ報酬は半々って事で、よろしく」

(こん位のことさっさと決めろと普段なら思うところだが今回は許してやろう)


 そうして受付に向かう。


「どうもレイラさん。依頼達成の報告に来ました」


「わー!初の依頼達成ですね!おめでとうございます!」


 レイラはクーロンの手を取ってぶんぶんと揺さぶりながらそう言った。


「はいっ!ありがとうございます。あと途中でゴブリンに襲われて、」


「えぇっ大丈夫なんですか?」


「はい、何とか倒せたので…、そのゴブリンの魔石とかって売れますかね?」


「はいっ!こちらで買取します。あのー関係ない話なんですけどぉその女の子は誰なんですかぁ?」


「あっ私キーヴァって言います!今日クーロン君と出会ってパーティを組んで一緒に依頼を受けたんですっ。よろしくお願いしますっ!」

 話題が振られるとキーヴァは体をクーロンの前に割り込ませ、勢い良くお辞儀をした。


「そうなんですね。キーヴァさんこれからよろしくお願いします」

(むー、私に惚れさせようと思ったのに厄介だなー)


 ん?今こいつ頬の筋肉に一瞬力入ったな、何考えてやがる、何か気に食わんのか。


 少しして、受付の裏手からレイラはトレイに小さな袋を載せて戻って来た。


「はい、こちらが依頼の達成報酬とゴブリンの討伐報酬と魔石の売却代金併せて銀貨4枚で4000クラムです」


「ありがとうございます」

「やったね!」


 キーヴァがこちらを見て笑いかけてくるのでとっさに笑い返す。


「いやあ、ありがとう。また機会があったら一緒に依頼でも受けよう。それじゃあ」

 そのまま銀貨2枚を渡して、ギルドを出て宿に向かおうとしたが、何故だか一緒についてくる。


「…ど、どうしたの?」

(何だこいつは、殺されたいのか?)

「いやー実は私もこの街に来たばかりだから宿を決めてなくて…」


「それで?」


「出来たら、宿を紹介してほしいなーって……ダメ?」

 キーヴァは両手を合わせて上目遣いでこちらを見ながら頼んできた。


 金髪美少女がやれば絵になるなあと思いながらも逡巡する。

 出会った時から一貫して何の不思議の無い行動でも、ずっと違和感のような不思議な感覚を覚え続けているこの少女に一時的な宿とはいえ寝床を教えていいものかと。

 言動に関して言えば溌剌とした少女であると印象を持っても良いはずだが、怯えているのか?強力な魔法を使ってみた事に?

 ()()()()?たかが小娘に?そんな事はあっていい筈が無い。

 俺は天才で最強でなければならないと決めたのだから、俺は恐れなんて感情は抱かない。

 それに此処で断れば今まで演じてきた慣れていない新人冒険者というキャラがブレる。

 少しでも不信感を抱かせたら、キャラのブレた印象を他人に話されたら、信頼のできる人間などどこにもいないこの世界で、根無し草の自分はいつ何時どんな理由で命を狙われても不思議ではないのだから、少しでも印象を薄くどこにでもいる人間だと思わせなければならない。


 よし受け入れよう。

「うん、いいよ。知らない街に来たばかりだと大変だよね、僕もそうだったから」


 そうして仕方なく一緒に宿に向かうことになった。



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